TEARS OF TRAGEDY アルバム等紹介
先日、TEARS OF TRAGEDYが前作から4年ぶり、15周年のこのタイミングで新作アルバムを発表した。
今回も傑作であり、ライブのある8/3まではTEARS以外耳に入れないつもりで、今までの楽曲を全部総ざらいするつもりだ。
ということで、あまり書かないが、折角なのでTEARSのこれまでの楽曲を、布教の意味も込めて紹介しておくことにする。(ここでは映像作品は省く)
なお、単純にTEARS好きな個人の偏った感想なので、その真価は実際に聴いて確かめていただきたい。
第1 TEARS OF TRAGEDYについて
公式サイトのバイオグラフィを見ると、2008年にTORUとHAYATOの2人を中心に結成し、2009年7月7日にHARUKAが加入。
コンピレーションアルバムでの楽曲発表を経て、2011年に1stアルバムをリリースしている。
本バンドのメンバーは現在HARUKA(Vo)、TORU(Gt)、HAYATO(key)の3人組である。
5人の時期があったが、脱退加入を数回経て現在3人となっており、
ライブの時にはここにBaとDrのサポートが入る。
第2 アルバムについて
ではまずアルバムを御紹介。
なお、前提として大事なことを一つ言っておくと、TEARSの曲は第一印象のとっつき易さとは裏腹に、複雑な展開やメロディラインが多いため、総じてスルメである。
聴き続けると各楽曲の印象が変わると思うので、とにかくまずは聴き続けてもらいたい。
(1)1stアルバム「Elusive Moment」(2011年8月26日発売)
記念すべき1stアルバム。
現行と同じ、HARUKA、TORU、HAYATOの3人体制でのリリースだった模様。
色々な誌面を見る限り、初期の頃の楽曲は、邦楽ぽくないように、自分たちが影響を受けてきた日本の音楽が、楽曲に反映されないようにあえて意識していた模様。
'TEARS OF TRAGEDY'という名を体現するかのような、ウエッティでやや暗めでシリアスなナンバーが並び、後続のアルバムの曲に比べると大分質感が違うと感じる。HARUKAの歌声も楽曲も相まってか幸薄いような物哀しい雰囲気で、まだまだ声も細いのは否めない。
とは言え楽曲は粒揃い。
Silence OceanやAnfilliaは今もって演奏されることが多く、The Arclight of the skyはオーラスで披露されることが多い。
ただそれ以外の曲が中々演奏されないのが少し残念。
個人的には新宿MARZ以来のOwn Crimeをそろそろ生で見たい。
(2)2ndアルバム「Contanuation of the Dream」(2013年12月4日)
5人体制となってリリースされた2ndアルバム。
現状このアルバムからライブで披露される曲が多い事を考えても、完成度の高い一枚と言えるだろう。
最も後続のアルバムに比べると、まだまだシリアスで物悲しさ漂う楽曲が並ぶ。この辺りはまだ1stの流れを汲んでると思うが、楽曲のクオリティはどれも素晴らしいものになっている。
2ndと3rdは当時のメンバーの技量に合わせて楽曲も押さえていたという趣旨のTORUの発言がインタビューにあったと記憶しているが、逆にこの時期はそういう展開を抑えたことが功を奏しているのではと思うような良曲が揃っているように思う。Another Worldなんかはその典型だろう。
先述のAnother World、珍しくキーボードソロがあるFalling Star、そして12分の大曲Prison of Abyssという3曲の流れが個人的に好きで、大体ワンセットで聞いてしまう。
なお、TEARSには春夏秋冬の四季ソングがあるのだが、本作は春の「Spring Memory」と冬の、「It Like Snow...」が収録されている。
(3)3rdアルバム「STATICE」(2016年12月7日)
前作から3年の月日を経て発表された3rdアルバム。
個人的にはこのアルバムが良くて、新宿MARZのワンマンに初めてライブを見に行ったので思い入れのあるアルバムだ。
1stから2ndにかけてシリアスな曲がメインだったのが、この辺りから明るいメジャーコード中心の曲も増えてくる。
陽と陰の両立がこの辺りから見え始める。
そのためアルバム自体は今までよりもやや明るい印象がある。とっつき易さという面では1st〜5thの中では一番かもしれない。
とは言え、12分越えのCurse Brideなどの、いかつい曲もあるし、Accept Yourselfのようなツーバスを踏み倒す楽曲もあり、決して丸くなった印象はない。
なお今作から明らかにHARUKAの歌唱力の向上が見られ、ハードな曲からバラードまで安定感を持ちつつ楽曲ごとに声色の表情を変え、彩りを添えている。
楽曲としては、四季ソングの秋にあたる「Fall in the air」が収録されている。
個人的にBe Inconsistentがかなりお気に入りだが、なかなかライブで聴けないのが残念。
ちなみに、今アルバムのリード曲ともなっているVoid ActはMVも作成されており、今やバンドの名刺的な曲になっている。
(この記事を書いている時点で、99.6万回再生で、100万再生まであと少し、みんな見て!)
