そのムゲンダイナを譲ってほしい
今日は現在配布が行われている色違いムゲンダイナに関して書く。
1年前のザシアン・ザマゼンタの時にもそうだったけど、各地でシリアルコードの品切れが早くも発生しているらしい。都心部では、配布開始初日に店舗に訪れても入手できなかった人もいるようだ。
一応公式からは1人2枚までとやんわりと注意書きがなされているものの、それ以上受け取ったことに対するペナルティは特にない。近隣の店舗を巡回すれば、複数枚のシリアルコードを入手できる。
わざわざシリアルコードを回収してまわる目的は人によって異なるけど、だいたい次のように分類されるのではないかと思う。
①転売
②SNSでの配布
③コレクション(言語違いコンプリート等)
④対戦用に複数の型を育成する
⑤何となくもらえるものはもらいたい
以下ではそれぞれについて僕なりの私見を述べていくつもりだが、その前になぜ僕が色違いムゲンダイナを見ず知らずの人たちに配布することになったか、その経緯を説明しておきたい。
結局2匹しか受け取れなかったムゲンダイナ
先に白状しておくと、僕はもともと他の人に譲ろうなどという気前の良い考えはなかった。自分のために複数の言語を集めたり、いつかポケモン交換の弾に使えるかもしれないと思い、近隣のゲームショップを巡回してコードを回収した。
「言語違い」は知らない人も多いと思うので補足しておく。ポケモンはセーブデータを作る時に「言語は何にしますか?」と聞かれ、最初に自分が使う言語を選択することができる。その時にだいたいの日本人は日本語を選ぶけど、中には英語表記のポケモン名の方がかっこいいなどの理由で、他言語を選ぶプレイヤーもいる。たとえば今回は、ムゲンダイナ(日)=Etenatus(英)=無極汰那(中)=…といったように、言語によって名称が異なるので、それをコンプリートしたい収集家もいる。
それから、選んだ言語によってステータス画面で【JPN】【ENG】【CHN】…とコードが表示されるので、これをすべて揃えることを目的にするプレイヤーもいる。こだわりがないプレイヤーからは「なんの意味があるの?」と思われるかもしれないが、コレクションというのはそういうものなので仕方がない。
他にも、ムゲンダイナというポケモンがとにかく大好きで、色違いを6匹集めてキャンプをしたい!というプレイヤーだっているだろう。僕はグレイシアが大好きだけど、自分の好きなポケモンがぞろぞろとカレーに群がってくる光景はけっこう趣がある。
このように、1種類のポケモンを大量に集めるのには、常人には理解しがたくもそれなりの理由があったりもする。
僕は特に言語にこだわりはないし、ムゲンダイナを6匹並べて「ぐふぐふぐふ…」としたいわけでもない。ただ単に「もらえるならまあたくさん欲しいわな」と考えるうちの一人である。
一応おひとり様2匹までとは言われているけど、公式側も言語違いコンプやムゲンダイナ大好き人間が大量に収集することは承知の上でシリアルコード形式にしたのだから、ある程度は黙認していると考えられるだろう。言語違いマニアやムゲンダイナ狂はプレイヤー人口からすれば数%のイレギュラーみたいなものだから「まあそれくらいは問題なかろう」と判断したのだろう。要はプレイヤーの節度の問題である。
そういうわけで、僕はとりあえず初日に自分用のムゲンダイナを確保して、2日目に市街に出かける用事(バッティングセンターでかっ飛ばす)があったので、ついでにシリアルコード巡りを行った。やたらと家電量販店やゲーム取り扱い店が多い場所で、歩いて30分以内に5か所以上の配布対象店舗があった。
ザシザマの時には開始1週間以上経ってからもコードが余っていたので、地域差があるもんだなあと思っていた。都内では即日販売終了の場所も多いみたいだけど、僕の地域は特に行列もできておらず、すんなりとコードをもらうことができた。
僕はWCSでのビクティニ配布の際に他言語ROMを8個作ったので、せっかくならその個数くらいはムゲンダイナも回収しておきたいなと思っていた。
それから、他の記事でも書いているけど僕は中古ROMガチャ戦士でもあり、過去のプレイヤーの遺産を受け継ぐ者である。ハードがswitchに切り替わった剣盾からはROMガチャができなくなり、後世のプレイヤーはプレシャスボール入り色違いムゲンダイナを入手する手段が限定されてしまう。最後まで使われずに無駄になるコードが出るくらいなら、僕が回収していつの日かムゲンダイナが大好きなプレイヤーにプレゼントしてあげることができれば、ROMガチャで楽しませてもらった恩返しができるのではないか、と考えていた。
そんなわけで、僕はわざわざ七面倒な配布なんてするつもりは毛頭なかったけど、ちょっとしたネタツイ的なもの(出:ムゲンダイナ、求:圧倒的感謝)を思いついたので、まだ受け取れていない人を対象にコードを譲ることにした。まずは他の人に譲ってから、残ったコードで自分のコレクションを回収するつもりだったのだが、まさか全部のコードを放出することになるとは思いもしなかった。
