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マンガ原作『ヨコハマ・トレンチタウンロック』第3話「幻のメダリスト」⑦
あらすじ
みなと街ヨコハマ。ショッピングストリート・元町の川の向こう側…ハマのディープゾーン"トレンチタウン"の古びた雑居ビル『川向(かわむかい)探偵社』。川を渡りやって来る依頼者の奇妙な依頼の数々…。“ヨコハマ・トレンチタウン”に、レゲエ・ビートが鳴り響く…!!
事務所に現れた旧知のTVマンから、"幻のメダリスト"を探してほしい…との依頼。湯けむりただよう秘境の温泉宿でひっそりと暮らしていた、"幻のメダリスト"が語る…誤審の真相とは。
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登場人物
所長…川向探偵社・所長
村木…川向探偵社・調査員
メグミ…川向探偵社・事務員
依頼者…テレビ関東(通称・テレ関)の売れっ子プロデューサー・宅間
源田光雄…宅間に依頼された尋ね人。元レスリング選手
GM…第1話に登場したトレンチタウンの住人。横浜ベイスターズの熱狂的ファンでGMを自称する
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秘境の温泉地ー
夜。山と川、そして月。
椿屋旅館ー
客室内。郷土料理が並べられたテーブルを挟み、浴衣の所長と村木が向かい合う。
その横に作務衣の椿屋主人、旧姓源田…藤田光雄が座る。
藤田を見る所長と村木。
藤田が口を開く。
藤田「あの…"誤審"といわれる真相は…」
どこからか歓声が聞こえ…回想。
(回想)
オリンピック・レスリング会場ー
大歓声に包まれ、熱気が溢れてる。
マット上で対峙する、源田と外国人選手。
腕の取り合いから試合が始まる。
字幕・藤田⦅対戦相手は、開催国の選手…⦆
⦅当然、ホームタウンディシジョン…彼にとって有利な判定になることは⦆
⦅ある程度、予測してました…⦆
まるで、"野獣のように"…殺気漂う源田。
字幕・藤田⦅だが、そんなことは関係ない…誰の目にも明らかなフォールを取ればいい!⦆
⦅私は…そんな気概で闘いました⦆
⦅残り時間、わずかなその時…⦆
源田の見事な首投げ。
字幕・藤田⦅私の得意技…"首投げ"が見事に決まり⦆
そして袈裟固め。
字幕・藤田⦅そのまま袈裟固めへ…⦆
⦅フォール勝ち…一本!⦆
レフリーが手を挙げる。
字幕・藤田⦅…のはずでしたが⦆
源田の袈裟固め。
字幕・藤田⦅ところが、あの時⦆
源田の右手が、対戦相手の下に入り込んでいる。
字幕・藤田⦅ロックがはずれ、私の右手は相手の肩の下に…⦆
⦅つまり…肩はマットについてはおらず、フォールではなかったのです⦆
(回想終わる)
客室。話を聞いている、所長と村木。
二人「…」
正座の藤田。
藤田「私は…そのことをレフリーに告げました」
あ然とする所長と村木。
所長「はあ…?」
村木「…!?」
「自分から言ったのですか…クソ真面目に?」
真っ直ぐな眼で。
藤田「はい…」
所長「…バカ正直に?」
藤田「はい!」
所長「アホじゃねえのか…」
苦笑する藤田。
藤田「ふふふ…」
所長「…い、いや失礼」
藤田「い、いえ…誰もが、同じ反応です」
「その後私は、逆転のフォールを許し敗れました…」
二人「…」
藤田「当時はビデオ判定などなく、審判の判定がすべて…」
「私のフォール勝ちだったのでは…と、ちょっとした騒動になりましたが」
「真相は、その判定こそが、"誤審"だったというわけです」
所長「だから、抗議をしなかった…と」
藤田「はい…私自身が、"本当のこと"を知っていたからです」
「敗れた私は、なぜか…清々しい気持ちに」
所長「スポーツマンシップ…というやつですな」
藤田「いえ…そんな綺麗なモノではないのです」
所長と村木。
二人「…?」
うつむいて目を閉じる藤田。
藤田「私の…」
顔を上げると、険しい表情。
藤田「私の父は、犯罪者です」
「人を…殺めました」
あ然とする所長と村木。
所長「…!?」
村木「…」
『ヨコハマ・トレンチタウンロック』第3話「幻のメダリスト」つづく
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