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【マンガ原作】『ネオ・リバースエッジ』「第七話・Remember you」

※タイトル画面

風の中に立つ蜂須賀。風…。《ビュ~ゥウウ》

タイトル『ネオ・リバースエッジ』

『第七話・Remember you』

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キラキラした海。朝…。
南房総・レストラン「月光」−
テラス席。食べ終えた食器を前に、手を合わせ一礼する村木。
村木「…ごちそうさまでした」
村木、満足気に。
村木「ああ…美味しかった」
  「本当に…最高の朝食になりました」
久保田「そりゃそうだよ…木村農園の米と採れたて野菜」
木村「そして、新鮮な魚…久保田シェフの料理とくれば」
  「美味しいに決まってます!」
村木、コーヒーをすすり。
村木「…ところで、蜂須賀氏は久保田さんたち以外の交友はなかったのでしょうか?」
久保田「さあ、なにせ超個性的というか…」
   「自他ともに認める性格破綻者だったから」
   「オレたち以外は…誰からも相手にされなかったんじゃないかな」
木村「私もそう思います!」
  「蜂須賀さんから、親兄弟の話すら聞いたことがありませんでしたから…」
砂浜を見る木村…何か閃く。
木村「…!?」
木村、立ち上がり。
木村「そ、そういえば…私の東大合格発表の日」
回想カット。『ボーダー』Vol・51「別れのジンタ」より、砂浜の光景。
木村「三人でクラブで豪遊して…どこかの砂浜に行きませんでしたか」
  「…あの時、お金を出したのは?」
久保田「ん?」
久保田も立ち上がる。
久保田「あ〜!?」
回想カット。『ボーダー』Vol・24「性格破綻」より、裸踊りの神野がオーバーラップして。
字幕「じ、神野さんだ!」

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隅田川。
浅草・大川端探偵社ー
事務所内。
所長、読んでいた新聞を握りしめ。
所長「な、なにい神野…!?」
  「神野アキラ…って、あの神野コンツェルンの神野アキラか?」
村木「はあ…そのようです」
メグミの机の上に、キャベツなどの野菜や生魚が並んでいる。
メグミの声(行商かよ…)
所長の前に村木が立つ。
所長「引退して隠居したとはいえ」
  「未だに政財界に影響力を持つフィクサーみてえな人間だぞ」
  「どうしてそんな大物と知り合いなんだ…ハチスカってえヤツは?」
村木「神野は若い頃、ジャズ喫茶を経営していて」
  「蜂須賀氏とはその頃からの知り合いらしいです」
  「何でも…一時期はホームレスをやっていたそうで」
  「蜂須賀氏と依頼者の久保田氏が一緒に居た時、偶然再会し」
  「その時…実家に戻り、神野コンツェルンを継ぐ決意を固めたとのことでした」
PCのキーボードを叩くメグミ。
メグミ「ウィキでは若い頃の数年間、海外留学していることになってる…」
所長「ふん…!」
  「過去を隠すなんざ」
  「いかにも昭和の著名人らしい話じゃねえか」
固定電話の受話器を握る所長。
所長「いよいよ“伝家の宝刀”を抜くしかねえか…」
所長の後姿、窓の外は隅田川…。
村木の声(所長のコネクション…)
村木の横顔。
村木の声(芸能界、政財界からウラ社会まで…)
    (あらゆる人物に繋がる闇のネットワーク……)
電話中の所長。
カモメが飛び交う隅田川。水上バスが行く…。
所長、受話器を置き村木に向かい。
所長「…神野アキラとアポが取れた」
村木「…!?」
所長「秘書経由でハチスカ氏について聞きたい…と言ったら一発OKだったぜ」
  「ただし…依頼者二人が同行することが条件だ」
  「明日にでも、オレと彼らで会いに行く」
村木「わ、私は…?」
所長「村木は明日…もう一人、会いに行ってもらいてえ人間がいる」
村木「?」

