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秋の味覚、ギャンブルの味。

僕は大学受験に失敗した結果、第一志望でない大学の経済学部に入学し、何年か前に無事に卒業した。世の中には学歴に対して強いこだわりを持つ人がいるみたいだけど、僕はどこの大学だってだいたい似たようなものだと思っていたから、とにかく大学生になれるというだけで安心していた。学部の選び方だって、理科が苦手だから文系を選んだというくらいのいい加減さで、自らの適性とか将来の職業といったティーンエイジャーには難しすぎる問題は少しも考えずに、自分の学力で合格できそうな大学と学部を受験した。その結果として、僕は大学の4年間を特に興味も関心もない経済学を専攻して過ごすことになった。

僕は経済学を面白いと思わなかったし、特に熱心に勉強する学生ではなかった。むしろ積極的に授業をさぼって文学や哲学の本を読んでいたくらいだから、いったい大学に何をしにいったのかと聞かれたら、答えに窮するほかない。それでもGPA3.2くらいのそこそこので成績で卒業したこともあって、いくつか覚えていることもなくはない。そのひとつが金融論で、人間の投資行動には3つのパターンがあるということだ。リスクを好む人、リスクを回避する人、その中間をとる人、の3つである。この中であれば僕は間違いなくリスク回避型の人間である。安定したローリスク・ローリターンこそ正義であると思っている。損失を被るくらいなら何も得なくていい。何かを失うことの不快は、それと引き換えに何かを得ることの快をはるかに上回る。そういう意味ではフロイト博士が提唱した「人間の本能は快を得ることよりも、不快を避けることを選好する」という快感原則に忠実な人間である。

だが偉大なるフロイト博士が後年に「快感原則の彼岸」という論文で自ら提唱した説を超克したように、僕自身も自らのリスク回避的傾向を乗り越えて、中古ROMガチャというギャンブルに手を染めた。あらゆる学問は人間や事象を類型化しようと試みるが、生の人間は常に理論を超越していくものである。不要な支出やリスクを負うことを極度に好まない僕が、ガチャの魔力にとらわれて、自らの彼岸へと至る道を辿る。第1次世界大戦の帰還兵が夢の中で不快な戦場の情景を否応なく思い出すことを受けて、普段は快感原則に準ずるはずの人間がなぜ自らにとって不快であるはずのことを反復するのかを考察する、というのが「快感原則の彼岸」におけるテーマであったが、僕はそんな難しいことは考えずにROMガチャで得た戦利品を自慢していこうと思う。


僕が1か月間で購入した中古ROMは18本であった。もっとたくさん買ったと思っていたから、なんだか物足りない気分になる。でも幻や貴重なポケモンをゲットできたので満足している。

もっとも収穫が大きかったのが、はるとくんのサンのROMである。プレイ時間49時間・図鑑が60匹くらいだったので、まったくと言っていいほど期待していなかった。ところがこのROMは神ROMといって差し支えないほどの大当たりで、思わず泡を吹いて倒れそうだった。ボックスにはなんと映画「キミにきめた!」で配布されたテンセイざんマーシャドー及び同ホウオウが!さらにポケモンセンタートウホクで期間限定配布されたPCトウホクビクティニや、これも期間限定で配布されたメレメレ色違いカプ・コケコ、エーテル色違いシルヴァディもいて、ショッピングモールで思わず叫びだしそうになった。加えてサトシのピカチュウやリザードンなど貴重な配布ポケモンも入っていた。はると、ありがとう。

まさかのマーシャドー獲得
何これ?と思って調べたらけっこうレアだった
親名エーテルの色違いシルヴァディ
まさかこの後に剣盾でビクティニ配布があるとは…
それでも幻がいるだけで嬉しいですね
ちゃんと不思議な贈り物カードもあったので99.99%正規


その後、さすがにはるとROMほどの大当たりはひかなかったけれど、ちょこちょこ当たりがあったので紹介する。

アルファサファイアのさあやROMでは、図鑑も少なくストーリーもクリアしていなかったためはずれが濃厚だったが、手持ちにこの時点では手に入らないはずのパルキアがいるのが気になって、面倒を厭わず迷路のようなアクア団アジトを迷子になりながら抜け出してボックスまでたどりいた。

