クリーンエネルギー駆動のAIインフラ企業「Crusoe」：6億ドルの大型資金調達で評価額28億ドルへ
近年、生成AI（GenAI）や機械学習（ML）、大規模言語モデル（LLM）をはじめとする先端技術が、ビジネスの在り方を根本から変えつつあります。その一方で、これらを支える高性能かつ持続可能なクラウドインフラの整備は、世界的な課題となっています。こうした背景の中、米サンフランシスコ発のAIインフラプロバイダー「Crusoe（クルソー）」が、大型資金調達によって大きく注目を集めています。
Crusoeとは何者か？
Crusoeは、環境に配慮した「クリーンエネルギー」を活用した次世代のクラウドインフラ構築を目指す企業です。同社は従来のクラウドベンダーとは異なり、再生可能エネルギーや、石油・ガス生産現場から排出される余剰フレアガス（燃え捨てられていたガス）を有効利用して、高性能なデータセンターを稼働。AIやMLに特化した縦方向に統合されたインフラストラクチャを提供することで、より低コストかつ環境負荷を抑えた計算資源を顧客に届けています。
この戦略は「デジタル・フレア・ミティゲーション（Digital Flare Mitigation）」と呼ばれ、廃棄されていたエネルギーを高度なクラウド計算に転換するというユニークなモデルを確立。持続可能性とコンピューティングパワーを両立させるという点で、業界内外から注目されています。
6億ドルの新規調達で評価額は28億ドルに
2024年12月中旬、Crusoeは新たにシリーズDラウンドで6億ドル（約900億円超）の資金調達を発表しました。これにより、同社の評価額は28億ドル（約4,200億円超）まで到達。投資家にはFounders Fund、Fidelity、Mubadala、Nvidia、Ribbit Capital、Valor Equity Partnersなど、名だたる有力ファンドや大手企業が名を連ねています。
この調達によってCrusoeは、さらなるデータセンター拡張やクラウド基盤「Crusoe Cloud」の強化、クリーンエネルギーの供給ライン開発など、バリューチェーン全体での成長に拍車をかける方針です。すでにアビリーン（テキサス州）では、1.2ギガワット（GW）の設備容量を計画する大規模データセンター建設を進めており、合計15GW超の開発案件が展開中とされています。
この数字は、伝統的なクラウドプロバイダーと比較しても短期間で巨大な計算資源を提供可能な体制を示唆しています。
クリーンエネルギーによる垂直統合型クラウド「Crusoe Cloud」
Crusoeは、同タイミングで同社のクラウドプラットフォーム「Crusoe Cloud」の一般提供（GA：General Availability）を開始しました。AI・MLワークロードに特化した高性能なコンピューティングリソース、マネージドサービス、エンタープライズグレードのサポートを備え、モデルのトレーニングやファインチューニング、スケーラブルな推論まで、エンドツーエンドでサポートします。
世界中の企業が生成AIや機械学習モデルを活用し、実運用に耐えるインフラを求める中、Crusoeは持続可能性×高性能を実現する新しい選択肢として差別化を図っています。CrusoeのCEO兼共同創業者であるChase Lochmiller氏は、「AI革命を支えるには新たなアプローチが必要」と強調し、垂直統合によるスピードと価格性能比の向上、環境負荷軽減を掲げています。
Crusoeがもたらす市場インパクト
多くの企業がAI開発に本腰を入れる中、計算資源確保とエネルギーコスト、そして環境への配慮が必須条件となっています。Crusoeは、この3つを同時にクリアするソリューションとして市場での存在感を高めています。同社は過去12カ月で顧客数を7倍に増やし、すでに米国内9州および3カ国で事業を展開。クリーンな計算資源への需要増加や、各地での再生可能エネルギー活用ニーズを背景に、今後さらに市場での存在感を拡大していくでしょう。
まとめ
Crusoeはクリーンエネルギーを基盤とした次世代AIインフラ企業。
シリーズDで約6億ドル調達し、評価額は約28億ドルに到達。
「Crusoe Cloud」はAI・ML特化型のクラウドサービスで一般利用可能に。
テキサス州をはじめとする大規模なデータセンター計画で、15GW超の開発案件が進行中。
エネルギー効率、コスト、性能を両立し、AI時代の新たなインフラ戦略を提示。
クリーンでパワフルなインフラにより、AI分野の発展に寄与するCrusoeは、今後も大規模で持続可能なデータセンターインフラを世界各地で拡大していく見通しです。AIを活用したサービスやプロダクトを生み出す企業にとって、Crusoeは新たな選択肢として台頭しつつあります。
引用元（英語原文）：