ベイビーアイラブユーだっぜ!
宇宙ごと抱きしめるから
剣盾の思い出
ついに剣盾でのランクバトルが幕を閉じた。新作発売まで2週間ほどとなり、ガラル地方に別れを告げる時が近づいてきている。これまではまだ実感が湧いていなかったのだが、対戦環境の終わりとともに、ひとつの時代の終焉を目の当たりにしていることを痛感している。
今日は「僕にとって”ポケットモンスター ソード・シールド”とは何だったのか?」をテーマに書いてみようと思う。第8世代の総括のようなものかもしれないし、出来上がってみたら全く違う文章になっているかもしれない。
剣盾遅刻勢
僕が剣盾を始めたのは比較的遅めで、2021年1月、発売から約1年半が過ぎて追加ダウンロード・コンテンツである「エキスパンションパス」が発売された後であった。25周年記念MV「GOTCHA!」を見て感動した僕はBWをプレイしたのだが、その後は第6・7世代をすっ飛ばして剣盾の購入に踏み切った。僕はストーリーをじっくり楽しみたい人間なので、このままではいつまで経っても最新作に追いつけない、と思ったのだ。
剣盾を起動して驚いたことは、何と言ってもSwitchで再現されるグラフィックの綺麗さだった。ドット絵で育った世代としては、ユウリちゃんがあまりにもリアルに描かれている様を目の当たりにして、何かの間違いじゃないかと思ったくらいだった。誰もいないと思って鼻歌を歌いながら部屋に入ろうとしたら、なぜか女の人が着替えをしていて、気づかれる前にそっとドアを閉じて退却する時のような気分だった。まあ、実際にはそういう場面に遭遇したことはないんだけど「自分は何も悪いことをしていないのに、なぜか感じる後ろめたさ」のことを言いたかった。
剣盾のストーリーで僕が最も感動したのは、チャンピオン=ダンデとの戦闘で流れるBGMだ。これまでの作品では殿堂入りを称えるために使われていた曲だが、今作では戦闘向けにアレンジされており、今まさに栄光を掴み取らんと意気込むチャレンジャーと、その前に立ちはだかる最強のチャンピオンとの決戦を鮮やかに彩っている。ポケモンのBGMはどれも甲乙つけ難いけど、剣盾で一番思い入れのある曲をあげるなら、間違いなくこの曲になる。
僕はポケモン対戦にはそれほど興味がなくて、まさかこんなにやりこむとは思ってもいなかった。対戦経験と言えば、BWのやりこみ要素であるPWTでジムリーダーやチャンピオンのセリフが見たくて、頑張ってガブリアス・バンギラス・メタグロスを育てたくらいのものだ。この3匹は野生産にそのまま努力値を振っただけなので、今から思えば性格補正も個体値もめちゃくちゃだったと思う。よくわからないサイトからそれらしい育成論を拾ってきて、頑張って自宅前の池でバスラオ狩りをした記憶が残っている。
いわゆる3値や努力値振り、性格補正について正しい知識を身に付けたのは、剣盾でランクバトルをやってみようと思ってからだった。とはいえ、最初は「楽しくポケモンバトルができれば良いや」と思っていたので、個体値厳選もせずにボックスから好きな6匹を選んで、”ポケモン徹底攻略”というサイトから育成論を拾ってきて、適当に努力値だけ振って潜り始めた。
「まずはやってみよう」と見切り発車したのだが、能力値が僅かに1違うだけで天と地ほどの差が生じうると理解するほどの廃人となったのは、もっと後の話だ。
最後のシーズン、ヤリ〇げ戦法で気持ち良くなる。
話は一気に飛んで(びゅーん)、ラストシーズンについて。僕がどのような考え方でポケモン対戦と向き合っているかについては、別の記事で書いてきたのでここでは触れない。ただ、この最後のシーズンは僕にとってもう一つ大切なことを教えてくれた。
