見出し画像

【マンガ原作】『令和地獄ブラザーズReturns』VOL.5 吉田クンのお父さん

あらすじ

権藤右近は、30年前に行方不明…だったが、右近とその友人・牛山は、とある南の島で生存していた(映画『ハード・コア』より)。ある日、弟の左近がテレビの中で発見し、外国人…ウー・コン・ゴンド、ウー・シイ・ヤマのウー兄弟として日本に帰国する。平成では"自爆"で人生を清算するしかなかった二人…令和の世の中に「令和地獄ブラザーズ」の居場所はあるのか!?

登場人物

権藤右近…主人公。30年前、行方不明になっていたが、南の島で生存。外国人…ウー・コン・ゴンドとして令和の日本に帰国し、弟・左近の会社のトイレ掃除で生計をたてている。

牛山…右近の親友。ウー・シイ・ヤマとして右近と共に帰国。右近と一緒にトイレ掃除をしている。

権藤左近…右近の弟。元エリート商社マン。30年前に発掘した金のインゴッドを売却し、その資金で「サイバーコア・ネットワーク」を設立。現在CEOを務めている。

ーーーーー
『令和地獄ブラザーズReturns』VOL.5 吉田クンのお父さん

※タイトル画面
ウインズ横浜。モニターの前で絶叫する右近と牛山。

字幕かぶせて。
字幕⦅リアルとフェイクの狭間…⦆

タイトル『令和地獄ブラザーズReturns』
    『VOL.5 吉田クンのお父さん』

ーーーーー

横浜某所・公園ー
寒空の下、ベンチに座る右近と牛山。
《ふ~》と、タバコをふかす右近。
右近「う~む…」
  「やっぱり、オレは…"持って"るだろ」
牛山「…」
右近「いいか…牛山」
  「競馬に必勝法なんてねえ…」
  「しょせん…"運"でしかない」
牛山「…」
右近「オレたちにとって…」
  「ハズレた方が」
  「むしろ良い結果だった…ってことだ」
牛山「?」
財布の中を見る右近。
財布の中には万札が一枚。
右近「ま、まあ…これだけあれば年は越せる」
  「年明け、左近に前借りすれば何とかなる…」
醒めた眼差しの牛山。
牛山「…」 
右近「と、ところで…牛山」
  「お前、今いくら持っているんだ?」
  「少しばかりオレに…」
聞こえないフリで鼻歌の牛山。
牛山「えええ~」
腕組みの右近。
右近「う、う~む…」
牛山、突然前方を指差して。
牛山「えええ!?」
前方に、お年寄りの上品な殿方が歩いている。
右近「お前の知り合いか?」
牛山「よ、吉田クンのお父さん!」
右近「吉田クン…!?」
右近の声(牛山のヤツ…いつ、そんな友達が)
殿方(※以降、吉田父)、息を切らせながら大きな荷物を台車で運んでいる。
右近「お、おい…大変そうだな」
  「手伝ってやるか…お前の知り合いなら」
  「なおさら黙って見ているワケにはいかないぜ」
大きくうなずく牛山。
牛山「えええ!」

吉田父に駆け寄る牛山。
牛山「えええ~!」
吉田父、牛山に気付いて。
吉田父「おお…キミか」
牛山の後に右近。
右近「ど、どーも…」
吉田父に挨拶する右近。
右近「牛山…い、いや」
  「ウー・シイ・ヤマの兄…ウー・コン・ゴンドです」

住宅街ー
二階建ての家。「吉田」の表札…吉田家。
嬉しそうな牛山。
牛山「えええ!」
  「よ、吉田クン…!!」
縁側に座りそれを見ている右近。
右近「…!?」
クルクル回り興奮している柴犬。
全力で尻尾を振って、牛山の顔を《ペロペロ》なめる。
驚く右近。
右近の声(し、柴犬かよ…吉田クンて)
眼が垂れ下がり、幸せそうに《ニコニコ》と笑う牛山。
牛山「えええ…吉田クン!」
お茶を持って来る吉田父。
吉田父「どうぞ」
右近、頭を下げ。
右近「どうも…」
吉田父、右近の隣に座り、お茶をすする。
吉田父「ゴローは人見知りの激しいコなんだが」
   「なぜか…彼にはなついてね」
右近「ゴ、ゴローちゃん…?」
  「い、いい…お名前ですね」
  「鶴見ゴローみたいで…」
吉田父「…」
右近「…」
吉田父「…」
右近「あ、あの…」
  「さっき運んでいたのは?」
吉田父「ああ、粗大ゴミ…ドレッサーだよ」
右近「ド、ドレッサー?」
吉田父「鏡台だ」
右近「兄弟…!?」
吉田父「半年前に…女房を亡くしてね」
右近「…」
吉田父「最近になって、ようやく気持ちも落ち着き」
   「ぼちぼち遺品を整理しているところだ」
右近「よ、よろしければ…オレと牛山」
  「いや、弟でお手伝いします」
吉田父「う~ん…」
吉田クンと遊ぶ牛山を見て。
吉田父「彼には…いつも癒される」
右近「…」
吉田父「こんなご時世だが」
   「キミたちは、信用出来そうだ…」
   「悪事を働くほど…賢そうには見えない」
右近の声(う、う~む…)
吉田父「今度ワードロープを捨てる時に頼もうか…」
右近「ワ、ワールドプロレスリング?」
吉田父、立ち上がりワードロープ…洋服ダンスを開ける。
吉田父「見てくれ…」
吉田父、苦笑まじりに。
吉田父「女房のヤツ…私には量販店のぶら下がりだったが」
   「自分はブランド物ばかり揃えていてね」
洋服ダンスの中に、女性ものの服やバッグであふれている。
右近「ほお~」
吉田父「取っておいても仕方ない…」
   「これも、すべて処分するつもりだ」
右近「…」

ーーーーー

月…。
高台に建つアパートー
夜。右近の部屋。"大五郎"2.7ℓペットボトルを傍らに置き、TVを見て晩酌中の右近。
TVの画面には長髪の元プロレスラー。
右近「う~む…あの長州がバラエティに出ているとは」
  「令和恐るべし…だぜ」
右近のスマホをいじっている牛山。
右近「何してるんだ…牛山」
牛山「えええ…し、将棋」
右近「な、なにい…!?そんなにちっこい将棋盤では」
右近、親指と人差し指で小さな輪を作り。
右近「駒なんて…こんなもんだろ」
牛山、スマホの将棋アプリの画面を見せて。
牛山「えええ…ゲ、ゲーム」
右近「そ、それでゲームも出来るのか」
牛山「さ、左近さん…」
右近「ほお…左近がやってくれたのか」
右近の耳にTVの音声が入ってくる。
TVの声(…さんは、リサイクルショップでブランド物の服やバッグを処分)
右近「ん…!?」
TV画面。リサイクルショップの買取りシーン。客が札を受け取っている。
TVの声(その額、何と…15万!)
   (うれしいボーナスになりました…)
右近の声(ブランド物…)
    (服やバッグ…!?)
右近、腕組み。
右近「…最近どこかで見た気が」
目を閉じて考え込む。
右近「う~む…」
スマホをいじる牛山。
牛山「お、王手!」
閃く右近。
右近「ん…!」

※ラストコマ
回想カット。吉田家のタンス。
右近の声(よ、吉田クンの…お父さん!)

『令和地獄ブラザーズReturns』VOL.5 吉田クンのお父さんEND
次回につづく

いいなと思ったら応援しよう!