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【マンガ原作】『ヨコハマ・トレンチタウンロック』第2話「チャーシューワンタンメン」①

第2話「チャーシューワンタンメン」

あらすじ

みなと街ヨコハマ。ショッピングストリート・元町の川の向こう側…ハマのディープゾーン"トレンチタウン"の古びた雑居ビル『川向(かわむかい)探偵社』。川を渡りやって来る依頼者の奇妙な依頼の数々…。

今回は、トレンチタウンに事務所を構える反社組織の組員から、間もなく出所する兄貴分のために、思い出のラーメン屋を探して欲しい…との依頼。

“トレンチタウン”に、レゲエ・ビートが鳴り響く…!!

登場人物

所長…川向探偵社・所長

村木…川向探偵社・調査員

メグミ…川向探偵社・バイト受付嬢兼事務員

ママ…BAR《KURONEKO》のベテランママ。故・都家かつ江似

GM…トレンチタウンの住人。つねに横浜ベイスターズの帽子を被りGMを自称するほどのファン。トレンチタウン住人の情報に詳しい

舎弟…依頼者。反社組織の一員。格闘家でプロレスラーの村上和成選手のような風貌

兄貴…依頼者の兄貴分。現在服役中だが間もなく出所する。プロレスラーの藤原喜明選手のような風貌

ーーーーー

昼。穏やかな川の流れ。
横浜・中村川ー
川岸の古びた雑居ビル。看板⦅川向探偵社⦆
川向探偵社・事務所内ー
所長と村木、そしてメグミ…川向探偵社の面々。
所長「どうでえ、村木…トレンチタウンは?」
村木「…実際に、その時代を体験したワケではありませんが」
  「まるで…」
トレンチタウンにたむろする、路上生活者たちのカット。
字幕(村木の声)「終戦直後の闇市のような……」
机に向かうメグミ。《キョトン》
ナレーション(以下N)・メグミの声(ハ、ハライチ…!?岩井と澤部?)
所長「うむ…」
  「さすがにオレも、終戦直後など」
  「生まれるか生まれないかの頃だが」
  「言っていることは、わかる気がするぜ……」

※見開き画面
『迷走王 ボーダー』「VOL・96失われた時を求めて」より、スラムのような画に終戦直後の闇市の様子をオーバーラップさせて。
字幕(所長の声)⦅誰もが、生きることに必死なのさ…⦆

タイトル、字幕かぶせて。
タイトル『ヨコハマ・トレンチタウンロック』   
    『第2話「チャーシューワンタンメン」』

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トレンチタウン・メインストリートのカットに字幕。
字幕(所長の声)「今ではすっかり、この街も高齢化が進み」
       「介護士さんやら女性の独り歩きもめずらしくはねえが」
川向探偵社・事務所内ー
所長「…その昔は、夜になるとこのオレですらヤバいと思ったくらいだ」
  「その頃に比べりゃ、これでもずいぶん小ギレイになったもんだぜ」
村木「…」
所長「マトモなやつは、決して近付かねえが」
  「…この街でしか生きられねえやつらもいる」
  「労働者、前科モノ、スジ者…」
メグミ「…!?」
N・メグミの声(ス、スジ者!?)
メグミ、驚いた表情で。
メグミ「し、所長…お客様です」
入口に注目する、所長と村木。
所長「…!」
村木「…」
川向探偵社・入口ー
カタギには見えないファッションのスキンヘッドの男が、いつの間にかドアを開け立っている…殺気に満ちた表情。格闘家でプロレスラーの村上和成選手のような依頼者…役名・舎弟。

応接セットで向かい合う所長、村木と舎弟。
舎弟「おたくら…以前は浅草で商売してたんだってな」
所長「ちょいと地雷を踏みましてな…」
舎弟「ヤバくなって…ショバを代えて看板を掛け替えたってワケか?」
所長「まあ、そんなところですかな」
舎弟「アンタらも…やっていることはオレたちと大してかわらねえな」
頭を掻いて豪快に笑い飛ばす所長。
所長「おたがい、危ない橋を渡ることもありますな…ワハハ」
村木、《ニコリ》ともせずに。
村木「それで…ご依頼の件は?」
舎弟「ああ…それなんだが」
  「兄〈あに〉ぃがもうじき出所する」
村木「…兄ぃ?」
ミュージカル「アニー」を思い浮かべるメグミ。
メグミ「アニー!?」
所長「兄貴分だ…」

(舎弟の回想)
某刑務所・面会室ー
映画やドラマで見るような、ガラスの仕切り板越しに向かい合う舎弟と、プロレスラーの藤原喜明選手のような兄貴分…役名・兄貴。
舎弟「兄貴…出所したら、一番最初になにが食べたい?」
腕組みする兄貴、目を閉じて。
兄貴「う~ん…」
目を開けると。
兄貴「…チャーシューワンタンメン!」
舎弟「チャーシューワンタンメン…!?」
《コクリ》と頷く兄貴。
兄貴「ああ…」
舎弟「…」
兄貴「親父から盃をもらう前…」
  「ラーメン屋でバイトしててな」
舎弟「はあ…」
兄貴「ラーメンがブームになるかならないかの頃だが」
  「それでも地元では有名店」
  「…オレがバイトしていた店は」
  「夫婦二人でやっていた支店だったが」
舎弟「…」
兄貴「今でも憶えてるぜ…」
  「ラーメン一杯450円ワンタンメン600円…そして、オレの時給は500円だ」
舎弟「たったの…500円ですか」
兄貴「当時のアルバイトは、どれもそのぐらいの賃金だ」
  「それでも朝から夜まで働くと、2食のまかないが出るだけマシだ」
  「開店前にラーメン一杯…そして夕方には、店の好きなものを食べられたんだが」
舎弟「…」
兄貴「オレは…」
  「遠慮して…フルトッピングのチャーシューワンタンメン750円だけは、頼むことが出来なくて」
  「ワンタンメンが精一杯だった」
舎弟「だから…一番最初に、そのチャーシューワンタンメンを」
力強く頷く兄貴。
兄貴「そ、そうだ…」
《ゴクッ》と、生唾を飲み込み。
兄貴「ただのワンタンじゃねえ…」
  「…一粒一粒が、ギョーザみてえに」
ガラス板の前で、両手の親指と人差し指で輪を作り。
兄貴「こんなにデカいワンタンなんだぞ!」
舎弟「…」
(回想おわる)

川向探偵社・事務所内ー
目を閉じる舎弟。
舎弟「…ところが、兄ぃがバイトをしていた」
  「夫婦が経営していたという、その店は」
  「兄ぃが言っていた場所には…すでになかった」
舎弟の話にじっと耳を傾ける所長と村木。
所長「その店を探して欲しい、と…」
所長の眼を見て頷く舎弟。
舎弟「…」
舎弟をみつめる村木
村木「…」

『ヨコハマ・トレンチタウンロック』第2話「チャーシューワンタンメン」①END
次週につづく

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