劇薬: 大島弓子
Book cover challenge
Day 2:大島弓子『つるばらつるばら』
「お義父さん 夏の陽ざしにできる影って濃くて深いよね
人生も濃くて深い影があれば その裏にかがやくまぶしい光がぜったいある!
ぜったいにあるんだよ お義父さん」
大島弓子は「少女性」と「情緒」と「猫」の漫画家です。画面には花びらや星が舞い、登場する女性の多くはフリルやレースの愛らしい服を着ています。
けれど彼女の作品はその可愛らしい見た目の中に、死に至ってしまいそうな毒をはらんでいるのです。
大島弓子のすごいところは、そこに留まらず(ファッション病みカワ雰囲気少女マンガで終わらず)心の毒さえ受け止めて作品として昇華し、魂の救済(だと私は思う)をしているところだと言えます。
大好きな漫画家ですが、一冊だけ紹介するならこの文庫本を選びます。この本はそれぞれが独立した物語から成り立つ短編集です。こどもの頃から繰り返しみる夢の謎を探る『つるばらつるばら』、精神年齢が見た目に反映されて世界が見える、肉体は8才だけれど精神が異常に発達してしまった男の子が主人公の『夏の夜の獏』、登校拒否と出社拒否を隠していた娘と義父がひょんな事からなんでも屋を始める『毎日が夏休み』など、個性的な物語の流れと読んで良かったと思わせるラストが魅力的なショートストーリーが詰まっています。
少女(少年)のときに大島弓子の作品に出会うのも良いですが、もう少女とは呼ばれなくなった大人が読んだほうがより一層味わい深く、悲しみを慰められる気がします。
私はこう感じますが、人によっては全く違う魅力を見つけると思います。重さを感じさせない柔らかな絵柄なので、ぜひチャレンジしてみて下さい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?