短い昼寝の間に

 居酒屋に二〇年ぶりの旧友といる。彼の姿は最後に会った時から変わっていない。座敷で、テーブルには料理と酒がある。話題は近況から思い出話へと移っていく。

 まだ生きることに心のリソースを割かなくてもよかった時代の思い出話は楽しいが、どこか空しい。

 唐突に「つまらん人生だった」と旧友はつぶやいて店を出て行った。呆気にとられていた私は慌てて追いかける。彼の車は駐車場から国道へと出て行き、それを見送りながら追うべきかどうか迷って、私は素足のまま走り出す。

必死に車のテールランプを追いながら、私は叫ぶ。

「四〇過ぎてから絵を描き始めて、〝いいね〟をもらうことだってできるんだよ!」

転んだ。スローモーションのようにゆっくりと、アスファルトの地面をゴロゴロ転がってベッドの上で目が覚めた。

短い昼寝の間の、つまらん夢だった。

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