同じ顔した男達
「おい、お前は奴を止められねーのか。」
「なんで俺がそんな事しなきゃいけねーんだ、面倒くせえ。お前こそ奴をどうにかしやがれ。」
「困った奴だぜ、まったくよ。身体は一つしかないのに奴ばかり目立ってやがる。仕方ねーからちょっくら言ってやるか。」
「おっ、行くのか、ありがてぇ。俺も奴には腹が立ってたとこなんだ。」
「お二人さん、暇かい?暇だったらちょいと相手してやってくれねーか?」
「また面倒くせーのが来やがった。」
「面子が足りねーんだよ、二人が来てくれたらちょうど間に合うんだけどな。」
「騒がしいな、どいつもこいつも。ちっとは落ち着きやがれ。俺は静かに酒飲みてーんだよ」
「静かに飲みたきゃ部屋出て行けばいいじゃねーか。」
同じ顔の男たちが部屋の中で好き勝手に言葉を投げ合っている。
そこへまた、同じ顔の男が入ってきた。
「皆さん元気ですねー。まあまあそんな声を荒げず平和にいきましょうよ。」
一瞬、沈黙の後。
「この野郎、よくノコノコ来れたもんだな。てめーのせいで俺ら誰も部屋から出れねーんだぞ。」
「いつもいつも女の尻ばかり追いかけやがって、こちとらもう半年も女の肌にも触れてねーっていうのに。」
「あんたを場に入れてやるからこっち来いよ。身包み全部剥がしてやる。」
思い思いに一斉に話しかけた。
「いやいや、ほんと申し訳ありません。皆さんが大人しく部屋で閉じこもってくれてるおかげで僕は今日も楽しく過ごせているわけでして」
「まあ、とりあえずこっち来て酒でも飲もうぜ。話はそれからだ。」
「あ、御免なさい。残念ながらもうすぐ女と会う時間です。ではでは。」
そう言ってドアを閉め、また出ていった。
部屋に残された男達は何も話す気になれず黙り込んだ。
しばらく経ってから一人が口に出した。
「いつになったら俺達は部屋を出て行けんるんだ」
誰も何も言い返さない。
ただ待つだけの時間が静かに過ぎていく。
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