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Shake Body
最近ふと入浴中に妄想していたストーリーがある。
それは「前世が鮭だったため、イクラを見ると反射的に下半身が反応してしまう男」の物語である。
この男に起きる悲劇は全て、頭では人間の女性を求めていても、身体はイクラに反応してしまうことに起因する。
男はこのような身体になってしまった以上、女性とデートをする際は細心の注意が必要で、寿司屋、海鮮居酒屋、スーパーの鮮魚売り場など、イクラと遭遇しそうな場所には極力近づかないようにしている。
彼女の前で、イクラ相手に我を忘れて昂ぶっている姿を見せるわけにはいけないのだ。
男はこれまで歴代の彼女には「痛風だからイクラを食べれない」と嘘をついてきた。
本当はビールを飲みたいのに、我慢してハイボールを飲み続けた。
本当は明太子が大好きなのに、痛風だと嘘をついているせいで彼女達の前では明太子を一切口にしていない。
ちなみに「明太子が好き」ということは全くやましいことではないはずなのに、なんだか浮気しているような気持ちになってしまうのも困ったものだ。
男も幼い頃は普通の少年だったが、思春期になると身体がどんどんイクラに反応するようになってしまい、当時はその悩みを誰にも打ち明けることができずに毎日が辛かった。
小学生の頃は普通に楽しめた流れるプールも、中学入学後はなぜか何度も逆走してしまい、その度に監視員に捕まり叱責され、いくつかのプールを出禁になった。
ウォータースライダーを逆走した時はその何倍も激しく怒られた。
現在独り身である男の日課は、マッチングアプリに登録されている女性のプロフィールを片っ端から読み漁り、「魚卵が嫌い」「魚介類全般が苦手」などの文言を掲載している女性のみをリストアップした一覧を作成することである。
作成した女性の一覧と日本地図を用いて、出身地別の分布図を作成してみると、やはり港のある街出身の女性とは縁がないことが一目で分かった。データは正直だ。そして北海道にいたっては全滅だった。男にとって北海道は巨大な砂漠のような土地なのだ。
男にとっては悲しいことに、交通網の発達した現代に置いては日本中どこにいても新鮮なイクラを入手できてしまう。
しかし、この分布図を作成することで、比較的イクラが苦手という人の多い街に引っ越す目星も付いてきた。今、一番の狙い目は岐阜である。
あとは現在マッチングアプリで頻繁に連絡をとっている「ポテチとチューハイ以外は口にしません」と豪語する岐阜在住の偏食女へのアプローチに全力を注ぐのみだ。
この女の偏食が本物であることを祈る。初デートで「磯丸水産に行きたい」などと言い出したらその場で帰ろうと思っている。
…そんな妄想をしながら、自分には前世の記憶がなくて良かったと、私は思ったのでした。
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