【閻惠昌と香港中楽団】今日行ったコンサートの感想:令和05年(2023年)03月31日(金)【2023 Japan Tour】
指揮:閻惠昌
チューニングを聴いているだけで、ああ! 中華ファンタジー! と期待が高まった。二胡の官能的な音色、横笛の鄙びた音色、どれも美しい! 「革胡」という、中華チェロ、及びコントラバスを初めて知りました。あれはいつ開発された楽器なのだろう。伝統楽器なのだろうか。そして設置された巨大な笙! あれも口で吹くんですね! 洋楽器としてティンパニとシンバル、チューブラー・ベルズとヴィブラフォンがいましたが、馴染んでました。
伍卓賢『真』(「極」第6楽章)
今日の曲目の中で一番新しい作品。中華ダルシマー:揚琴がソリスト。民族主義でロマンチック。まるでラフマニノフのよう。主に声楽の分野で活躍している作曲家だけあって、メロディが美しい。
陳明志『精・気・神』https://youtu.be/7NkY54OYqm0?t=15
尺八のムラ息で始まる。中国にも尺八があるんですねえ。この尺八ソロは曲の随所で現れる。和田薫的かと思ったが、もっと前衛的でバリバリの現代音楽だった。池辺晋一郎を思い出した。打楽器奏者のエリアに何か棒を持った2人が控えていて、何だろうかと思っていたら、2人がその棒を離れて掲げ、その間に渡るバネを打楽器奏者が撥で叩く! 独特の余韻のある音色がした。序盤の一発しか使わなかった。轟音と静寂の交替で音楽が進んで行く。二胡が弓の木側で胴を叩くなど、ペンデレツキ的な一面もある。トーン・クラスターもあり。途中で嗩吶が鶏か馬のような鳴き声を出す。最後はクロタルの可憐な一撃で終わる。
孔志軒『幻想伎楽天』琵琶と中楽団協奏曲 琵琶:張瑩 https://youtu.be/Hyl3xGNpjBc?t=20
ソリストの位置に琵琶が置いてあって、あれを使うんだな、と思っていたら、ソリストが琵琶を持って登場。その置いてあった琵琶は使わなかった。あれは何だったんだろう。日本の琵琶と違い、まさかの指弾き。爪は付けていたのだろうか。トレモロが特徴的。重音奏法が恰好良い。それにしてもフレットが多いな。左手ピッツィカートもするぞ。トレモロ・グリッサンドもするぞ。
速度が上がり盛り上がると現れる突然のコンガ。でも南米感は無く馴染んでいた。最後のクライマックスは独奏と楽団との掛け合いがスリリング。全体を通してロマンチック。吉松隆か下村陽子のよう。素晴らしい協奏曲だった。
趙季平『シルクロード幻想組曲』サクソフォン協奏曲 サクソフォン:住谷美帆 https://youtu.be/os06-OcILco https://youtu.be/NrEEXNsbK7o?t=40 (管子版)
ソプラノ・サクソフォン。洋楽器だけど、中楽団に非常に馴染んでいた。洋の東西を超えた作品だと思う。もともとは中華篳篥:管子の為の曲らしい。シルクロードを冠するだけあって、西域の雰囲気がする。第1楽章は「長安の別れ」だが、進むに連れて唐より西の音楽が展開される。第2楽章は今回は演奏されず、第3楽章「涼州の楽」は活発なアレグロ。第4楽章「楼蘭の夢」は指揮者が休み、サクソフォンと箏の対話による二重奏。第5楽章フィナーレは「亀茲の舞」。管子の故郷、西域・亀茲国が舞台となる。
譚盾『西北組曲』https://youtu.be/ANoDgSeLLoc?t=15
始まると、奏者たちが何事か呻いている。そして立ち上がる。座ると今度は「ハー!」と「シー!」が聞こえて来る。譚盾はこういうことする。そういうとこある。静寂の中、太鼓が打撃音を挟んで来る。これら冒頭の不気味さだけではなく、盛り上がって来ると何かを叫んでいたが、これはリズムにも乗っていて掛け声として恰好良かった。民族主義と全英技法の融合。これが譚盾の持ち味。太鼓3人によるユニゾンのキメが大変恰好良かった。中華シンバルの擦り合わせによるクレッシェンドも印象的だった。最後も掛け声で締める。
アンコール『何かの香港のテレビ番組のテーマ』
まず手始めに、指揮者が縦に振る。すると楽団が「ウー!」と掛け声を出す。指揮者が横に振る。今度は「ハー!」。そして今度は指揮者が聴衆に向けて振る! 聴衆も「ウー!」そして「ハー!」! 聴衆参加型の曲! 面白かったし恰好良かった。
YouTubeで今回の曲を探していると、香港中楽団だけでなく、小巨人糸竹楽団、国立台湾大学薫風国楽団、蘇州民族管絃楽団、中央民族楽団など、香港・台湾・中国に隔たり無く民族楽器オーケストラがあることが分かりました。日本にも民族楽器オーケストラが欲しい! 国立で!!!