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銀河間トラベラー「アプ星」との170時間            兄弟愛から地球を訪れるアプ星人との出会い

不意の停電にもかかわらず、巨大な光源が…
1960年3月10日に主人公はアプ星人と遭遇しました。
主人公はワジャンカ水力発電所の機器オペレーターとして働いていました。
それはワイラス渓谷のサンタ川右岸、ペルーアンデス山脈の険しい岩場の中に設けられたトンネルの中にありました。
一羽のセグロオオタカが発電機の上を飛んでいました。
この招かれざる訪問者の訪問を伝える為に、制御盤のオペレーターに連絡しようと、内線電話に近づいた時に、突然停電しました。
高圧変圧器がオーバーヒートしないよう対応しようとトンネルから出て待ち受けたのは、半径250m圏内が真昼のように照らし出されていました。
彼は、中庭にある平坦なエリアに光り輝く構造体を発見し近づいて行きました。
その途中、エントランスの警備員のキロスと出くわしました。
主人公の「やあ!キロス!ここは随分と明るいなあ」の問いに、キロスはその物体の存在を以前から知っていたのでした。
キロスが言うには
「セニョール、怖いならあっちに行かない方がいいですよ。いつものように円盤に乗ってきて、着陸したばかりなんだから。悪い人たちじゃない、誰も傷つけないんですからね。どれほど彼らが善良か、セニョールは想像もつかないですよ。お願いです、好きなようにさせてやって下さい。多分すぐに行ってしまうんだから」
とキロスは言います。
「キロス、聞いてくれ。お願いだからよく説明してくれないか。誰がどこからやって来て着陸したんだい?ここで何をしてるんだい?」
「怒鳴らないでセニョール。低い声で話して下さい。怒鳴らないで下さいよ。彼らは、とても遠い異世界の住人だと言っています。羊飼いがいるあの山頂には、よく来るんです。」
立ち止まったままのキロスは大声を上げ、異様なマシンに近づかないように彼に懇願するばかりでした。
変圧器の中庭から約百メートル、マシンから約二百メートルの地点で、私は二人の男性に出くわしました。
※アプ星人容姿は
二人ともなで肩で背が高く均整のとれた体つき。着ているものといえば、体にぴったりと密着した、奇妙な色の極薄ニット・ウエア。なんだか、アザラシの濡れた肌のような風合いです。
※主人公とアプ星人の会話を原文そのまま掲載します。
私の左側にいた人物が、なんと、私の母国語の方言で挨拶をしてきました。ですが、そんな子供だましにはひっかかりません。
スペイン語で挨拶した私は、間一髪入れず質問しました。
「あなた方はどなたです?、ここで何をしているのですか?」
「警戒しないで、アミーゴ、お願いだよ。」
彼は母国の方言でしゃべり続けます。
「僕たちは宇宙人だよ。アプ星人なんだ。宇宙を旅をしていて、この銀河を通過する際には、兄弟愛から地球を訪れる。
僕たちはを許してくれ。すぐに出発するから。」

「とっとと消え失せろ!それに、そんなバカげた宇宙人の話は、お前さんたちの婆さんにしてやれ。婆さんなら、宇宙人が自分を十五歳の娘に若返らせてくれる、と信じるだろうさ。
 いいか、ここはもう二度と舞い戻ってくるな。お前たちのとんでもないマシンがショートを引き起こして、チンボテの製鉄所に大被害をもたらした。電流を切断したんだからな。」
私は、こんな口調で彼らに言い返しました。彼らが、自分たちが地球人ではなく、ワジャンカのような辺鄙な場所を訪れるために他の星からやってきた、などと図々しい話をしたからでした。
私は、そん彼らの言葉が何一つ信用できませんでした。おおかた、彼らは高度テクノロジーを有するどこかの国のスパイでしょう。私をかついで、宇宙人だと言い張るつもりに違いないのです。
「なんと言ってもかまわないけど、電流の遮断は僕たちのせいじゃないよ。君の発電所には、もう明かりが戻っているし……。
アミーゴ、お願いだから僕たちのことを悪く思わないでくれ。
僕たちを許して欲しい。
『忘れないよ』。全ては他者ののために!
彼らは最後の言葉をほぼ同時に唱えると、マシンの方に引き返していったのでした。
以上が主人公とアプ星人の初対面のやりとりでした。
そして、こうして去っていきました。
マシンは、スプリングの形をした三本の巨大な光の帯の上に陳座しています。光の帯の先端には、同じような光る大きな形の防舷材が取り付けられています。さらに、マシンの底部中央と地表の間には、端がバネ状になった階段が架けられていました。
 正体不明の人物たちが階段を上ります。とたんに、階段は内部に引っ込み始め、彼らを運び去ってしまいます。マシンを支えていた光の帯も、瞬く間に引っ込んでしまいました。
 そよ風にも似た軽やかな音が聞こえました。すると、マシンは垂直に宙に浮かび上がります。空高く舞上がった円盤は、蛇行しながら雲間に姿を消してしまうのでした……。



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