最初の募集ネタツイには3人ほどしか来なかったので、「まあ実際のところそんなもんやろ」と高を括ってしまった。人口の多い都内はいざ知らず、まさか郊外地域まで高々ゲームごときに必死になる人はおらんやろ、と思っていた。ザシザマの時と同様に、地域差の問題だろうと考えていたので、再度募集ツイートをかけたのだが、1時間もしないうちに予想をはるかに超える希望者が現れた。慣れない事態に慌てふためいて、途中で募集を打ち切らざるを得ないほどだった。
原則としてまだムゲンダイナを受け取っていないことを条件として、報酬は「圧倒的感謝」を頂き、フォローやRTは必要としなかった。DMのやりとりのために一時的にフォローしてもらうことはあっても、終わり次第解除してもらうようにお願いした。身内にばかり良い顔をすることはあまり好まないので、フォロワーでなくてもリプライだけで応募可能にした。
もちろんこちらからは相手のことを正確に判断する材料がなく、中には悪質な方もいたのかもしれない。しかし、実際にコードを譲ってムゲンダイナを受け取った方からは文字通り圧倒的感謝を頂いてしまい、正直なところ参った。「仕事でどうしても受け取れなかったからありがたい」「病気で外出できなくて…」「地方住まいで手の届く範囲に対象店舗がなかった」と言って感謝してくれた方がほとんどで、悪質と思われる方はごくわずかだった。
もちろん僕は「善行だから文句を言われる筋合いはない」と言い張るつもりはない。翌日に店舗を視察しにいくと配布終了となっていた場所もあったので、僕が他の人に譲ったせいでもらえなかった人だっているかもしれない。ある人に対して施した善が、別の人にとっては悪であったかもしれない。そう考えると「果たして自分の行動は正しかったのだろうか?」と思わざるを得ない。
結局のところ、僕は自分用のムゲンダイナを2匹しかもらえなかった。勢いでコードを譲ると言ったものの「ああ、おれのムゲンダイナが…」という気持ちがなかったと言えば完全な嘘になる。1枚ずつ写真を撮ってコードを譲る度に、後悔の思いがむくむくと心にもたげてきたのが偽らざる事実である。人間という生き物は、とことん利己的にできているのかもしれない。
それでも、仕事や家庭の事情など、様々な理由で受け取れなかった人たちから圧倒的感謝を受け取ると、自分1人で独占しなくてよかった、と感じた。周りに困っている人がいるのに、自分だけ得をしていると思うと頭がおかしくなってしまう性格なので、それに比べれば言語違いなど屁みたいなものだ。ポケモン好きの同士として、色違いの喜びを分かち合えるなら、それが僕のなすべきことである。ムゲンダイナがいないボックスの空白など、利己感情に満ちた虚しき心の空白に比べれば、いとも簡単に埋められる。ははん。
それぞれの問題について
ここまでずいぶんと長くなったけど、①~⑤までについての私見を手短に書いていく。
①転売は、そもそもメルカリなどの利用規約に反するので、言わずもがなアウトである。しかし、転売ヤーには転売ヤーなりの事情みたいなものもあるのだろうから、この世から転売がなくなることはないと考えるのが妥当である。
僕は一方のみの意見を聞いて物事の善悪を判断することは避けたいと考えているので、転売ヤーの主張を聞かずして彼らを悪人呼ばわりはしたくない。もちろん転売ヤーを擁護するつもりはなくて、法的に黒である行為なのだから、問い詰められれば許されることではない。彼らがいなければこんな事態にはならなかっただろうから、怒りを覚えるのも至極真っ当だと思う。
僕が言いたいのは、たとえば面と向かって「仕事を失い、家族を失い、生活保護も受けられず、生計を立てるためには転売しかなかった」と切々と弁解されたら、情状酌量の余地がある転売ヤーもいるかもしれない、ということである(いるとは言っていない)。
顔を見なければいくらでも酷い言い方をできるネット社会だからこそ、想像力を働かせて「悪行をする人にはどんな言い分があるだろうか?」と立ち止まって考えることが必要だと思う。世論が正論を振りかざして悪人をよってたかって叩き潰そうとすれば、彼らは余計にまともな生き方ができなくなる、ということを僕は「ヒロアカ」から学んだ。
なので、「転売ヤーはいなくならない」し、彼らに文句を言ったりしても無駄である。何を言われようと転売ヤーが改悛することはないだろうから、転売ヤーがいるという前提でこちらが行動するしかない。
タチが悪いのは②フォロワー稼ぎ、であると思う。転売ヤーの中には生活に切羽詰まってやっている人もいるかもしれないから、部分的には情状酌量の余地があるかもしれない。しかし、フォロワー・RT稼ぎに関しては、ただの名誉欲と承認欲求以外の何物でもないだろうし、それは少し考えればやめられることなので、情状酌量の余地はない。