(4)4thアルバム「TRINITY」(2020年11月25日)
前作から4年時を経て、コロナ禍に発表された4thアルバム。
この間パタっとリリースもライブも止まってしまい、TEARSの動向にやきもきしていた中でこのアルバムが発表された時は嬉しかった。
一方でメンバーの脱退もあり、再び3人体制になった。その事を受けてか、タイトルが「TRINITY」となっている。
サポートにTHOUSAND EYESのYU-TOを迎え、演奏難易度の枠を外した結果、過去一番攻撃的なアルバムが出来上がっている。
2nd、3rdのような長尺曲は無くなったが、No.5や時に鏡は嘘をつくのような過去にはない楽曲がある一方で、NonsiteやInnocent gramのようなキャッチーな曲があったりする。
HAYATOがデジタル音そのものみたいな同期があまり好きではないとのことらしいが、あえてそう言ったテイストを取り入れたクロノメトリーのような今までにはない実験作も見られる。
全体として楽曲のバリエーションや質も過去最高に仕上がっており、そこに乗せるHARUKAの声のニュアンスの付け方も素晴らしい。
四季ソングラストの夏「Innocent gram」が収録されているが、これ自体は2017年のワンマンの時に披露されていたので、待望の収録といった感じだった。
個人的には幽玄の壮大な感じとサビ後ろのピアノアルペジオが物凄く好きだったりする。
(5)5thアルバム「Wonder Arts」 (2024年7月18日発売)
そして目下最新のTEARSを示している5th。
前作から再び4年時を経て発表されたオリジナルアルバム。
まだ聴き込みが足りないので簡単に触れるにとどめるが、これまた素晴らしい傑作。
攻撃的なアルバムをというコンセプトでスタートしたようだが、出来てみるとそうでもなくなったとのこと。
ドラムアレンジにサポートのMAKIを迎えている。
前作からのとっつき易さはTRINITYの方が上かなとは思うが、頭から終わりまでの流れやストーリー性はこちらが上かなと思う。
あと、いつも以上に歌詞が素晴らしいように感じる。歌詞で伝えたいことは特にないというHARUKAだが、いつも以上に要所要所で耳に引っかかるというか、ハッとさせられる歌詞が散りばめられているように思う。
楽曲単位では、個人的にリベラリストが頭一つ抜けていると感じる。
難解ながらも美しいメロディラインと、扱いが難しいテーマながらうまく消化した素晴らしい歌詞、最高である。
それとroseのアウトロに唐突にヴィヴァルディを突っ込んでくるのがとても良い。
第3 配信限定
(1)「Astrea」(2017年9月8日配信開始)
2017年に初の配信限定シングルとしてリリースされた楽曲。
記憶が正しければ、CONCERTO MOONと対バンをやってた頃に出された楽曲だと記憶している。
楽曲の雰囲気自体は、STATICEのalwaysやPastel Colorといった曲の延長線上にあるという印象なのだが、AメロなんかはNo.5くらい早かったり、シュレッドなギターソロが荒ぶっていたり、結構なファストナンバーだったりする。
なお、MVでは山の中で撮影をしたシーンがあるが、ヒルが発生して大変だったらしい。
(2)「Epitaph」(2022年9月24日)
2022年にAstrea以来に配信限定としてリリースされた楽曲。
この直前に開催された8月の新宿BLAZE公演に初披露された。
