「LSE 留学のひととき 1: The Library」(2023年3月1日)
英国文化に触れようと考えた時、アフタヌーンティー (afternoon tea) は有力な候補になるのではないか。
この日(2023年3月1日)は、日本からはるばる旧友が会いに来てくれた。彼女と共にアフタヌーンティーを通じて英国文化の一端を楽しむことを選択した私は、The Libraryを訪れた。(最後に複数枚の写真が掲載されている。)
アフタヌーンティーの楽しみは、分厚いパッケージのようである。
アフタヌーンティーには、下のような「パッケージとしての楽しみ」があると思っている。五感を凝らした体験は、空腹を満たすことよりも、文化体験に近い充足感がある。
(1)「二食分ではないか?!」とまで思わせてくれるボリュームあるサンドイッチ・スコーン・ケーキのセットで、イギリスの味覚を楽しむ。
* サンドイッチでは例えばフルーツジャムやハーブと肉・魚との組み合わせを楽しむ。パンの温度や質感(ふわふわ感)を楽しむ。
* ケーキでは、デザイン性と使用する果実の種類や、酸味と甘味の組み合わせを楽しむ。
* スコーンでは、スコーン特有のしっとり感・ほろほろ感・カリカリさ・素朴さを楽しむ。付け添えのジャムでは、ベリーが手に入りやすく安価であり、ベリーが根付いていることを認識してその気候や農業の背景を楽しむ。クロテッドクリームでは、ミルクの味の深さとこのクリーム固有のコクを楽しむ。
(2) (茶葉の種類に依るが)カップ内を満たすお茶の琥珀のような色味、色のトーン、艶、香り、味覚(甘味やコク)を楽しむ。
(3) 食器の製造元ブランドの歴史的背景、食器の色味、形状、食器同士の組み合わせを楽しむ。
(4)丁重なお茶のサーブ等のサービスや店員との会話を楽しむ。
(5) アフタヌーンティーの作法を学び、倣うことを楽しむ。
(6) 食事場所の空間デザインを楽しむ。
数ある店舗の中でThe Libraryを選択した理由は、値段、評価、立地であった。そして、The Libraryでは素晴らしいアフタヌーンティーの体験ができた。
The Libraryについて特に気に入った点は、
・ビッグベンに極めて近い立地であること。(窓からビッグベンが望めること。私が予約した時間では、日光のもとのビッグベンとライトアップした夜のビッグベンの両方の顔が見れた。)
・建物に入ってすぐ受けたエスコートが迅速で丁寧であり、エスコートしてくださった方は上品で愛嬌のある方であったこと。
・スコーンのうち、一種にはハーブが練り込まれてあり、レモンクリームをつけて食べるという新しい味覚が探究できたこと。
・ケーキのデザインがいかにもロンドンチックでアイコニックであったこと。
・着席して最初に受けたサービスとして茶葉選びがあり、そこではビンに詰められた茶葉の香りや見た目を楽しみつつ、説明を受けながら茶葉の選択ができること。
・静かで落ち着いた空間であること。
・図書館のような空間であり、本棚に囲まれて食事ができること(イギリスに留学している身としては、こういうアカデミックなデザインがとても気に入った。)
・他店舗と比較して比較的価格がリーズナブルであるにも関わらず、サービス、お茶、食事、空間の全てにおいて素晴らしかったこと。また、それらが相互に調和が取れたものであったこと。
・Willian Edwards England のブランドがThe Libraryのために手掛けたオリジナル食器が使われており(The Libraryの文字が入っている)、図書館風の空間によく似合う洗練された雰囲気のデザインであったこと。
また、この場所を訪れていたブラックのオーガンジー生地のドレスが素敵な幼女が、受付のデスクの前に立ってこちらに向かって一生懸命に何度も何度も手を振ってくれたことは、ささやかでありながら愛おしいエピソードである。彼女の家族、私や友人も癒されたのであった。公共の場でささやかな人的交流を楽しみ、それがいっそう思い出を豊かに温かにするのも、(イギリスに限らないかもしれないが)旅行の醍醐味といったところである。