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【マンガ原作】『ネオ・リバースエッジ』「第六話・夜の盗賊団(後篇)」

※タイトル画面

漁港。タヌキと布袋様の置物を漁船に積み込む久保田・木村と村木。

タイトル『ネオ・リバースエッジ』

『第六話・夜の盗賊団(後篇)』

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海。夜明け前…。
南房総・和田漁港ー
岸壁に停車するトラック。
運転席から降りる3人。
荷台の扉を開ける久保田と木村。
久保田「悪い、村木さん…」
   「船に積むのを手伝ってもらえないか?」
荷台に乗るタヌキと布袋様の置物。
村木「これをですか…?」
三人掛かりで荷台から降ろす。
停泊している久保田所有の小型漁船。
タヌキと布袋様を漁船に積み込む3人。
甲板にタヌキと布袋様が並ぶ。
村木「こ、これは…魚の仕掛けなんですか?」
  「この地方特有の漁法とか…」
木村「アハハ……だとしたら、斬新な漁法ですね」
久保田、運転席に入り。
久保田「村木さん…船酔いは大丈夫?」
村木「はあ…たぶん大丈夫です」
船のエンジンを始動させる。
久保田「よーし、出港するぜ!」
(ド、ド、ド、ド)と発進する船。
灯台の横を通り抜け沖に出る。

沖合。徐々にスピードを緩め停船。
運転席から出て来る久保田。
久保田「この辺でいいかな…」
波に揺られる漁船。
タヌキと布袋様を背に、久保田・木村と村木が対峙する。
久保田・木村「…」
村木「…」
久保田「村木さん…」
   「センパイ…蜂須賀サンがなぜ」
   「5億円もの大金を持っていたのか、話そうか…」
村木「…お願いします」
久保田「もしも…の話として聞いてくれよ」
村木「わかりました…」
木村「あの時と同じルールですね…久保田さん」 
語り出す久保田。
久保田「もしも…」


   「もしも、昔…新聞記事に載らなかった10億円強奪事件があったとする…」
   「その10億円は多分…政治資金絡みか」
   「土地関係の裏金で被害届けは出されなかった」
   「女がひとり男がふたりの三人組の犯行…」
   「三人はある場所に金を隠し、しばらく身をひそめていた…」
   「ところが…その事件を目撃した若者がいたんだ」
久保田の手に、あの女性のイラスト…。
字幕「偶然だった…その女性があまりにも美しかったから……」
久保田「7月7日」
   「東京タワーの展望台、PM1時…」
   「おそらく…10億円を回収するであろう再会の日時を知った」
村木「…」
久保田「若者は、同じアパートに住んでいた仲間ふたりに」 
   「その話をつい…酔った勢いで話してしまった」 
   「そして…3人で、犯人たちから10億円をヨコ盗りすることになったんだ」
木村「…」
久保田「10億円の隠し場所は…」
久保田、浜辺に見える“レストラン「月光」”を指差し。
久保田「昔…昔あの場所にあった、鯨のモニュメントの中……」
村木「…」
回想カット。『ボーダー』Vol・71「映画のように」より、海に沈みゆく鯨…。
字幕・久保田の声(アパート仲間の3人は…犯人たちから10億円のヨコ盗りに成功したんだ…!)

