町になじめない
珍しい撮影依頼をいただいた。
”引っ越しをして半年。いまだにこの町が好きになれなくて、この町となじむ練習をしたいんです。”
行ったことも聞いたことも無い町の名前。グーグルマップで仮想ロケハンしてみた。駅前にはチェーン店の焼肉屋とかつ丼屋。小さなスーパーが一件。人が集まり憩うような空気は希薄で、「行く」ような場所ではなく、「住む」場所。そんな印象を受けた。
ツイッターで拝見していた第一印象は「強い、クール、個性的。もしかすると、気難しい?」だった。まぁ、撮影が終わるころにはそんなもん全部吹っ飛んだけどね。
撮影当日。青い髪、耳にはプラスチックの板に誰かの顔が書かれた大きなイヤリングをぶら下げ、バカでかいじゃがりこのリュックをしょってやってきた。
”まっさんは、一瞬、びびった。”
しばらく、ベンチに腰掛け言葉を交わし、ご自宅までの道を歩きつつ、気になった場所で撮りましょかと、ノープラン街歩きポートレート開始。片道二車線の国道沿い。細い歩道を傾いた西日に向かって歩きだす。
排気ガス。大きなパチンコ屋、中古車販売店、ビデオ鑑賞店。疲れて帰ってきた帰路の途中にある店としては味気ない。そう、緑が無いんだよなぁ。硬いんだ。この町。
彼女から感じるカラーは青。確かにハマる。しっくりくる。画面越しに見ていたイメージのまま切り取れる。が、物足りない。そう、この撮影をするにあたって、伝えてはいなかったが、彼女の素、なんならバカ笑いを一枚でも撮ったろ。と、企んでいた。撮影終盤には撮れるよう持ってくでぇ。
すぐ撮れた。
ていうか、駅前で話してる時から、撮れると思ってた。よう笑うねんもん。そんなん思わへんやん。ツイッター見てる限りじゃ。あっさりミッションクリア。
シャクレルプラネットリスペクト。
ほどよく日も傾いてきて、ゴールデンタイム突入。後はもう撮るだけ。
キメキメの後は
おちゃめな雰囲気も。
そして
この日、一番のお気に入りはこれ。
キメキメでも、おちゃらけでも、バカ笑いでもない。なんとも言えないこの表情が、自分的にグッとくる。グッとくるねん。狙って撮れないし、こういう顔して欲しくても指示のしようもない。
だからいい。
”町になじめない”
そう言っていた彼女。翌日、こんなツイートをしていた。
なんか、地元ではじめて撮影してもらって感覚変わったんだが。仕事から帰る時、帰り道とかすごい憂鬱だったの。家まで遠いな、なんもないなって。でもこの帰り道で大爆笑しながら撮影したから、なんか...ぜんぜん違うものになった。なんなんだ、この足の軽さは。明日も同じかどうか試してみよう
嬉しくなるよなぁ。
こんなこと言われたら。
撮ってよかった。
model : 槐 奏子さん
twitter : https://twitter.com/saikatikanako
なんですと!?お気持ち感謝します!!