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【マンガ原作】『令和地獄ブラザーズReturns』VOL.9 既視感〈デジャブ〉

あらすじ

権藤右近は、30年前に行方不明…だったが、右近とその友人・牛山は、とある南の島で生存していた(映画『ハード・コア』より)。ある日、弟の左近がテレビの中で発見し、外国人…ウー・コン・ゴンド、ウー・シイ・ヤマのウー兄弟として日本に帰国する。平成では"自爆"で人生を清算するしかなかった二人…令和の世の中に「令和地獄ブラザーズ」の居場所はあるのか!?

登場人物

権藤右近…主人公。30年前、行方不明になっていたが、南の島で生存。外国人…ウー・コン・ゴンドとして令和の日本に帰国し、弟・左近の会社のトイレ掃除で生計をたてている。

牛山…右近の親友。ウー・シイ・ヤマとして右近と共に帰国。右近と一緒にトイレ掃除をしている。

権藤左近…右近の弟。元エリート商社マン。30年前に発掘した金のインゴッドを売却し、その資金で「サイバーコア・ネットワーク」を設立。現在CEOを務めている。

吉田クンのお父さん…牛山の友だちの柴犬・吉田クンの飼い主。"金城会頭"のような風貌。

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『令和地獄ブラザーズReturns』VOL.9 既視感〈デジャブ〉

※タイトル画面
早朝。コンビニの前に立つ、ジャンパー姿の右近と手袋ニット帽、首にマフラーの牛山。


字幕⦅オレも…⦆
  ⦅ただの…いちファン⦆
  ⦅それだけは⦆
  ⦅絶対、忘れずにいよう…⦆

タイトル『令和地獄ブラザーズReturns』
    『VOL.9 既視感〈デジャブ〉』

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右近の部屋ー
スマホ片手に驚く右近。
右近の声(よ、吉田クンの…お父さん!)

横浜某所・吉田家ー
釣り竿を横に、ソファーでスマホを持つ吉田父。
吉田父「あいにく喪中で…ロクな挨拶も出来んが」
   「まあ今年もよろしく頼む」

右近の部屋ー
スマホを手に直立不動の右近。
右近「はっ…こちらこそ」
  「本年も、よろしくお願い致します」

横浜某所・吉田家ー
吉田父「ところで…キミたちは明日何か予定はあるのか?」

右近の部屋ー
右近「い、いえ…何も」
  「部屋で酒を呑みながら」
  「う、うしや…弟と駅伝を見てようかと」
  「ちょうど今…話していたところです」

横浜某所・吉田家ー
吉田父「ふむ…ならば良い」
   「明日、釣りの"同志"と共に」
   「海釣りに行くが」
   「キミたちも一緒にどうかね」

右近の部屋ー
右近「つ、釣り…ですか」

横浜某所・吉田家ー
吉田父「やったことは、あるかね」

右近の部屋ー
右近「は、はあ…」
  「中学の頃に少しだけ…」
  「その頃の友達に誘われて」
  「海で岸壁釣りや」
  「山中湖にワカサギ釣りに行った記憶が…」

横浜某所・吉田家ー
吉田父「ほお…それは豪気な」

右近の部屋ー
右近「…」

横浜某所・吉田家ー
吉田父「二人の道具は私が用意する」
   「"同志"の車で迎えに行くが…」
   「…どうだろう?」

右近の部屋ー
右近「は、はあ…」
のんきに酒を呑み、寿司をつまむ牛山。
牛山「えええ~!」
右近「…」
閃く右近。
右近「!」
右近の声(そ、そうか…)
    (部屋にいなければ)
    (駅伝を見ることもなく)
    (騒動になることはない)
右近「い、行きます…ぜひ、お供を!」

横浜某所・吉田家ー
吉田父「ふっふっふっ…」
   「さすが…私が見込んだ漢だ」

右近の部屋ー
右近「…」

横浜某所・吉田家ー
吉田父「では明日…5時に」

右近の部屋ー
驚く右近。
右近「…ご、5時ですか!?」

横浜某所・吉田家ー
吉田父「うむ…釣りは早朝に限る」
   「現地まで車で小一時間…5時でも遅いぐらいだ」

右近の部屋ー
右近「…」

横浜某所・吉田家ー
険しい目付きで釣り竿を手にする吉田父。
吉田父「不満…かね?」

右近の部屋ー
スマホ越しに殺気を感じ取る右近。
右近「だ、大丈夫です…」
  「早起きは…得意です!」

横浜某所・吉田家ー
吉田父「うむ…では明日、5時に"同志"と共に迎えに行く」
   「仕度して待っていてくれ…くれぐれも」
釣り竿を振り下ろす吉田父。
吉田父「イヤ~~~ッ!!」
   「…遅刻は厳禁!」

