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高橋源一郎さんとの話

私は、高橋源一郎さんにはちょっとした恩があります。

私はラジオが好きです。
今は、主に毎週決まった番組をアプリやポッドキャストで聞いています。学生時代には深夜ラジオを聞きながら勉強をしていた、まさにその世代ですもの。しかしながら、やがて移動しながら音楽を聞ける時代が来て、そして私も就職し自由な時間が少なくなり、だんだんラジオを聞く時間は短くなっていきました。

結婚して数年後、出産し、子供への愛情が溢れた時にあらゆる好みが一度リセットされました。
これは本当に時間驚きで、何が好きだったか?持っているCDを聞いても心惹かれない、そんな時期でした。産休が明けて時短勤務になった時、通勤時のお供はカーラジオでした。初めは、どんな番組をやっているかは当時全然知らなくて、民放AM、FM問わず、公共放送問わず、ザッピングをしながら、だんだん自分のルーティンができてきました。その中の番組の1つがNHK-R1で放送されていたのが「すっぴん!」です。

「すっぴん!」という番組はアンカーの藤井彩子アナウンサー、曜日ごとの日替わりパーソナリティの方の二人で進行していく番組です。パーソナリティならではのコーナーがあったり、オープニングトークでのそれぞれの視点からの時事ネタや他愛もない出来事などがそれぞれとても魅力的で、私は頭の30分だけしか聞けませんがそれだけでも十分楽しめましたし、続きが気になる時には、聞き逃しサービスで最後まで聞く時もありました。その金曜担当のパーソナリティーが高橋源一郎さんでした。
高橋源一郎さんは小説家で、当時は早稲田大学で講義をされていたと思います。年齢はおそらくうちの親世代ですがとても感覚がお若く、柔軟な発想をお持ちの方です。
今でもNHK-R1で放送中の「高橋源一郎の飛ぶ教室」では、源一郎さんがお好きな本を毎週一冊紹介して下さっていますが、本のチョイスが多岐に渡りどれも素晴らしく、本当に読みたい!と思わせてくれます。これは「すっぴん!」の源一郎さんのコーナー「源ちゃんのゲンダイ国語」がそのまま引き継がれた形になっていて、紹介する本の注目する所を抜粋して朗読し内容を考察していく、という内容です。源一郎さんはいつも飄々として、鋭く本質を語ります。悲しさや優しさが詰まったノンフィクション、よく読むと人間の闇を浮き彫りにしているフィクションなど、今でも本の魅力を発信し続けていらっしゃいます。
8年間続いた「すっぴん!」は2020年の3月に終わってしまいました。
その年の1月、コロナ前、まだすっぴんが終了するとは夢にも思っていなかった年明けに、「すっぴん!ファン感謝祭スペシャル」が拡大版が放送されました。その時の源ちゃんのゲンコクはイレギュラーで源一郎さんから宿題が出ていました。「あなたがパーソナリティを務めるラジオ番組を考えてください」。
これまで投稿は数回しか読まれてはいませんでしたから、とても軽い気持ちで、でも自由で適当で熱のこもったメールを送りました。その他の皆さんのコーナーにも投稿したのでそのことなどすっかり忘れていたのでした。

私の「作品」と呼ぶには余りに拙い、原稿用紙数枚程度の投稿が読まれた時、台所で聞いていた私の手は嬉しさで震えていました。

言葉や文章を伝えるとはどういうことかを、その時から考えるようになりました。高橋源一郎先生はただそれだけの、めっちゃ間接的ではありますが私の恩師です!

ただそれだけ、今言いたくなったので。



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