まあ中には「他人に認められないと生きていけないんだボケカス」と言う人もいるかもしれないけど、他人の作ったもので自己承認欲求を満たそうなんて、いささか虚しいのではないかと想像する。
僕も今回配布してフォロワーが増えてしまったので、人のことは言えないかもしれないけど、にんじんで釣って人を集めるのは正直「なんだかなあ」となる。自分の作品を面白いと思ってフォローしてくれる人はすごく嬉しいけど、今回に関しては全くうれしいと思わない。本意ではないのでフォローを解除してくださいと言っても、「圧倒的感謝だけでは申し訳ない」と解除せずにいてくれる人もいるので、それを無理に外せとまでは言えない。
③コレクション④対戦用に関しては、仕方がないよなあ、という思いが強い。コレクターにとっては収集こそがポケモンの醍醐味だろうし、対戦でいちいち努力値をリセットする煩雑さは僕も理解できる。だから、一概に否定することは僕にはできない。
ただ、もし少しでも困っているプレイヤーのことが気になるなら、1匹だけでも良いから他の方に譲って頂ければ、世界はほんの少しだけ住みよい場所になるのではないかと思う。たしかに1ボックスいっぱいに30匹の色違いムゲンダイナがいる景色は壮観だと思うけど、そのうちの1個を他の人に贈与しても、その1匹分の空白は決して未来のあなたを残念な気持ちにはさせないと思う。ボックスの右下にぽっかりと空いた穴は、あなたから他者へ送った心遣いの証拠になるだろう。と、それっぽいことを言っておく。ほーん。
それから、⑤なんとなくいっぱい集めてみた、について。「必要もないのに集めるな」と怒る人の気持ちもわかるけど、僕もなんとなく派の一人なので、むやみに攻撃的になるのは「ちょっと待ってよ」と言いたい。正論を振りかざせば振りかざすほど、相手は余計に頑なになるだろう。ましてや悪意を持っていないのに悪者呼ばわりされれば、いくら頭で正しいとわかっていても、どうしたって腹が立つものである。
もし僕の様に、なんとなくたくさん集めた人がいて、「考えてみたらこんなにいっぱい受け取れないや」と思ったら、1匹だけでも持っていない人に譲ってあげてほしい。僕が譲ることができず、未だにムゲンダイナを探している人がまだまだいる。そういう人が転売ヤーやフォロー&RTに手を出せば、彼らの思うツボである。つきつめれば、あなたが1匹ムゲンダイナを他者に譲ることで、世界から1つ転売を消すことができるのだ。そう考えれば、「まあちょっとくらいあげても良いかな」と思いませんか?あ、思わないって?そうですか、オウノウ…
結論:ポケモン公式が悪いけど
自己正当化を含めて色々と書いてきたけど、結局のところは公式が採用したシリアルコード形式というシステムの問題であると思う。ビクティニの時のように合言葉で受け取れるようにしておけば、こんな事態にはならなかったことは間違いない。
公式側も新作のプロモーションのためという理由があるので、すべての責任を押し付けるつもりはないけど、できることなら今からでも合言葉の公開や追加のコードを出荷するなど、対応をしてもらえるとありがたいと思う。
とはいえ、プレイヤーが公式に責任をなすりつけてふんぞり返っている場合ではない。一人でも多くのプレイヤーが色違いムゲンダイナを受け取れるように、コードが余っている人が譲るしかない。
「転売ヤーと同じだろ」と見ず知らずの人を非難することは簡単だけど、これまで書いたように人には色んな事情があるものであり、もらったものをわざわざ店に返しにいく人はいないだろうし、それで実際に助かっているプレイヤーもいるのだから、「ここはちとみんなで助け合おうや」と声を掛け合うしか現状を打破する術はない。
お前はいつも綺麗事ばかり言いやがって、と思う人もいるかもしれないけど、現実的に他に解決策がない以上は、綺麗事だろうが何だろうが構っていられない。目的は「現在のこの状態からひとりでも多くのプレイヤーにムゲンダイナを届ける」ことであって、そのための手段が綺麗事であってはいけない理由はない。それでも文句を言いたいのなら、どうぞ代わりの解決策を教えてください。
今回の配布について、様々な問題点を指摘することは大切なことだと思う。ただ、とりあえず今は攻撃的になることを控えて、まだ受け取れていないプレイヤーに手渡すことが最優先である。怒る気持ちはわかるけど、たくさん持っている人を無暗に刺激して意固地にさせても、良いことは何もないのだから。ほとぼりが冷めてから改めて問題点を洗い出しても遅くはないと思う。
今日は好きなヒロインについて盛大に語るつもりだったのに、何だってこんなことになってしまったんだ?どれもこれもぜんぶ妖怪のせいなら、世の中はもっと簡単になるのに。ほんとの話。