デジタルがもたらす新しい診療とは
Braceでは、矯正治療は手技も大事ですが、それ以上に診断と患者様とのコミュニケーションが大事だと考えています。そのため矯正専門医が診断を行い、全国のクリニックや患者様とオンラインツールでコミュニケーションしながら、初診相談、診断、定期検診を遠隔診療によりサポートさせていただくサービス「b-ortho」を行っています。
テクノロジーを駆使することで、クリニックのコストや時間を抑え、質の高い矯正治療をより多くの患者様に提供することが可能になります。そこで、Braceが治療に取り入れているのがDental Monitoring(デンタルモニタリング)です。2022年10月、同社はBraceと日本初のパートナーシップ契約を締結し、Braceドクターや歯科衛生士の筆者に、3回のトレーニングを提供してくれました。デジタルがもたらす新しい診療を考えるきっかけになりましたので、共有させていただきます。
Dental Monitoringとは?
Dental Monitoring(デンタルモニタリング)は、フランス・パリ本社のスマート歯科ソリューションの世界的大手プロバイダーです。
主要サービスの「デンタルモニタリング」は、患者様自身が専用のアプリと専用キットを使用して、口腔内を撮影して頂き、遠隔で歯科医師がチェックするシステムです。ご自宅にいながら定期的に歯科医師のチェックを受けて頂く事ができます。
Dental Monitoringの発足までに、モニタリング用のAIは7年をかけて育成され、現在では約137項目の口腔内分析を行い、約85〜95%の検知が可能ということです。そして、現在もAIは育成され続け、患者様のモニタリングの精度の向上を継続しています。
DM導入で歯科矯正でできなかったことが可能に?
歯科矯正では治療開始から終了まで、患者様に管理をお任せすることが必要不可欠で、治療を円滑に進めるためには、患者様のモチベーション維持と患者様のご協力が必要です。そういった患者様に管理やお任せを余儀なくされるのが、マウスピースの交換や、脱離の確認、保定時間の確保などです。
例えば、マウスピース矯正では基本的に患者様が主体になり、次回来院までに数枚のマウスピースの交換をお願いするケースが殆どです。新しいマウスピースへの交換は患者様判断で行って頂くため、僅かな浮きを見落としてしまうこともあります。また、アタッチメントは歯と同じ色をした樹脂の材料のため、非常に脱離に気づきにくいです。数ヶ月放置しておくと、その間にマウスピースの浮きが加速してしまうこともあります。
一方で、ブラケット矯正は、鏡で確認しにくい臼歯部の装置の脱離や、ワイヤーが細い場合に口腔内で弛んでしまうことに気づきにくいです。そのため、矯正力をかけられない状態のまま、ロスの時間を生み出してしまう事があります。
また、保定期間には保定装置が変形を起こすなどのトラブルにより、僅かに後戻りが生じている場合や、保定期間にクリニックに足を運べないといった理由で、患者様の判断で保定を終えて、後戻りが生じてしまうケースも少なくありません。
こういった従来のトラブルに対して、デンタルモニタリングを用いると、患者様がご自身の口腔内を撮影してモニタリングを定期的に数回行い、遠隔で歯科医師のチェックを受ける事ができます。上記のような患者様が気づきにくいトラブルに対しAIが察知し、適切な処置や判断を促す事ができるため、より正確な治療を行う事が可能になります。
Braceのデンタルモニタリング活用法
Braceでは、デンタルモニタリングを使用して、次回クリニックに来院するまでの間、数回の遠隔定期検診を行っています。モニタリングを行うことで確実に矯正を進める事ができるため、患者様、GPの先生ともに安心して診療できるとのお声をいただいています。
基本的にBraceドクターがモニタリングの管理を行い、GPの先生はモニタリングの進行具合を確認するのみで、新たなフローが追加されることはありません。また、Braceドクターはチャットで患者様と密にコミュニケーション取り、矯正中のご不安ごともモニタリングを確認してお答えします。GPの先生に矯正のお問合せがあることは少なくなりますし、患者様の行動は不具合があれば「すぐにクリニックに行こう」ではなく「まずはオンラインで診てもらおう」に変わります。双方に安心感を得ることができ、時間の短縮を図る事ができます。
応急処置が必要な場合は、 BraceドクターからGPの先生に必要な処置を明確にお伝えします。おおよその応急処置の時間が分かり、チェアタイムの管理に役立ちます。
デンタルモニタリングによってより確かな診療をデジタルで行い、患者様とGPの先生をオンライン上で万全にサポートができますので、確実に「b-ortho」のサービス向上につながっています。
デンタルモニタリングを使用してわかったこと
マウスピース矯正の場合は、マウスピースの交換毎にモニタリングを行いフィット、脱離などをチェックして、確実に次のマウスピースに進む事ができます。不適合が検知された場合には、短いスパンで定期チェックを行うため、原因がより明確になります。その結果、患者様の生活習慣の見直しに繋げやすく、的確な診療を行い患者様のモチベーション維持や信頼に繋がりやすいです。
AIの定期検診を用いることで、マウスピースの交換毎にチェックを受けて頂き、確実に新しいマウスピースに進む事ができます。従来は月1度のクリニックでの定期検診だったところ、定期来院を数ヶ月間空けて頂くことも可能になります。
また、AIの定期検診時にエラーが検出されれば、緊急性がある場合に最短で来院を促す事ができ、ロスタイムの軽減につながります。従来は患者様が脱離などのトラブルに気づかなければ、次回定期検診まで何も処置を行わず、矯正治療が進まない空白の時間は避けられませんでした。
矯正の終了後の患者様にも自宅が遠方でクリニックに通う事が難しいといった場合にも、月に1度〜半年に一度のモニタリングを受けて頂き、来院せずとも後戻りを確認することができます。
クリニックと患者様、双方にもたらすメリットとは
エラーを検知した際に最短で必要な処置や正確な指導が可能になるために、患者様がご自身で問題に対応でき、処置が必要な場合にも歯科医師が最短で対応できるため、最小の来院数と治療期間で済むのです。確実性を持って治療を進めることができるため、患者様はもちろん、ドクターも安心感を持つことができるでしょう。
また、エラーの検知は、器具の脱離だけでなく、歯肉炎、カリエスの評価も可能なため、例えば、カリエスが大きくならないように患者様にブラッシングを注意して頂くなどの的確なアプローチやカリエスの変化を追うことで管理が可能になり、矯正治療で最も厄介な治療の中断を回避することができます。
クリニックと患者様の双方にとって、矯正中に避けられないトラブルのリスクをAIの検知によって最小限にすることはトラブルによる矯正治療が止まってしまう時間を最小にする事が可能になり、必要な時に必要な診療を受けるという時間とお金の制約に繋がります。
AIの力で医療を更に確実で安心なものへと進化させていると確信しています。