ーーーーー

翌日、昼…。
新宿・歌舞伎町ー
字幕⦅翌日⦆
  ⦅新宿・歌舞伎町ー⦆
一番街あたりを歩く村木。
字幕(所長の声)(当時…興行関係を仕切っていた××組系の元組長)
       (現在は引退してカタギだ…)
喫茶店に入って行く村木。
字幕(所長の声)(マルタイの消息とは直接関係ないが)
       (Liveの仕掛人…後関ってヤツのことが知りてえ)
喫茶店店内。テーブル席に座る…『大川端探偵社』「第20話…決闘代打ち」に登場した、プロレスラー・上田馬之助のような男(仮名・上田)。


字幕(所長の声)(わかるか…)
       (情報ネットワークの基本はバーターだ)
       (そのテの人間の情報を知っておいて損はない)
村木、一礼して。
村木「ご足労いただきありがとうございました」
上田「固え挨拶は抜きだ…まあ座んなよ」
村木、着席。
上田「所長は元気か?」
村木「はい…おかげさまで」
上田「後関のことを知りてえんだってなあ…」
  「オレも引退したとはいえ、稼業の中にはまだ仲間や兄弟もいる」
  「おたくらだから仕方がねえが、ホントはあまり触れたくねえ話だ…」
村木「…と、言うと?」
上田「直接知っているワケじゃねえが」
  「何人もの人間が、ヤツに廃人同様にされた…ってウワサだ」
村木「今でも…生きているのでしょうか?」
上田「さあな…2000年初期、大晦日の格闘技イベントに絡み」
  「大ゴケしてどこやらの海岸で遺体で発見された…なんてえ話も聞くし」
村木「…」
上田「ワケのわからねえ食いもんがいきなり流行って」
  「そこら中がそのテの店ばかりになるってことが、今でもあるよな」
村木「はい…」
上田「そんな流行や…政治でも何でも、なにか世間の風向きが変わるたびに」
  「仕掛人じゃねえかって、今でも必ず名前が挙がる…」
村木「…」

ーーーーー

東京・六本木ー
字幕⦅同日⦆
  ⦅東京・六本木ー⦆
六本木交差点…。
地下鉄出入口あたりに立つ…所長と久保田。
木村がぎこちない動きでやって来る。
久保田「よお…木村!」
   「行ったり来たり忙しいな」
   「農園は大丈夫なのか?」
どこかこわばっている木村。
木村「ナ…ナミ子さんが、い…いるし」
  「ア…アケミ夫婦も、て…手伝ってくれてます」
久保田「おい、体は大丈夫なのか…なんか調子悪そうだぜ」
木村「わ、私のような地方在住者は…」
  「六本木や渋谷は…その地名だけで」
  「身体がこわばってしまうのです」
所長、豪快に笑い。
所長「ワハハ!」
  「東京・下町在住の私も、同じですぞ…木村さん」
  「やはりなにやら、落ち着きませんなあ」
久保田「うん、わかる気がする…鬼門the六本木ってな」
所長「さあて…では参りましょうか」
交差点を渡る三人の後姿…。
やがて3人の前に高層ビル見えてくる。
高層ビルの前に立つ3人。
字幕『六本木ジンノタワー』
ビルを見上げる久保田と木村。
久保田「木村…こ、ここは!?」
木村「ゆ、夢の中で…蜂須賀さんが立っていたビルです!」
それはまさに、『ネオ・ボーダー』最終話にて、蜂須賀が窓際に佇んでいたビル…。

ーーーーー

新宿・歌舞伎町ー
喫茶店内の村木と上田。
上田「…極めつけは、×××の××××」
  「何やらキナくせえのは知ってるよなあ」
  「××が××××××……」
  「…そのための××××」
  「ヤツが裏で動いてるってウワサだ……」
村木「!?」
上田「わかるか…?」
  「国が絡んだ話なんだ」
村木「…」
上田「死亡説も…あえて流したのかもしれねえ」
  「おたくらの身を案じて忠告するが…」
  「ヤツのことは…これ以上首を突っ込まない方がいい」
上田、現役時代の殺気を漂わせ。
上田「…おたくの所長も、曰く付きの人間だと聞いている」
  「その過去が暴かれるどころか、命だって……」
村木「…」