確かLIVEのMCで、TEARS史上最速の曲を目指して作成した楽曲とのことで、Drにサポートとして定着したMAKIをDrアレンジと演奏に迎え作成された。
4thの「No.5」や「時に鏡は嘘をつく」の激しさ、速さ、そしてダークさを正統進化させたような楽曲で、TEARSの陰の表情を存分に堪能できる。
メンデルスゾーンの楽曲をフィーチャーし、2バスを踏み倒すイントロから、3拍子の静かなパートにテンポチェンジ、そしてサビで再び激しくなるという起伏に富んだ楽曲となっている。
この楽曲はMVが作成されているが、この前の作成MVが「Nonsite」と「クロノメトリー」という、どちらかといえば陽の表情の楽曲であるため、これが同じバンドの楽曲だというと結構驚かれる。
なので人におすすめする時は、NonsiteとEpitaphを両方薦めるようにしている。
第4 その他アルバム
(1)SAMURAI METAL VOL6(2010年10月29日)
TEARSは1stアルバムを出す前に、コンピレーションアルバムで曲を発表しており、それを収録しているのが本作である。
本アルバムにて「LIEN」という曲を提供しているが、この曲はもうやらないらしい(彼らのYouTubeラジオにて)
曲自体は、1stのシリアスな楽曲群に比べると、結構キャッチーな感じになっている印象。
ソロパートではギターとキーボードの掛け合いと思われる部分もあり、面白い構成になっている。
現在このアルバムは廃盤で相当高額がついているため、手に入れるのが困難。
再録して配信してくれないかなぁ。
ちなみにこの頃TEARSは、5人組だったようだ。
ここから1stの発表までに3人になり、また5人になり、そして今また3人という編成の歴史を辿っている模様。
(2)&(2022年5月25日)
これまでの楽曲のアコースティックアレンジアルバム。元々星の砂やclose not yet、after songといったアコースティック主体の楽曲がオリジナルアルバムに収められているところだが、その要素を深掘りした形だ。
様々な角度で秀逸なアレンジの素晴らしさはさることながらが、そこに乗せるHARUKAの声がとても良い。アコースティックにしたことで、どちらかと言えば悲哀の成分が大きいかなとは思うが、これはこれでTEARSの特徴的側面と楽曲の美しさを存分に堪能できるので良い。
(3)TRINITY&OVERTURE 15th Anniversary Special(2024年5月22日)
TEARSとしては初のライブアルバム。
前年の新宿BLAZEライブの全曲が収められ、加えてAldiousと2マンで行われたクラブチッタ川崎での15周年記念ライブの全曲が収められているという大ボリューム版になっている。
Baに種子島洋二、DrにMAKIを迎え、その当時のライブの素晴らしさが凝縮されている。
なお、新宿BLAZEと15周年では音のMIXが微妙に違っており、15周年ライブの方がギターが前に出て、キーボードも同期と演奏が比較的わかりやすく分離して聞こえている。荒々しい感じになっている。
1st、2ndの楽曲をこの編成で今やるとこうなる、というところが特に聴きどころだ。
以上、雑多に色々書いてみたが、少しでも興味を持った方是非聴いてみてほしいという、ただそれだけである。(スルメなのでよく聴いてほしい)
本当に良いバンドだなと思う。
とりあえず、今週のライブが楽しみで待ちきれない。