ひとりでいること、誰かといること
今までで1番心に残った登山は?って聞かれたら、私は両親と行った涸沢カールのことを思い出す。
4人兄弟の末っ子の私は愛されながら自由奔放に育ち、でも共働きで4兄弟の面倒を見なければならない忙しい両親に対して寂しさを感じることもあった。
大人になってはじめて、親子3人のイベントを味わった。それが登山だった。
ゆうて両親は還暦のおじじおばば。
体力底辺の私ですらゆっくりと感じるペースで涸沢小屋までどえらい時間がかかった。
涸沢カールに着くまでに上高地から平坦な道のりをひたすら歩き、途中の横尾からはなかなかの登山道とかわる。
その時期はちょうど紅葉が見事で、歩くたびについ足がとまり、目を奪われた。この世にこんなところがあっても良いのかと、息を呑むような光景が次から次へと広がっていく。
と、感動はあるものの、登りが結構キツイ。
自分でもキツイなーって思っていたが、母には相当だったようで、すごく苦しそうな顔をしていた。戻るには遠く、急がなければ日が暮れてしまう。
「荷物持つよ、貸して」
悩むことなく口から出た。
申し訳ないからと遠慮する母(実際遠慮どころでない笑)から荷物を奪い、母のザックを前に抱えるように肩にかけ、前と後ろで二つのザックに挟まれるような形で小屋まで登った。
総重量は20キロを超えていたと思う。
なんだけど、ぐんぐん登った。
不思議な体験だった。
全くしんどくなかった。
体は軽くて、気持ちがよかった。
ありがとうって何回も言われて照れ臭かったけど、嬉しかった。
ソロ登山は自分のペースで登れるから楽だし、思う存分景色を堪能したり、考え事をしたりと結構いいもんだ。
誰かと行く山行きは、気を遣うし、ソロより制約がある。でも言葉にならない多くのことを共有できるから、苦しみは半分、感動は何倍にもって言葉通りになる。私の実体験がいつも証明してくれる。
迷惑かけてもかけられてもいいんだ。
誰かのためにだったらこんなにも頑張れるんだ、奮い立つことができるんだってね。
山は人生のようだ。
(っていつも言っている気がするけど。笑)
最近ひとりでいること、誰かといることどっちがいいんだって謎の脳内論争をしていた。(病み笑)
どっちも必要。
でも、実家で過ごしたり、友達と旅に出かけたりして、改めて誰かといることってめっちゃええやんって思った。
ひとりでは行けないとこにいける、味わえない感動がある、不可能だったことが可能になる。
その人としかみられない景色がある。
何人とじゃなくて、誰と、が一番大切かもしれない。
もう何年も経つけど、涸沢カールに両親と行けてよかったなあって思う。今思い出しても心があたたかくなる。元気なうちにまたどっか一緒に行きたいな〜。
親不孝娘なりに、家族のことは大好きだからね。