構築記事ではないのであくまで紹介程度に留めるが、昨シーズンは白馬・イベル・ガレオの3匹を基本選出とする構築を使っていた。前シーズンで幻統一をやって「もうこれ以上やり残したことはないな」と思っていたので、ラストシーズンは潜る予定がなかった。
だが、終了1週間前になって、Twitterのフォロワーさんから色違いのガルーラを交換してもらって「最後だしガルーラを活躍させて終わるか」と思い立って、急遽構築を組み始めた。ガルーラはうちのおかんの相棒なので、剣盾で活躍しているところを見せてあげたかった。
結果的にはこの環境でガルーラを活躍させることは厳しかったため、せめて色違いラティアスを使おうと思ったのだが、想像以上に白馬・イベル・ガレオが使用感がよく完結していて、選出機会が全くなかった。なるべく一般ポケモンを使おうと努力してみたものの、数値が足りなくて競り合いに押し負けることが多く、徐々に禁止級伝説に代わっていった。
僕は禁止級伝説をまともに使ってこなかったのだけど、鉢巻き白馬はめちゃくちゃ楽しくて、もっと早く使っていればと後悔しているくらいだ。実況者のバンビ―さんが動画で紹介していた型をそのまま使い、イベル・ガレオで相手を疲弊させてからトリルを展開して槍を投げまくって勝つ、というコンセプトを採用した。
鉢巻き白馬のブリザードランスがどれくらいすごいかというと、H252ザシアンが確定2発、H252ホウオウが確1、H無振りダイマゼクロムが確1、HDナットレイが75%の乱1…どうなってんだこのポケモン。
白馬の槍くらい受けれるだろうと、トリックルーム・ターンを稼ぐためにザシアンやナットレイを投げてくる相手が多かったが、鉢巻き白馬の破壊力を目の当たりにして、相手が凍り付いているのが画面を通しても伝わってきた。何が起こっているかわからない、という面食らった表情を思い浮かべるとめちゃくちゃ気持ち良いものだ。僕は勝手に”槍投げ構築”と名付けた。
禁止伝説級の嫁を目指して
1週間程度しか時間がなかったものの、最終日には順位もそこそこ良い位置につけていて、1000~2000位をキープしていた。3桁チャレンジこそなかったものの、初めての最終3桁を十分に狙える位置だった。
しかし、なかなか勢いに乗ることができず、勝率自体は6割前後を維持しつつも、大きな連勝に恵まれなかった。実力が足りなかったと言えばそれまでだけど、麻痺による下振れが激しくて、拾えた試合を落とすことが多々あった。電磁波による素早さ操作自体は否定しないけど、トリックルーム展開をケアせずにとりあえず麻痺撒いとけ、みたいな相手にはさすがにイライラさせられた。
そんなこんなでビッグウェーブが訪れないまま、じりじりと前線から後退していき、最終3桁のラインは厳しくなってきた。それでもまだチャンスはあると思って潜り続けてはいたが、何より僕の心の中では「おい、こんなことしていて楽しいか?」という声が渦巻いていて、このまま剣盾を終えて良いのか迷い始めた。たしかに鉢巻き白馬の槍投げは気持ち良いし、戦術的にも悪くなかったと思うけど、何かが足りないという感覚は、濡れ落ち葉のようにずっとつきまとっていた。
自分が剣盾のランクバトルで何をしてきたか、どういう風に終えたいかを立ち止まって(本当はジョギングしていた)考えた時に、答えはすぐに出た。
「グレイシアと戦いたい。それ以外に何がある?」
僕はレート戦を始めて以来、幻統一を除いては、どのシーズンもずっとグレイシアと一緒だった。どれだけ逆風が吹こうと、どうにかしてグレイシアを活躍させるために僕は対戦環境に身を置いてきて、禁止級伝説が2体になろうとも僕らはいつも一緒にいた。
