見出し画像

【マンガ原作】『ネオ・リバースエッジ』「第一話・Live!」

東京上空。
浅草あたり。
隅田川。

※見開き画面
吾妻橋付近を行く水上バス。
(ここまで『大川端探偵社』第一話導入部と同じ演出)

タイトル
『ネオ・リバースエッジ』

『第一話・Live!』

ー----

隅田川。水上バス船上、二人の中年男…久保田洋輔&木村健吾!
岸辺に古びた雑居ビル。
《大川端探偵社》の看板。

浅草・大川端探偵社ー
事務所内。
水上バスが行く隅田川。
その光景を臨む窓を背に、老眼鏡をかけ新聞を読む…所長。
机に向かいメイクを直す…事務員・メグミ。
パーテーションで仕切られただけの応接室。応接セットのソファーで寝ている…調査員・村木。
(ガバッ)と、起き上がる村木。
村木「…来る!?」
事務所入り口。
ガラス越しに二つの人影。

応接室。
古びたポスターを広げる所長。
覗き込む村木。
所長「ほぉ~ぅ、この男の消息を知りたい…と?」
『ボーダー』より、蜂須賀の東京ドームLiveのポスター。
字幕⦅アンチェイン蜂須賀…⦆
所長と村木の前に、白髪の長髪ポニーテール…久保田。そして白髪交じりの角刈り、黒縁メガネにスーツの…木村。
久保田「1988年10月、たった一度だけ東京ドームでLiveを行った幻のアーティスト…」
所長「お二人は、この方のファンですかな?熱狂的な…」
木村「い、いえ…久保田さんと私は」
  「かつて蜂須賀さんと同じアパートに住んでいました」
  「…そのLiveからしばらくたったある日、突然姿を消したのです……」
久保田「それまでにもセンパイ…蜂須賀さんは、アパートに帰らないことが何度かありましたが…」
   「…何事もなかったような顔で戻ってきました」
   「だが…あの日以来、二度と帰って来ることはなかった」
木村「………」
所長「何かきっかけのようなことは…?」
木村「これといったことは何も…」
久保田「…でも、予感はありました」
久保田の横顔に、ジュリアナ東京…東京証券取引所…ボジョレー・ヌヴォー…バブル時代のカットをオーバーラップして。
久保田「当時は、いわゆるバブルの真っただ中…」
   「蜂須賀さんのようなヒトにとって、生きづらい世の中だったのではないか…と」
村木「なぜ…?」
久保田・木村「…!?」
村木「なぜ、今になって消息を知りたくなったのです?」
久保田「夢…」
所長「…夢?」
久保田「夢を見たんです…」
木村「…私も久保田さんも、同じ頃にまったく同じ夢を!」
村木「どうして同じ夢だと…!?」
一枚のイラストを取り出す久保田…それは『ネオ・ボーダー』最終話より、ビルの窓際に佇む蜂須賀らしき男のイラスト…。
久保田「それは…まるで、既視感〈デジャブ〉のように……」
所長・村木「………」
回想カット。『ネオ・ボーダー』より…平安時代の久保田・木村…そして蜂須賀。
字幕・久保田の声(夢のようでもあり、現実のような…)         
        (不思議な夢、感覚…だった)
字幕《仏は常にいませども 現〈うつつ〉ならぬぞあわれなる…》

※回想
レストラン「月光」(久保田が経営する店)・店内ー
蜂須賀らしき男のイラストが飾られている。
その前で立ち尽くす木村、口をポカンと開けアワアワと。
木村「く、久保田さん…これは!?」
久保田「オレ…」 
   「センパイの夢、見たんだよな」 
   「というか…実際にセンパイと会っていたような気さえする」  
   「…でも、今じゃなく」   
   「たとえば平安時代の昔とか…」 
木村「………!?」
久保田「…その夢は」
ビルの窓際に佇む蜂須賀らしき男…。
久保田「まるで、現在の世の中を見据えているような」
   「センパイの姿で終わった…」
木村「く、久保田さん!」
  「実は私も…まったく同じ夢を!!」
壁に飾られたイラスト。
字幕・久保田の声(センパイは、生きている…!?)
字幕《…人の音せぬ暁に ほのかに夢に見え給〈たま〉ふ》
※回想終わる

