【プロレス・今日の出来事】9月18日「その男…藤原につき」
1983年(昭和58年)9月18日
新日本・小田原自工駐車場特設リング
『星野・藤原VSローンホーク・寺西』
その男に、華やかな光は似合わなかった。"上"で試合をしたのは数えるほどだ。誰にも注目されていない影…"前座"こそが、自分の居場所だと思っていた。
…と、書いてやめた。これはまた、別作品にして公開しよう…。
この試合については少し前にXでポストしたが、Xでもnoteでも、最近になり新たにプロレスファンの方をフォローしたりフォローしていただいので、改めて書いてみる。
「夏の終わりのマスクマン」でオレの"南足柄事件"を書いた際、文章簡略化のため、広い意味で地元としたが、出身も当時の居住地もこちらの市である。会場となったこの地域の中学校の出身者には、作家の夢枕獏、元藤原組・バトラーツの石川選手がおり、多少プロレスに縁がある土地柄でもある…さらにプロレスとは一切関係ないが、警察24時や甲子園実況でおなじみのシンゴちゃんの実家の八百屋さんもこの辺りである。そして、オレはこの近くの川をひとつ隔てた場所に住んでいた。
会場となった小田原自工とは、自動車工場の略で普段は修理するバスや車が置いてある、本当にただの原っぱ(GoogleMapで確認したところ、現在は家電量販店や回転寿司などがあるショッピングモールになっていた)で、大会当日は水たまりすらあった記憶があり、まさに"特設リング"の…"ザ・地方巡業"であった。
さてこの試合…たしかに、星野・藤原というケンカ上等のタッグ、また、試合放棄という…おそらくはイレギュラーであったろう試合結果から、最初から何らかの意図、思惑はあったのかもしれない。ただし、今思い返しても、不穏試合と言うほどの緊迫感はなく、むしろ観客席からは笑いすら起こる、"地方巡業"特有のほのぼのした試合であった…と、記憶している。
試合は、星野・藤原のタッチワークでローンホークを攻める…寺西がカットに入ろうとするとレフリーのミスター高橋が制止し…その間にも星野と藤原がさらに攻め立てる…ローンホークが攻撃しようとすると、藤原がそれをスカして高橋がローンホークに対し反則カウントを取る…そんな展開が続くうちにローンホークがリングを降りて、何やら叫びながら控室に戻ってしまった…つまり、星野・藤原、さらに高橋も加わったコンビネーションで、ただ、ローンホークをおちょくっただけ…。
その後、大使館に駆け込んだ…という見事な大オチまでついたことで、田中ケロリングアナの旅日記やミスター高橋のコラムで有名なエピソードになってしまったが、もしかしたらこのようなことは明らかになっていないだけで、当時やそれ以前の新日のリングでは、日常茶飯事だったのではないだろうか。少なくとも藤原にとってこの試合は、隠し持っている刀は一度たりとも抜くことはなく、せいぜい竹刀…いや、おもちゃの刀で遊んでいただけの試合…。
何より…あの程度のレスラー相手に不穏試合などと言うのは、藤原組長に対してあまりにも失礼…が、この試合におけるオレの一貫した主張である。
後日談
この試合について語ったyoutubeを見たところ、数年前別アカウントでX(その時はTwitterだが)にあげた画像が使われていたのには笑った。もっともオレ自身拾いモノの画像を使うのはよくあることで、事実このトップ画像も借りモノなので目くじらを立てたりはしない、そもそも部活の後輩のササキが撮影し、その焼き回しを買ったものである。
当時、「寺西の写真なんて買ったの、センパイだけですよ」などと笑われたものだが…ササキよ、あの時の寺西の写真はようやく陽の目を見たぞ。
「その男…藤原につき」END
この試合をテーマに、カジワラ的虚実入り乱れた
プロレス小説「前座の魂(仮)」も、今週日曜公開を目標に鋭意執筆中