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東京大学 権藤智之研究室

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建築構法を研究する、東京大学権藤智之研究室のnoteマガジンです。 権藤智之研究室のHPはこちら http://gonlab.com/
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2019年8月の記事一覧

日本の高層建築における施工技術の変遷第2回 揚重

この記事は「建築士2019年1月号」(日本建築士会連合会)に掲載された原稿の文章・図を修正したものです。 ブルネレスキの揚重機械 下図はブルネレスキがフィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂のために発明した揚重機械である。牛(スケッチでは馬)が車軸をまわすとギアがかみ合い荷物を上方に運ぶ。これ以前にも人間が大きな輪の中に入り、ハムスターのように輪を回転させ荷物を揚げる等の機械は存在していた(例えばトップの画像は「カテドラルを建てた人びと」ジャン・ジェンペル、SD

日本の高層建築における施工技術の変遷第1回 工程計画管理

「建築士」(日本建築士会連合会の会誌)の2018年12月号から2019年4月号に連載した「日本の高層建築における施工技術の変遷(全5回)」を転載します。図版・記述等で記事と異なる場合があります。画像の使用等問題のある場合はご連絡ください。 霞が関ビルディングから50年 先月号(建築士2018年11月号)で紹介したとおり、日本初の超高層建築・霞が関ビルディング(1968年、高さ147m)が竣工して今年で50年になる。登録文化財の対象が原則建設後50年とされるように、半世紀も経

2019年度HEAD研究会・ビルダーTF第2回 機械化と職人

前回の通り、日本の住宅生産の今後の課題は、これを支えてきたオープンな人的・物的資源が、縮小時代にも持続していけるかだと思います。その代表的な人的資源が大工をはじめとする職人です。今回は職人とその不足を補うことが期待される機械化について考えたいと思います。 下図は中岡哲朗の「人間と労働の未来」に出てくる「まんじゅう製造ライン」です。まんじゅうの記事で餡子を包む作業が機械化されると何が起こるか。それまでの職人は、作りたいまんじゅうを構想し、材料や道具を揃え、生地を練り、餡子を丸

建築生産マネジメント特論講義4──沖縄の木造住宅、喪失と再生

本稿は、東京大学大学院にて開講された権藤智之特任准教授による講義『建築生産マネジメント特論』を、一部テキストベースで公開するものです。 前回まで、戦後住宅史、プレハブの歴史、工務店の登場と、戦後日本の住宅生産に関連する大きな見取り図を順に見てきた。結論の一つは、戦後日本における木造在来構法システムの強靭さを確認したことであろう。 とはいえそれは、あくまで木造在来構法システムの及ぶ範囲の理解にとどまる。今回はこれを相対化することを目標とし、「沖縄」に着目する。戦後の動乱をへ