大川端探偵社・応接室
久保田「このイラストは、その夢をイメージして描いたものです」
木村「私も、このイラストと同じ夢…」
  「…私も久保田さんも、夢の中で蜂須賀さんと再会していたのです」
久保田「その時、確信しました…」
   「蜂須賀さんは、生きている…!」
   「…そして、探してみようと」
村木「なるほど…」
  「その、熱意のようなものはわかります…しかし」
久保田・木村「…!?」
村木「本名、生年月日不明…」
  「手掛りは、かつて東京ドームでLiveを行った蜂須賀という男」
  「そして、昔住んでいたアパートの住所…のみ」
  「…率直に言って、雲をつかむような話…としか言いようがありません」
久保田「木村…やっぱり無理なんだよ、こんな話」
木村「…ですよね」
立ち上がろうとする久保田。
所長「いや…幸いにというべきか」
  「当社はなぜか、そのような不可解というか…奇特な依頼ばかりでしてなあ」
⦅ニヤリ⦆と笑って。
所長「このような依頼は、むしろ得意とするところ…ですかな」
久保田・木村「…!」
所長「人は、生きている限り…必ず何らかの痕跡を残します」
  「細い糸を手繰るように、探し出すことは決して不可能ではないでしょう…」
久保田と木村、⦅コクリ⦆と頷く。
所長「だが…消息を知ることが、必ずしも幸せな結末になるとは限りません」
  「…すでにこの世のヒトではないかも知れない」 
久保田・木村「…」 
所長「生存が確認出来たとしても、再会したら探さなければ良かった…と、思うかも知れない」
  「あるいは何らかの事情で、会えない…ということも」
  「たとえば…罪を犯して服役中であるとか」
久保田の想像のカット。縞模様の囚人服囚人帽、足には鎖でつながれた鉄球…まるでドリフのコントのような姿で鉄格子の中にいる蜂須賀。「トホホ…」
久保田「う~ん…センパイのキャラからすると、その説が一番有力かも」
木村「…く、久保田さん!?」
所長「よーするに…どのような結末であれ」
  「あなた方に、それらを受け入れる覚悟はあるか…ということです」
久保田「………」
木村「私が、蜂須賀さんに出会ったのは20才〈ハタチ〉の頃です…」
  「…当時の私は、東大合格だけを人生最大の目標とした、うだつの上がらない浪人生でした」
木村の回想のカット。『ボーダー』より…東大赤門前で、蜂須賀と久保田に胴上げされる木村。妻・ナミ子(旧姓・鳥居)との学生時代の2ショットなど…。
字幕・木村の声(その後…東大に入り卒業して、社会の一員となり結婚して)
         (蜂須賀さんのような生き方は出来ませんでしたが…)
久保田「…」
木村「もし…もし蜂須賀さんと出会わなければ」
  「…わ、私の人生は」
久保田「お、おい木村…」
   「センパイなら…お前はニューミュージック野郎か」
   「…って、ツッコむようなセリフだぜ」
⦅シュン…⦆とする木村。
木村「…」
久保田「でも、言わんとすることはわかる…かな」
所長・村木「…?」

東京ドームLiveの蜂須賀に字幕かぶせて。
《まるで、毎日がLiveのような日々…
 オレも木村も未だに、あの熱から醒めていない

 …いや、オレや木村だけじゃない
 たとえば、あのLiveに熱狂した観客

 あのヒトの情熱〈パッション〉に触れた誰もが
 今でも、熱にうなされているような気がする…》

立ち上がる木村。
木村「そ、そうです…久保田さん」
  「蜂須賀さんとの出会いによって、人生を変えられたかも知れない…」
  「でも、あの“勇気と情熱”に触れたからこそ…未曾有の大災害、ここ数年のパンデミック」
  「何があっても…決してギブアップすることなく、起ち上がってきたのです!」
  「蜂須賀さんも関わったヒトも…誰一人、不幸になってはいけません」
木村、しだいに熱くなり。
木村「だから…蜂須賀さん自身が幸せに暮らしていることを確認して」
  「それが、決して間違いではないことを証明したいのです!」
最後には『機動戦士ガンダム』のギレンザビのようになる木村。
木村「起てよ、中高年!!」


⦅ポカ~ン⦆とする久保田、所長と村木…冷たい視線。
三人「…」
冷たい視線に気付き、うつむいて静かに座る木村。
木村「…」
久保田「木村…センパイが生きていようが死んでいようが、会えても会えなくても…」
   「…結果は、どうでもいいじゃないか」
   「この行動が…Liveなんだよ」
久保田、耳に手を当て目を閉じる。
字幕・久保田の声(どこからか、聴こえてくるだろ…!?
         あの…レゲエ・ビートが!
         今でも…!!)

※ラストコマ
東京ドームLiveのポスター、字幕かぶせて。
字幕《仏は常にいませども
     現〈うつつ〉ならぬぞあわれなる
     人の音せぬ暁に
     ほのかに夢に見え給〈たま〉ふ
     (『梁塵秘抄』より)》

『ネオ・リバースエッジ』
「第一話・Live!」END

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?