世の中には好きなポケモンをボックスいっぱいに育成している人もいるけど、僕は同じ個体を使い続けた。2021年2月4日に、げきりんの湖で出会ってハイパーボールで捕まえた、控えめでちょっぴり見栄っ張りな、おとこのこのグレイシアだ。型を変える度に、まっさらお姉さんに努力値をリセットしてもらった。勝っても負けても、嬉しい時も悲しい時も、いつもグレイシアがそばにいてくれた。キャンプでは画面いっぱいの笑顔で迎えてくれ、カレーを食べ終わると気持ち良さそうにお昼寝をしていた。
そう、僕は思い出した。グレイシアは僕にとって”禁止伝説級の嫁”であることを。いかなる禁止級伝説にも代わることのできない、僕らに2人にとって特別な場所があるのだ…
僕は最後の戦いを前に、ザマゼンタを解雇してグレイシアを登録することを決意した。育成ができていないので選出することはできないが、せめて一緒に戦いの場にいるべきなのだ。勝つことよりも大事なことが、この世界にはたしかにある。たとえ最終3桁を達成できなくとも、グレイシアと共に喜びや悔しさをわかち合わなければ、僕のソード・シールドを終わらせることはできないのだ。
グレイシアの引退試合
最終日の朝、終了まで1時間を切った段階で1戦だけ対戦を行った。順位は2000位台後半で、最終3桁には間に合わない。僕がわざわざこの時間に潜ろうと思ったのは、順位を諦めきれなかったからではない。目標には届かなかったけれど、槍投げ構築には十分に楽しませてもらったので、未練はなかった。
目的はグレイシアの引退試合だった。プロ野球でも引退する選手に最後の1打席が与えられるように、僕はグレイシアにも花道を飾ってあげたかった。この子はこれでレート戦を退き、ユウリちゃんと共にガラルで過ごしてもらおうと思っている。それで、最後はグレイシアをダイマックスさせて終わろうと考えていた。
とりあえず初手でグレイシアをダイマックスさせて、すぐに降参しようと思っていた。ところが通信状況が安定しなくて、なぜか決まって選出段階で切断が起きてしまった(お相手の方にはたいへん申し訳ない。対戦記録がついていたのが幸いだった)。それで「これはきっとグレイシアが勝ちたいと伝えているんだ」と思い直して、最後は勝ちにいくことを決意した。
選出はグレイシア・白馬・ガレオで、相手の先発にイベルタルが来るとかなり厳しかったが、黒バドレックスだったので救われた。思い切って初手ダイマックスを切って相手の意表をつき、後ろ2体の天敵となる黒バドを仕留めることができた。次はザシアンが出てきたので、ここでグレイシアは退場させた。なにせ嚙み砕くザシアンにはさんざん煮え湯を飲まされてきたので、死に出しから安全にソルガレオを着地させ、トリックルームを展開してから白馬で貫く方が勝算があると判断した。
相手の交代に合わせてテレポートで白馬を無償降臨させ、白馬-ランドロスの対面が作れた。トリックルームは3ターンで、相手の選出からして襷ランドロスではないだろう。ダイマックスを強く使うためには、おそらく珠持ちの可能性が高い。だとすれば2連続ダイウォールさえ決められなければ詰め切れる。
相手はトリル・ターンを枯らすためにザシアンに引いてきた。だが半減にも関わらず、鉢巻き白馬のブリザードランスは受からない。相手はザシアンかランドロスを切るしかない。ザシアンはソルガレオに打点がないと判断して、相手はランドロスを残した。
トリルターンはあと1。ランドロスにダイウォールがあればターンは枯れてしまうが、相手の動きからして剣の舞の採用は十分に考えられる。ここは槍を打ち込み、あとは択を合わせて勝つしかない。白馬は耐久が優秀なので、ダイアースはきっちり耐えてくれる。ザシアンの石火でわずかにHPが削れているため、ダイロックは中乱数で飛ばされる。