木村「ハチスカ…いえ、最年長の男が、たった一人で成功させたんです」
村木「…!?」
回想カット。『ボーダー』Vol・70「嵐まで」より、久保田に腹苦の蜂須賀。
久保田「味方に足を引っ張られることを危惧した最年長の男は」
   「10億円の話をした若者をKO…」
回想カット。同じく「嵐まで」より、車内でアワアワする包帯姿の木村。
木村「その場に居ながら…身動きが取れないマヌケが一人居たんですよね」
久保田「年長の男は…決してその10億円を独り占めにはせず、ちゃんと3等分した」
   「そして…3億円をギャンブルで5億円まで増やし」
   「どこかで出会った男に、Liveを持ち掛けられ」
   「その経費で5億円を使い果たし」
   「数年後…姿を消した」
村木「…」
久保田「残された2人は、その金を使う勇気はなく」
   「一人は東北で農業を営み…」
   「その学歴、人柄から…何度か議員を打診されてるが」
   「後ろめたさのためか、断り続けている…」
木村「…10億円の話をした若者は」
  「鯨のモニュメントがあった辺りに、レストランを出し」
  「新鮮な魚と野菜が話題になるほどの人気店にも関わらず」
  「やはり、後ろめたさからでしょうか」
  「今どき広告も出さず、取材も一切断り」 
  「一人でフライパンを振っているそうです」
久保田「2人は…いつかその金を、海に捨てようと話し合い」
   「ついに実行しようと決めたんだ…」
村木「では…この、2つの置物の中には」
久保田「うん…店の開店資金、船の購入に使ったけど」
   「それでもまだ3億数千万は…」
木村「じ、実は私も…農園で使う新しいトラクターの購入資金に使いましたが」
  「同じく3億数千万ほど…」
久保田「村木さん…」
   「オレたちのこと…ケーベツする?」
村木「…いえ」
  「私ども探偵の仕事は…ただ、真実を探るだけです」
  「決して、人を裁くことではありません…」
久保田・木村「………」
村木「…個人的には」
  「とても、良い決断…かと」
久保田「ありがとう…」
   「アンタなら…きっと、そんな風に言ってくれると思ってた」
村木「あの場所に店を出したのはなぜです…?」
  「お金を返すつもりだったとか…」
久保田「さあ…」
   「それが罪悪感か…恋心なのか」
   「正直…自分でもよくわからないけど」
   「ただ…」
   「ここに来れば…もう一度、あのヒトに会える気がした」
村木「…」
久保田「村木さん…手伝ってくれよ!」
   「オレたちは、もう一度…ゼロに戻りたいんだ!!」
村木「…」
タヌキを抱える三人。

久保田の声(金にも色がある…って、教えてくれたのは…)
     (センパイだったよな?)
     (…だとすれば)
一気に海に放り投げる!
三人「せーの!」
久保田の声(オレと木村は…)
     (この金を持ってはいけなかったんだ…!)
「ドッボ~ン!!」
水しぶきが高々と上がり、漁船が揺れる。
さらに布袋様を抱え、海に投げる。
「ドッボ~ン!!」
タヌキと布袋様が絡み合うように、海に沈んでいく…。
タヌキと布袋様が沈んでいくカット…『大川端探偵社』「第13話…狸のはらわた」オマージュシーン。
字幕かぶせて。
字幕⦅ずっと…
   ずっと重荷だった……⦆

   オレの…
   酔った時の一言が
   センパイや木村…
   あの三人の人生を狂わせたんじゃないかと……

   でも…
   …でも、もう吹っ切れた……

   その過去がなければ…今もない

   今を…

   今をLiveして
   これから
   幸せになれば良いんだ…!!⦆

(フゥ~)と、汗をぬぐう久保田と木村、微笑の村木。
回想カット。汗だくになりながら、キャベツを収穫している作業着姿の木村とナミ子。
字幕「…このまま僕は 汗をかいて生きよう」
回想カット。コンロから豪快な火、エプロン姿でフライパンを振る久保田。
字幕「ああ いつまでもこのままさ…」
海。水平線から陽が昇る…夜明け。
朝陽を浴び、晴ればれとした表情の久保田と木村…そして村木。
字幕かぶせて。
字幕「僕はいつでも 歌を歌う時は
     マイクロフォンの中から
    ガンバレって言っている
    聞こえてほしい あなたにも
    ガンバレ!
(ザ・ブルーハーツ『人にやさしく』より)」

※ラストコマ
あの女性のイラストが海面に漂い、波しぶきに消えてゆく…。

「第六話・夜の盗賊団(後篇)」END

「第七話・Remember you」につづく

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