マガジンのカバー画像

東京大学 権藤智之研究室

36
建築構法を研究する、東京大学権藤智之研究室のnoteマガジンです。 権藤智之研究室のHPはこちら http://gonlab.com/
運営しているクリエイター

#建築

ディスカッション 東野唯史×水野太史  (司会:河野直)

東野唯史氏・水野太史氏の2名をゲストとして迎えた本レクチャーは全国各地から約60名の参加者が集まった。参加者にはレクチャーを聞きながら、2者の取り組みに「共通すること」を探してもらった。発見した共通項はチャットボックスで投稿してもらい、30余りのキーワードが出揃った(上図参考)。後半は、これらの中から深堀りしていみたい共通項を選定して、ディスカッションを行った。 事業性とつくるものの質の関係性河野:参加者のみなさんから、お二人の共通項をたくさん頂きましたので、読んでいき

水野太史氏レクチャー「焼き物からデザインを考える」

本稿は、2021年11月10日に東京大学建築生産マネジメント寄付講座主催のレクチャーシリーズ「つくるとは、」の第四回「つくる×材料」における、水野太史氏(水野太史建築設計事務所/水野製陶園ラボ代表)による講演(研究・活動紹介)の内容から構成したものになります。 京都工芸繊維大学の3回生のときに、文化祭で仮設的なカフェをつくりました。当時所属していた、美術部のメンバーのほとんどが建築学科とデザイン学科の学生で、みんなで意見を出し合いながらカフェを設計・施工しました。既存のRC

【建築生産マネジメント特論講義】 霞が関ビルとはなんだったのか──超高層ビルと、「建築生産の科学」の時代

本稿は、東京大学大学院にて開講された権藤智之特任准教授による講義『建築生産マネジメント特論』を筆者が一部再構成し、テキストベースで公開するものです。 カバー画像:霞が関ビル上棟式の鉄骨(霞が関ビルディング50年記念誌より転載、三井不動産蔵) 新たな技術と、それを使いこなす想像力が組み合わさった時、これまでにない建築構法システムが突如可能になることある。過去100年ほどの間に突如登場した”超高層ビル”というアーキタイプは、その顕著な実例の一つだと言えるだろう。超高層ビルの構法

建築生産マネジメント特論講義5──韓国の木造住宅、東アジアにおける住宅生産の展開

本稿は、東京大学大学院にて開講された権藤智之特任准教授による講義『建築生産マネジメント特論』を、一部テキストベースで公開するものです。 前回は構法システムの振る舞いを立体的に把握すべく、沖縄の戦後住宅生産史を分析した。今回は続けて、沖縄同様、木造建築生産が少ない韓国における構法システムのあり方を取り上げる。特に韓国が国を挙げて取り組む木造軸組構法の伝統住宅「韓屋(ハンオク)」振興政策の展開は、国家主導の構法システム構築の実例として注目に値する。 カバー写真:建設が進む韓屋

建築生産マネジメント特論講義4──沖縄の木造住宅、喪失と再生

本稿は、東京大学大学院にて開講された権藤智之特任准教授による講義『建築生産マネジメント特論』を、一部テキストベースで公開するものです。 前回まで、戦後住宅史、プレハブの歴史、工務店の登場と、戦後日本の住宅生産に関連する大きな見取り図を順に見てきた。結論の一つは、戦後日本における木造在来構法システムの強靭さを確認したことであろう。 とはいえそれは、あくまで木造在来構法システムの及ぶ範囲の理解にとどまる。今回はこれを相対化することを目標とし、「沖縄」に着目する。戦後の動乱をへ

建築生産マネジメント特論講義3──在来構法と工務店、その未来

本稿は、東京大学大学院にて開講された権藤智之特任准教授による講義『建築生産マネジメント特論』を、一部テキストベースで公開するものです。 前回の講義ではプレハブ住宅の技術史的展開を概観した。それは部品の互換性技術に裏打ちされた「大量生産」という夢の実現であった。戦後の住宅不足を解決し、高度な住宅のプレハブ化に成功した日本は、世界的にも稀な工業化住宅先進国といえる。 しかし、改めて日本の住宅市場を見てみれば、売り上げが一兆円を越すような巨大なハウスメーカー(プレハブ住宅メーカ

建築生産マネジメント特論講義2──「プレハブ住宅」の展開(後編)

本稿は、東京大学大学院にて開講中の権藤智之特任准教授による講義『建築生産マネジメント特論』を、一部テキストベースで公開するものです。 前編で見てきたように、「プレハブ住宅」が成立してゆく流れとは、「大量生産」という近代的な工業生産の方法論を「住宅」へと適用しつつ、これを市場に受け入れられる「商品」へと変容させていくプロセスであった。ここで最初に概観したプレハブの思想の成立過程に立ち返ろう。そこで重要だったのは、製品を互換性のある「部品」へと分解し、これを安定的に供給するシス

建築生産マネジメント特論講義2──「プレハブ住宅」の展開(前編)

本稿は、東京大学大学院にて開講中の権藤智之特任准教授による講義『建築生産マネジメント特論』を、一部テキストベースで公開するものです。 建築学における「プレハブ」は、「プレハブリケーション(Prefabrication)」の略語である。その語の指し示す通り、事前に作っておくこと、転じて敷地で組み立てる建設方式を指す。上に示した二つのイメージは、生産システムと建築が地理的に分離したことを端的に示すものだ。本稿ではこうした「プレハブ」という想像力がどのようにして育まれたのか。また