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「祖父母のお店をどこかに残したい」そんな想いを受けた話【じんせい論】

「祖父母のお店をどこかに残したいと思い、支援させていただきました」

そんな趣旨のメッセージをいただいたのは、神戸の須磨・塩屋が舞台の絵本「スマバレイの錆びれた時計塔」を作るクラウドファンディングに挑戦しているときだった。

その方は、当時まだ出会ったことのない人。メディアを通して僕のクラウドファンディングを知り、支援をしてくれた。

その方のおじいさま・おばあさまが営むお店は、市場の取り壊しに伴い、長い歴史に幕を下ろすことが決まっていて。そこで、おじいさま・おばあさまが大切にされてきたお店の名前を、どこかに残したいと考えていたのだそうだ。

僕は、クラウドファンディングのリターンに「絵本の世界に看板を出せる券」というのを用意していた。これは、まさしく文字通りなのだが、絵本の世界に看板を出せるというもの。完成したページには、現実の世界に存在する店名や社名がずらりと並んだ。全15枠は、すべて完売。そのひとつに、そのお店がある。

絵本「スマバレイの錆びれた時計塔」より

残す場所として僕の絵本を選んでくださったのが、本当にうれしくて光栄で。形に残る絵本というものを作ってよかったと心から思わせてもらったのを今でも鮮明に覚えている。

つい先日、その方に初めてお会いし、「神戸カレー食堂 ラージクマール」でランチを共にした。絵本の発売から2年が経っていて、我ながら不義理な奴だと反省もしたが、はじめましてなのが不思議なくらい会話は弾み、心地良い時間を過ごすことができた。

しかも、看板の支援に加え、絵本を3冊も購入してくださっていて、一丁前にサインを書かせていただいた。うち2冊は、おじいさま・おばあさまのひ孫にあたる子どもたちへのプレゼントだという。まだ字が読めない年齢とのことだが、大きくなって絵本を読んでくれたとき、おじいさま・おばあさまのお店について交わされる親子の会話を妄想すると、目頭が熱くなる。

この方との出会いをはじめ、絵本「スマバレイの錆びれた時計塔」のおかげで、新聞に取り上げてもらったり、テレビやラジオに出させていただいたり、イベントまで開催できた。たくさんの人に出会えて、世界が一気に広がった。

先日、「コインが両面あるように【じんせい論】」という記事を書いたけど、これも発信を受け取ってくれた人がいたからに他ならない。

僕は、これからも創作を続けていく。最近、そんな思いを強くしている今日この頃なのだ。

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ライター・小説家 権藤将輝(ゴンドーマサキ)
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