右近の部屋ー
思わず背筋を伸ばし、直立不動の右近。
右近「はっ…ははっ!」

横浜某所・吉田家ー
《ピッ》とスマホを切る吉田父、満足気。
吉田父「…」

右近の部屋ー
切れたスマホを見つめる右近。
右近「…」
右近の声(う、う~む…吉田サン)
    (最近、やたら殺気を帯びてるというか…)
    (さらにパワーアップして)
    (…ますます"会頭"のようだ)
右近、牛山を見て。
右近「おい牛山」
TVを見ている牛山
牛山「…」
TV画面は"ニューイヤー駅伝"。
右近「…」
右近の声(ま、まずい…)
    (う、牛山のヤツ)
    (いつのまにかチャンネルを変えやがった)
牛山、興奮して息が荒く、落ち着かない。
牛山「ハア…ハア」
右近の声(う、牛山の…"本能"が目覚め始めている) 
    (3日まで…何としてでも)
    (牛山から駅伝を遠ざけねば…)
牛山に声を掛ける右近。
右近「お、おい牛山…」
  「明日…吉田サンから、釣りに誘われたのだが」
  「吉田クンも参加する…」
  「もちろん…お前も行くよな」
振り返る牛山、目が垂れ下がり《ニコニコ》と。
牛山「えええ…よ、吉田クン!」
大きく息を吐く右近。
右近「ふ~っ…」
右近の声(な、何とか落ち着いたぜ…)

ーーー

夜明け前の薄明。
横浜某所・右近のアパート近くの車道ー
コンビニの前に、ジャンパー姿の右近。手袋ニット帽、首にマフラーの牛山が立つ。


字幕⦅翌日ー⦆
上着のポケットに手を突っ込む右近…吐く息が白く、小刻みに震えている。
右近「う、うう…」
  「クソ寒いが…どちらかと言えば、オレは」
  「寒いのは何とか耐えられる…」
牛山「えええ」
右近「着込んだり、使い捨てのカイロもあったりするからな」
  「だが、夏の暑さは…全裸になっても変わらねえ」
  「もっとも、令和の今では…」
  「街中で全裸は、完全にアウトだがな…わっはは」
牛山「…(昔もアウトだよ!)」
右近「う~む…そういえば」
  「どこまで行くのか、聞かなかったな…」
  「東か西か…三浦方面ってのもあるか」
車道の向こうから、車のヘッドライトが見える。
やがて近付き、二人の前にワゴン車が停車する。


助手席で吉田父が軽く手を挙げ。
頭を下げる右近。
右近「…」
手を振る牛山。
牛山「えええ」
運転席のドアが開き、降りてくる男の足元。
右近と牛山の前に立つ、吉田父の"同志"。
あ然の右近と牛山。
二人「!?」
『ハード・コア 平成地獄ブラザーズ』より…"水沼"に瓜二つの男。


助手席から吉田父。
吉田父「私の"同志"…水島クンだ」
《ペコリ》と頭を下げる水島。
水島「どーも、水島…です」
《ギョッ》とする右近。
右近「…!」
右近の声(み、みずしま…みずぬまと一字違いか!?)
    (風貌まで、似ていやがる)
吉田父「乗りたまえ…すぐに出発する」
スライド式ドアを開ける右近。
《ワンワン》と尻尾を振る柴犬・吉田クン。
嬉しそうな牛山。
牛山「えええ…よ、吉田クン!」
後部座席に乗り込む右近と牛山。
運転席に乗り込み、シートベルトを装着する水島。
水島「では、会長…出発いたします」
奥から牛山、吉田クン、右近が座る後部座席。
右近「か、会長…?」
水島「吉田サンは我々"結社"の…会長でしてな」
助手席の吉田父、大笑いして。
吉田父「わはは…キミぃ~」
   「"結社"とは大げさな…ただの釣り同好会だよ」
   「…もっとも私と水島クンしかおらんがね」
右近「…」
吉田父「いずれは…キミたち二人も」
   「志を同じくする"同志"として」
   「迎え入れたいと思っている…」
発進するワゴン車。
助手席の吉田父。
運転席の水島。
後部座席の右近、牛山、吉田クン…。
右近「…」
右近の声(う~む…この光景)
    (昔、何度か見た覚えが…)
回想カット。"埋蔵金"発掘に向かうシーン(『ハード・コア 平成地獄ブラザーズ』VOL.4越境者たち」より)。



そして伊豆へ旅行に出掛けた時の光景(『ハード・コア 平成地獄ブラザーズ』VOL.22一泊二日」より)。

※ラストコマ
夜明け前の国道をひた走るワゴン車。
字幕(右近の声)⦅まるで、既視感〈デジャブ〉のように…⦆

『令和地獄ブラザーズReturns』VOL.9 既視感〈デジャブ〉END
VOL.10につづく

X(https://twitter.com/ukon_gondo)で毎日更新中

※画像はすべて『ハード・コア 平成地獄ブラザーズ』(作:狩撫麻礼/画:いましろたかし)より

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