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東京大学 権藤智之研究室

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建築構法を研究する、東京大学権藤智之研究室のnoteマガジンです。 権藤智之研究室のHPはこちら http://gonlab.com/
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2021年9月の記事一覧

『環境との協働で災害を生き抜く』 前田昌弘氏レクチャー(後編)

この記事は、京都大学准教授、前田昌弘先生に行なっていただいたレクチャーの内容を構成して公開するものです。 前編はこちら。中編はこちら。 スリランカ紅茶農園の長屋 写真1:紅茶プランテーションの長屋 次はスリランカで今も続いている研究の事例です。スリランカはかつて「セイロン」とも呼ばれ、紅茶の産地として有名ですが、僕たちが関わっているのは、山岳地帯の閉鎖された紅茶農園です。ここはスリランカでも最古の紅茶プランテーションで、かつての紅茶農園の施設が今も残っており、15軒ぐら

『環境との協働で災害を生き抜く』 前田昌弘氏レクチャー(中編)

この記事は、京都大学准教授、前田昌弘先生に行なっていただいたレクチャーの内容を構成して公開するものです。 前編はこちら。後編はこちら。 東日本大震災の集団移転団地研究 図1:従前の集落の配置を維持した集団移転団地の事例 二つ目に、東日本大震災の集団移転団地の研究を紹介します。沿岸にあった六つの被災した集落を畳み、内陸の1カ所に集まって復興団地を作った事例です。学識者や専門家が行政と住民の活動をサポートし、町づくりのプロセスを経て住宅地が作られました。特徴的なのが配置計画

『環境との協働で災害を生き抜く』 前田昌弘氏レクチャー(前編)

この記事は、京都大学准教授、前田昌弘先生に行なっていただいたレクチャーの内容を構成して公開するものです。 中編はこちら。後編はこちら。 ではお話をさせていただきます。専門は建築計画、中でも住居と町づくりです。京都大学は住居に関する研究が強いという伝統があり、僕も住居・住まいを起点にした町づくりの研究をしています。また京都だけでなく、海外でのアクションリサーチにもとりくんでいます。 研究テーマのひとつに「災害復興」があります。限られたリソースで災害を生き抜く上では、人々がど

2021年3月12日HEAD研究会ビルダーTF主催 山口博之氏レクチャー

本稿は、2021年3月12日にHEAD研究会ビルダーTF主催で行われた山口博之氏(建築意思)によるレクチャーの内容を要約したものになります。 私が代表を務めている建築意思では、設計だけでなく施工まで手がけていて、工務店といった方がしっくりくるような活動をしています。私自身は、2001年に京都精華大学の建築専攻を卒業した後、設計事務所に勤めたことはなく、現場で大工修行をしたり、自分で小屋を造ったり、家具を造ったりして京都府で過ごしていました。その後、2006年に沖縄県に移住し

ディスカッション 豊田雅子×釜床美也子 (司会:河野直)

豊田雅子氏・釜床美也子氏の2名をゲストとして迎えた本レクチャーには、全国各地から約70名の参加者が集まった。参加者にはレクチャーを聞きながら、2者の取組みに「共通すること」を探してもらった。発見した共通項はチャットボックスで投稿してもらい、60余りのキーワードが出揃った(上図参考)。後半は、これらの中から深堀りしていみたい共通項を選定して、ディスカッションを行った。 共通項 1. 素人の参加河野:「素人の参加」というキーワードが出てきました。お二人のご活動に共通するとこ

釜床美也子氏レクチャー「手伝う体験をつくる」

東京大学建築生産マネジメント寄付講座主催のレクチャーシリーズ「つくるとは、」の第一回「生活文化」が、豊田雅子氏(NPO法人尾道空き家再生プロジェクト代表理事)と釜床美也子氏(香川大学創造工学部講師)の両名をゲストに迎え、2021年7月19日に開催されました。本稿は、釜床美也氏による講演(研究・活動紹介)の内容から構成したものになります。 香川大学の釜床です。「手伝う体験をつくる」と題しましたが、手伝うというのは、いわゆる本職ではないという意味です。本職でなくとも屋根が葺ける

豊田雅子氏レクチャー「尾道空き家再生プロジェクト」

東京大学建築生産マネジメント寄付講座主催のレクチャーシリーズ「つくるとは、」の第一回「生活文化」が、豊田雅子氏(NPO法人尾道空き家再生プロジェクト代表理事)と釜床美也子氏(香川大学創造工学部講師)の両名をゲストに迎え、2021年7月19日に開催されました。本稿は、豊田雅子氏による講演(研究・活動紹介)の内容から構成したものになります。 尾道の魅力と失われつつある風景尾道空き家再生プロジェクトの豊田です。1974年に尾道で生まれて高校まで育ちました。実家の周りは車も入らない