ーーーーー

東京・六本木ー
六本木ジンノタワー、応接室。
豪華なソファーに座る、久保田&木村、所長。
ドアがノックされる。《トントン!》
立ち上がる3人。(!)
《ガチャリ》とドアが開くと、秘書に押された車椅子の…神野アキラ。
神野「久保田クンに木村クン…だったな」
久保田「お、憶えてるんですか!?」
神野「もちろんだとも…久保田クン、キミには感謝している」
  「あの時…キミたちと出会わず、あのままの生活であれば」
  「いつ野垂れ死んでも、おかしくはなかった……」
久保田「…」
神野「…私自身は」
  「あの頃のことを隠すつもりもないし、決して忘れない…」
久保田、コクリと頷いて。
久保田「…!」
神野、木村に。
神野「木村クン…東大に合格したと聞いたが」
木村「…ハ、ハイ!今は地元に帰り、農業をやってます」
神野「あのアパートでの…蜂須賀やキミたちとの交流で」
  「どれだけ心が洗われたことか…」
  「あれから30有余年…まさに光陰矢の如し、だ……」
久保田「…」
神野「そうだ…お〜い!」
ドアが開き、介護士に押された車椅子に乗った老婆が登場。
老婆、深々と頭を下げ。
老婆「お久しぶりでございます…」
(ポカ〜ン)とする久保田と木村。(?)
(ニコリ)と笑う老婆、前歯がキラリ…。
老婆「とめ子でございます」
『ボーダー』Vol・26「強きを挫く」より、三浦とめ子…蜂須賀とのキスシーンがオーバーラップ。


久保田&木村「!」
久保田、指を差し。
久保田「あ〜っ!コンビニ店員の…!?」
神野「前の家内は、ホスト狂いを理由に」
  「いくばくかの金を渡して追い出した…」
久保田&木村「…」
神野「この方と…最後まで添い遂げようと」
(ポッ…)と頬を赤らめるとめ子。
とめ子「…」
微笑の久保田&木村、所長。
三人「…」

ーーーーー

新宿・歌舞伎町ー
一番街を歩く村木。
村木の目が険しくなる。
村木「…」
目の動きだけで周囲を見回す村木。
村木の声(探偵にとって必須の資質)
    (空気を敏感に察知する“感受性”…)
道端に座る少年少女、道行くサラリーマン、客引き…。
村木の声(その“感受性”ゆえ
     オレは…
     探偵に“なって”しまった……)
村木の鋭い眼。
村木の声(次の角を右…)
角を曲がり、細い路地に入る村木。
村木の前に立ちはだかる、全身刺青の総合格闘家のような男。
村木「…!」
引き返そうとする村木の背後にも、半グレ風の二人の男。
囲まれる村木。
村木「!?」
村木に殴りかかる全身刺青男。
その時!
刺青男の背後から、腕をつかむ手。
刺青男「…?」
そのまま一本背負いから倒れた刺青男の腹を踏み付ける。
嗚咽をもらす刺青男。
刺青男「うっ…」
村木を引き寄せ、半グレ男二人の前に立つ…スーツ姿の目付きの鋭いハードボイルドな中年男。
中年男「逃げろ…」
村木「…?」
中年男に殴りかかる半グレ男。
側頭部に横蹴り一閃でKO。
もう一人の半グレを見る鋭い眼…殺気。

ーーーーー

東京・六本木ー
六本木ジンノタワー、応接室。
秘書やとめ子は退席し、神野と久保田&木村、所長が向かい合う。
神野「蜂須賀のことを知りたい…と聞いたが」
久保田「蜂須賀さんの消息をご存知でしょうか?」
静かに横に首を振る神野。
神野「…」
久保田&木村「…?」
回想カット。風の中に立つ蜂須賀。《ビュ~ゥウウ》
神野「…あれは、複雑な男だよ」
  「昔から…」
神野、目を閉じて。
神野「はじめて蜂須賀と出会ったのは…」

※ラストコマ
息を呑み神野を見つめる久保田&木村。
久保田&木村「…」

「第七話・Remember you」END 

「最終話・行く先は…未知!」につづく

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