【マンガ原作】『ネオ・リバースエッジ』「第三話・ラインを越えて」
※タイトル画面
新宿駅南口あたり…。
『ANY総合探偵社』の看板をバックに、電話する男の後姿がオーバーラップして。
タイトル
『ネオ・リバースエッジ』
『第三話・ラインを越えて』
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夜。隅田川、ライトアップされる吾妻橋。
浅草・Bar「KURONEKO」ー
酒を注ぐベテランママ。
カウンターに所長と村木。
所長「たとえばの話だが」
「公文書が黒塗りで公開された」
「…なんてえ話をよく聞くよな」
「それと同じような違和感を覚える……」
村木「そもそも…そのLiveは本当にあったんでしょうか?」
「無名の新人が、いきなりドームでデビューするなどあり得ないことです」
所長「う~む…」
「たしかに…いまのところ、Liveの証言は彼らのみだ」
村木「たとえば…」
「蜂須賀氏を嵌めた大掛かりな詐欺だったとか」
所長「蜂須賀…って男は無職だったそうじゃねえか」
「ボロアパートに住む無職の男を嵌める…」
「そんなマヌケな詐欺師はいねえだろ」
村木「では…本当だとしたら、その費用はどうしたんでしょう」
「会場費、広告費、出演料…主催者が別にいたとしても」
「それなりの資金は必要だったはずです」
所長「…もしかしたら」
「記録が抹消されているのは」
「その…金の流れを隠したかったのかもな」
村木「隠すべき何かがあると?」
所長「うむ…」
所長の胸元でスマホが振動する。
所長「!?」
スマホを取出し。
所長「ん?依頼者からだ…」
シニア向けスマホを操作する所長。
所長「はい…」
スマホを耳に当て。
所長「………」
「ほお、それは興味深い話ですなあ…」
「…その興信所が判明すれば」
「本名と出身地はわかるかも知れない…と」
村木「?」
所長「だが、おそらく…」
「その記録は…ないでしょう」
村木「………」
所長「近年は、個人情報保護と秘密保持…」
「情報の流失を防ぐため、一定期間で処分する場合がほとんどです」
「ですが…」
「…その興信所の特定は、出来るかもしれない」
村木「!?」
所長「実のところ…私どもも、手詰まりでしてなあ」
「もう一度、お話しをうかがいたいと思っていたところです…」
「…どうでしょう?」
「明日、村木をそちらに向かわせますが…」
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翌日…。
海。
JR内房線・列車内ー
村木、(ガーガー)といびきをかいて寝ている。
遠巻きに冷たい視線の乗客。
JR和田浦駅…。
駅に降り立つ村木。
カモメが飛び交う隅田川。
浅草・大川端探偵社ー
所長とメグミ。
所長「メグミちゃん…」
「今のように、ネットなどなかった時代」
「この業界は、どのように自社のPRをしていたと思う?」
メグミ「さあ~、キャッチとか?」
メグミの想像のカット。路上で客引きする所長と村木。
村木「お兄さん…相談事はありませんか?」
所長「今なら、安くしておきますよ!」
所長「お、おい…オレと村木じゃ」
「…どう見ても、ぼったくりじゃねえか!」
腹を抱えて笑うメグミ。
メグミ「あはは…ウケる~!」
所長「昔はなあ…」
「イエ電…固定電話加入者に配布されていた」
「職業別電話帳…今でいうタウンページか」
「それが唯一といっていい、宣伝媒体だったのさ」
メグミ「ふ〜ん…なにそれ!?」
所長、机の上の固定電話の受話器を手にして。
所長の声(初めて興信所に依頼する地方在住者…)
(もしかしたら、騙されるのでは…と)
(疑心暗鬼のなか、選ぶとすれば…)
番号をプッシュする所長。
呼び出し音。(プルルルル…)
そして先方の声…。
「はい…」
所長「オレだ…」
新宿駅南口あたり…。
ビルの一室。
「あ…どーも所長!」
大川端探偵社とは対象的に豪華な内装。
大きな机の前で、受話器を手にする男…。
大川端探偵社。
所長「ちょいと、データベースを調べてもらいてえ」
「1987年度版職業別電話帳…」
「信頼と実績、創業何年…そんなキャッチコピー」
「そして…」
「東北地方に支社がある興信所は」
「何件ヒットする?」
新宿4丁目あたり。
『ANY総合探偵社』の看板。
電話する男の後姿。
「通常…一件3万円から承ってますが…」
「所長なら、今だけの特別価格…何と2万円で!!」
大川端探偵社。
所長、苦笑して。
所長「おい…おめえ、オレから金をふんだくろうってえのか」
「おめえの目の前にあるPCのキーを叩くだけだろうが」
ANY総合探偵社。
「このシステムにだって元手が掛かってますからね」
「少しぐらいは、回収させてくださいよ」
大川端探偵社。
所長「おめえ…探偵学校やら始めてから」
「マスコミにもてはやされて、調子こいてんじゃねえのか」
「だいたい何でえ…ANYてのは?何でも銭を取る…ってか」
ANY総合探偵社。
「アハハ!うまいね…どーも」
「赤松のA、南雲のN、陽子のY…で」
代表取締役社長・赤松良平(『ハード&ルーズ』より)。
赤松「…ANYですよ」
大川端探偵社。
所長、微笑。
所長「………」
柔和な表情で。
所長「…おめえの経営センスは認めてやるから」
「くだらねえ与太言ってねえで、さっさと調べろ…赤松」
ANY総合探偵社。
PCのキーボードを叩きながら。
赤松「今やってますよ」
モニターを見て。
赤松「2件ヒット…ですが」
「…実質1件ですかね」
大川端探偵社。
所長「なんだよ…実質てえのは?」
ANY総合探偵社。
赤松「ひとつは…野村総合探偵社」
「所長の方が…よく、ご存知でしょ?」
大川端探偵社。
所長、無言。
所長「………」
ANY総合探偵社。
赤松「それを除外して…残りは1件」
大川端探偵社。
所長「…そこは、まだあるのか?」
ANY総合探偵社。
赤松「2008年…廃業してますね」
大川端探偵社。
所長「リーマンショックか…」
ANY総合探偵社。
赤松「でしょうね…あれ以降、企業案件が激減しましたから」
大川端探偵社。
所長、受話器を握りしめ。
所長「………」
所長の声(この糸も、途切れたか…)
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南房総・和田浦ー
道の駅和田浦…。
クジラの全身骨格標本の前に立つ村木。
村木「…」
海沿いの道路を歩く村木。
レストラン「月光」の看板が見える。
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大川端探偵社。
所長「ん!赤松…」
「そういえば…あの、ヘソ曲がりはどうしてる?」
ANY総合探偵社。
赤松「ヤだなあ…ウチのアドバイザーをそんな風に言わないで下さいよ」
大川端探偵社。
所長「お、おい…ヤツは音楽に詳しかったよな!?」
ANY総合探偵社。
赤松「ロックがどーの、最近のボクシングがどーの」
「…相変わらずヘソ曲がりですよ、あのオヤジ」
「今でも、プロレスを認めないし…ん!?」
受話器から(プープープー)と、電話が切られている音。
赤松、舌打ちして受話器を置く。
赤松「ちっ…!」
大川端探偵社。
所長、一点を見つめてフリーズ。
所長「………」
※ラストコマ
受話器を置いて。
所長の声(かろうじて…まだ、糸は繋がっていた!)
『ネオ・リバースエッジ』
「第三話・ラインを越えて」(END)