だが、HPが見えていない状態で相手がダイアースを選択するとは思えなかった。白馬さえ落とせばソルガレオはランドロスで詰めれるから、確実にロックで仕留めに来るはずだ。僕はソルガレオバックを選択し、ランドロスのダイロックを受けきった。そして死に出しから白馬を場に送り、あとはストーンエッジが急所に当たらないことを祈るだけだ。グレイシアとの最後の1戦だ、頼むぞ白馬…
スカーレット・バイオレットでやりたいこと
ランドロスを白馬の槍で打ち砕き、僕とグレイシアの最終戦が終わった。このグレイシアは感情認識機能でもついているのか、僕が弱気になるとやたらと豪運を引き寄せて不利な状況から勝たせてくれることが何度もあったが、最後も僕に向けて「勝ちたい」と言ってくれたので、すべてを貫いて勝利を引き寄せてくれた白馬には感謝したい。
スカーレット・バイオレットの発売までは、色違い厳選や過去作をプレイしてゆっくり過ごそうと思っている。僕はつい一昨日まで予約を済ませていなくて、イオン系列の店舗でもらえるマグカップ目当てに予約してきた。
SVでも対戦は続けたいと思っている。可能であれば色違いグレイシアをゲットして、パルデア地方での相棒にできればと考えている。
グレイシアは高い特攻種族値にも関わらず、技範囲の狭さゆえにはがねタイプ相手には簡単に止められてしまう致命的な欠点がある。さらに半減で受けられるタイプが1つしかないのでサイクル適性が低く、剣盾では対面的な構築を採用せざるを得なかった。
しかし、SVでは新システム”テラスタル”によってタイプを変更することができる。グレイシアなら炎タイプになることで、天敵のナットレイなどに協力な打点を持つことができるのだ。テラスタルの詳しい仕様は公開されていないが(ネタバレなので見ないようにしている)、氷・炎の両打点を持てればかなりの範囲を採ることができる。ガラルヒヒダルマがなかなか受けられないように、炎・氷はかなり優秀だ。素の耐久も悪くないので、サイクルにも参加しやすくなるだろう。
僕はもともと交代を駆使して対面を操作するサイクル構築が好みなので、テラスタル環境には期待を膨らませている。択が生じる場面は増えそうだけど、今までタイプや技範囲のせいで日の目を浴びなかったマイナーポケモンを活躍させたいと思っている。
もちろん対戦だけでなく、ピクニックや色厳選も楽しみたい。ストーリーもじっくり時間をかけて味わいたいので、対戦に入るのは当分先のことになりそうだ。
最後に
剣盾を通じてたくさんのプレイヤーと知り合うことができた。お陰様で有益な情報を頂いたり、たわいもないやりとりで楽しませてもらった。何よりみなさんの”推し活”に影響されて、グレイシア以外にも好きなポケモンに出会うことができた。好きな女の子がたくさんいると人間性を疑われるけど、好きなポケモンは多いほど楽しい。もちろんグレイシアは特別だ。
本当ならオフ会などで実際にお会いして交流を深められれば良いのだが、いかんせん僕は禁止伝説級のクソ陰キャなので、残念ながら顔を合わせることはできないだろう。いくらポケモンという共通点があっても、初対面の人と話をするのは緊張する。ザマゼンタの如く、見知らぬ人がいる場に出ると心の防御ランクが上昇してしまうのだ。それに、僕は貴重なお時間を頂いてまで会っておくべき立派な人物ではないので、これからもインターネット上で仲良くしてもらえるとありがたい。
最終的に剣盾の総括と称して良いのかよくわからない記事になったけど、これで終わり。僕にとっての「ポケットモンスター ソード・シールド」は、きっちりとフィナーレを迎えることができた。大団円です。ちゃんちゃん。
☆すぺしゃるさんくす
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おわり