【マンガ原作】『ネオ・リバースエッジ』「第二話・月の光」
※タイトル画面
南房総・レストラン「月光」ー
オープンテラス。月の光に照らされ、グラスを手にする久保田。
タイトル
『ネオ・リバースエッジ』
『第二話・月の光』
ーーーーー
東急東横線。高架線を列車が走る。
駅。列車が走り過ぎ、ホームに立つ村木。
都立大学駅…。
東京・目黒区、都立大学駅あたりー
東急東横線、高架下を歩く村木。
村木の声(依頼者の二人と、調査対象者…蜂須賀氏は)
柿の木坂通り。
村木の声(かつて、このあたりに住んでいたという…)
※回想
東京・浅草あたり、隅田川…。
大川端探偵社ー
事務所。
所長「まずは、彼らの話のウラを取ってみるか…」
「そこから手掛かりを見つけるしかねえだろ」
「オレは例によって…情報網から興行関係を当たる」
「村木は、彼らがいたアパート周辺を探ってみてくれ…」
メグミ、PCを操作しながら。
メグミ「でも、もうないよ…そんなアパート」
村木「…!?」
メグミ「ググったもんね~」
所長「い、いや…アパートがなくとも、そのあたりの昔ながらの店…たとえば酒屋だの定食屋」
「そういう所から聞き込むのが、調査の鉄則ってもんだぜ…なあ村木」
村木「は、はあ…」
所長「メグミちゃん…ついでに、そのなんちゃら蜂須賀って歌い手さんをくぐってみてくれ」
メグミ「ググる…です!」
※回想終わる
東京・目黒区、八雲あたりー
マンションの前に立つ村木。
村木の声(そして、やはり…)
(そのアパートはすでになく)
『ボーダー』より、「八雲食堂」…そして現在の様子。
村木の声(商店街も様変わりしていた…)
同じく、酒屋「平口酒店」…そして現在。
村木の声(かろうじて残っている商店は、代替わりして)
酒店店主と話す村木。
村木の声(そこに、個人情報保護…の壁も立ちはだかる)
村木、名刺を差し出し全力の愛想笑い。
村木の声(さらには…昨今の特殊詐欺、強盗)
疑いの眼差しの店主、スマホを手にして通報の素振り。
村木の声(つまり…)
慌てて酒店を出る村木。
村木の声(もはや…公務員、あるいはマスコミでもない限り)
(聞き込みなど…不可能だ)
大川端探偵社ー
事務所。
所長の前に立つ村木。
村木「…というワケで、これといった情報は何も」
所長「う〜む…村木の風体じゃ、怪しまれて当然かもな」
所長の顔を見るメグミ。
メグミの声(所長もすげーアヤしい…ってば!)
所長「こっちも、思いのほか難航している…」
メグミ「アンチェイン蜂須賀で検索してみたけど」
「なーんにも引っ掛かんない…ブログやSNSなんかも」
「ウェイラーズも…当時来日した記録はないのよね」
所長「…オレも」
「表ルートで直接ドームに問い合わせたが」
「その日は、何のイベントも開催されてない…だとよ」
村木「そ、それは…どうゆーことなんです?」
所長、腕組み。
所長「さあ…」
「だが、あのポスターがある…ってことは」
「彼らの記憶は確かだ」
村木「…」
所長「…だとしたら」
「その記録は、意図的に消された…」
村木「…!?」
窓の外に、東京スカイツリーと月。
海。同じ月を久保田が見ている。
千葉県・南房総、和田浦あたりー
レストラン「月光」、オープンテラス。テーブルに酒瓶、グラス、アイスペール。
月の光に照らされ、ロックで酒を飲む久保田。
字幕《あれから…》
※回想
1991年春…月光荘。
字幕《センパイが帰らぬまま》
号泣する学生服の木村、泣きながらバンザイする久保田。
字幕《大学卒業を機に、木村が月光荘を去り》
名残惜しそうに、月光荘をあとにする久保田。
字幕《オレもまた…引き払い》
ローカル線列車内、窓の外を見る久保田。
字幕《迷走のすえ》
海…。
字幕《辿り着いたのは、なぜか…》
海岸…『ボーダー』VOL68より、そこはかつて鯨のモニュメントがあった場所。
砂浜に立つ久保田。
字幕《…この地だった》
※回想終わる
南房総・レストラン「月光」ー
オープンテラスの久保田。
テーブルの上のスマホに着信。
スマホを手にすると…声。
(クボタさん…か?)
