言葉の槍
言葉は槍である。
誰かの発言に対し「的を得ている」「的外れだ」という表現をすることがあるが、投げ放たれた槍のように言葉は時として人の心に深く突き刺さり、ポジティブにもネガティブにも作用する可能性がある。あなたは自分の発した言葉が誰かの心に突き刺さるかもしれないという覚悟のもと発言しているだろうか?
私は、どんな言葉をかけられてきたかがその人の後の人生に大きな影響を与えている可能性が高いと思っている。特に相手が親しい人間であれば尚更だ。槍は距離が近いほど深く突き刺しやすい。
3度目の緊急事態宣言で暇を持て余すだけの大型連休。罵詈雑言が飛び交うSNSを見ながら、今私の心には一体どんな言葉が刺さっているだろうかと思い、これまでの人生を見つめ直してみた。
今回は私がこれまでの人生で友人や先輩から頂いた言葉の中で、私の心に特に深く突き刺さっているものを厳選してお届けしたいと思う。
*「まるごとバナナは量多すぎるから半分でええ。ハーフサイズのやつ出したら結構売れると思うねん。」
これはハーフサイズの”まるごとバナナミニ"が発売される2-3年前に大学の先輩が言っていた言葉である。私が覚えている限り、今までの人生でこの言葉を聞いた時以上に共感したことはない。食後のデザートにしては多すぎるし夕方の小腹が空いた時に食べると空腹感ゼロ状態で夕食を迎えることになってしまう、でも美味しいから食べたいというあのジレンマを長年抱えていた私にとって、自分の気持ちを代弁してくれる先輩がいるということがとても嬉しかったのを覚えている。
*「この時計ですか?50万くらいするらしいですよ。知り合いの女性から貰ったんですけど…いや、別に彼女とかじゃないです。」
昔仕事で同じ開発案件に携わった他社のシステムエンジニアの方の言葉である。ホストでも芸能人でもない一般のサラリーマンでもイケメンなら付き合ってすらいない女性から50万円の時計を貢いでもらえることにとてつもなく衝撃を受けた。よく見たらスーツもめっちゃ高そうだけどもうそれ以上はつっこめなかった。そういえば後に同じ開発チームの人全員(男しかいない)で夜のお店に行くことになった時もその人だけ来なかった。お金を払ってちやほやされに行く男とお金を貰ってちやほやされる男の決定的な格差を見せつけられ、傷ついた私はその夜ミナミのギャルに癒された。
*「うちの会社2ちゃんで"ITブラック四天王"って言われてるで」
初めて就職した会社で研修中に同期から言われた言葉である。なんか面接とかもやけにすんなり受かったのはブラック企業だったからか!と気づくも時すでに遅し。初めて"四天王"と言われるものの一角に関わった当時の私の心境は「そんなんリクナビに載ってなかったし!」だった。何故か私がググってもブラックな情報が出てこなかったのは、その会社が大阪事業所を分社化して別の社名をつけていたからだった。後に主任クラスの先輩社員から言われた「ちゃんと給与明細見て未払いの残業代どれくらいあるか控えときや」もかなり刺さった。
*「なぁ、ビール買いたいから500円くれへん?」
10年ほど前にバンドのライブで対バンしたそこそこ歳上の先輩バンドマンから言われた言葉である。私が断ると別の後輩バンドマンに同じようにお金をせびりに行き、難なく500円をゲットした後、ライブハウスの外の自販機で発泡酒を買ってお釣りをポケットに入れていたのを見て「いやせめてバーカンでビール買えよ!」とつっこんだのを覚えている。先輩は金が無くても見栄を張って後輩に奢るものという固定観念は破壊され、プライドを捨ててでも酒を飲みたい人間がいるということをこの先輩から教わった。そのとき対バンで出ていた他のバンドは全て解散したが、その先輩のやっているバンドだけはいまだに現役バリバリである。今になって思うが、ロックとはそういうことなのかもしれない。
いかがだっただろうか、私の心に深く刺さった言葉達。きっと皆さんの心に刺さる言葉もあったのではないかと思う。なぜ私の心に刺さる言葉が皆さんの心にも刺さるかというと、人にはそれぞれ個性があるけれど本質的には同じ人間なのでさほど変わらないからである。他にも紹介したい言葉はたくさんあるが、今日はこの辺にしておく。
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