(ワタシ、誰だかわかる!?)
久保田「…」
(ウフフ!)
(クボタさんは遊び人だから)
(女の子の声なんて、いちいち憶えてねえンだな)
女性の口元。「ア・ケ・ミ…」
久保田「?」
(ほ~ら、健吾のイトコの…!)
久保田の脳裏に、一人の女性が浮かぶ。
久保田「…あ、明美さん!!」
岩手県、木村宅ー
スマホを手にする明美(旧姓・土田)…。
明美「蜂須賀さん探してるんだってなあ!?」
「そのことで思い出したことがあって…」
明美の後ろで、優しく微笑む木村とナミ子。
明美「健吾に話したら、クボタさんに直接話せって」
久保田「う、うん…!」
明美「ワタシと蜂須賀さんの結婚話の時…」
「ウチの親が、探偵だか興信所に依頼したべ?」
久保田「そんなこと…あったかも!?」
明美「親はどっちも逝っちまったけど」
「遺品を整理した時…」
「一度だけ…報告書を見たことがある」
立ち上がる久保田。
久保田「な、なにが書かれてた…?」
明美「蜂須賀さんの出身地、学校…」
「そんなこと書いてあったけど」
久保田「うん!」
明美「東京××区の…下町出身」
「…それぐらいしか憶えてねえ」
ガックリ肩を落とす久保田。
久保田「…」
明美「今でも…その興信所があれば」
「ちっとぐらいは手掛りになるンでねえか?」
久保田「そ、その興信所の名称は?」
明美「…知らね!」
「報告書も捨てちまったし…」
派手にズッコケる久保田。
久保田「!?」
椅子に座り直し。
久保田「と、ところで…明美さん、今どうしてるの?」
明美「健吾に口止めしてたから、知らなくて当然だけど…」
「…もう、孫もいるおばあちゃんだ!」
久保田「…!!」
明美「あの後、東京でOLやって…旦那と知り合って」
「過去のこと…」
「整形とか不倫も、全部話して…」
明美の目から涙がこぼれ落ちる。
明美「…それも、すべて受け入れてくれて」
久保田「…」
明美「でな、旦那が定年になって」
「田舎暮らししたいっていうから」
「健吾に相談して、岩手に…」
久保田「移住…したんだ?」
明美「…なに言ってんだ、クボタさん」
「ただ…生まれた場所に帰ってきただけだ!」
(ウン、ウン)と頷く久保田。
久保田「…」
明美「顔も苗字も変わったから、土田ンところの明美だなんて」
明るく笑う明美。
明美「誰も気が付かねえんだ…あはは!」
顔を見合わせ、微笑する木村とナミ子。
二人「フフ…」
明美「整形した時、蜂須賀さんに怒られて…」
「少し後悔したけど」
「今は、あの時の自分も」
「その前の自分も」
「全部受け入れられる……」
久保田「………」
明美「だって…」
「その過去がなければ…今もないから!」
明美、号泣。
明美「今ね、今とっても幸せなんだよ…クボタさん!!」
思わず顔を伏せる久保田。
見上げた星空が滲んで見える。
※ラストコマ
月の光…。テーブルに置いたグラスの氷が溶けて。
(カラン、カラ~ン…)
『ネオ・リバースエッジ』
「第二話・月の光」END
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