そこにはわずか4匹のポケモンしかいなかったが、なんとセレビィがいるではないか!セレビィ自体はVC版クリスタルで入手可能なのでそれほど珍しいものではないが、このセレビィは親名がアゲトとなっていて、ゲームキューブ版「ポケモンコロシアム」というソフトを全クリアして付属の拡張ディスクを使うと手に入る特別なセレビィである。今から自力で入手するには、そこそこの資金(拡張ディスクはハードオフで9000円で売っていた)と途方もない時間(ポケモンコロシアムを全クリアするのはけっこう手間です)をかけなければならないので、これはうれしかった。今では剣盾に輸送して活躍させている。

アゲトセレビィは剣盾で活躍中


サンのくろねこROMも良かった。はるとROMで入手済みではあるが色違いコケコとエーテルシルヴァディをゲット。
さらにはムーンのヨツバ★ROMにてテンセイざんマーシャドーの2匹目を手に入れた。


あと、前回改造が多くてひどかったと紹介したウルトラムーンのコロナマンROMにも色違いのガブリアス・イワパレス・ハスブレロがいて、おそらく正規と判定したのでありがたく頂戴した(それにしてもコロナマンという名前も含めて酷いROMだ)。

コロナマンのことはあまり信用していないが、
貰えるものはしっかり貰います。


結局当たりと言えるのは4本だったので(改造ポケモンがいたのでコロナマンROMは当たりに含めない)、確率的にはだいたい5本につき1本ということになる。しかし、以前にも言ったけど僕はけっこうしつこい性格なので、はずれROMもただではお釈迦にしない。サン・ムーンでは殿堂入りさえしていればマギアナを受け取れるので、5体くらいは回収した。さらに準伝説やUB、特に禁止伝説がいればそれも回収した。それらはポケモンホームのGTSで色違いポケモンと交換できる可能性があるからだ。GTSでの色違いは改造の可能性があるので慎重に行わなければならないが、ポケモンGO産かレジェンズ産であれば比較的色違いを入手しやすいので信憑性が高い。あとはポケモンホームの図鑑で未登録のものがいればそれも回収した。

「つくりもの」というマギアナに似つかわしくセンスが光るニックネーム。
幼稚なコロナマンとは大違いだ。



そんなわけで僕のROMガチャの戦利品は以上である。これを少ないとか物足りないと思うかは人それぞれだが、僕はけっこう満足している。所期の目的であったマーシャドーも2体入手できた。

ROMガチャに限らず、ガチャという行為には人間を魅了する魔力のようなものが備わっている。たとえ当たる確率が低くても、いやむしろなかなか当たりが出ないからこそ、当たりを引いたときの快感はたまらない。そして一度覚えた快感は忘れ難く、夢よもう一度と次のガチャを回してしまう。僕は今年の8月、ブックオフを見つけてはポケモンのソフトを買い、ブックオフがなければ遠路遥々歩いて中古ROMがありそうな店を探す毎日を送った。夏は暑く、額からは珠のような大粒の汗が吹き出たが、その時は次のガチャを回したくて仕方なかった。完全に中毒である。


最後に、僕がいかにしてROMガチャの魔力から抜け出たかを話そう。

ROMガチャに際して僕はあるルールを作っていた。高値のソフトを買う場合は所持していないソフトであることと、20%off以上のサン・ムーンを買うことである。特に後者のおかげで金額的にはかなり抑えることができたと思う。

そして何よりも、とことん自分の欲望に忠実になろうと決めた。やるからには徹底的にやってしまえ、と。ダラダラ続けるよりも、短い期間に集中してやりきってしまえばいつか飽きが来るだろうし、それで飽きなければひとつの才能である。そんな風に割り切って毎日のようにROMガチャを続けた結果わかったのは、リスク回避型の僕にはROMガチャの才能がなかったということだった。これで飯を食うことはできない。幸いなことに。

これで僕のROMガチャ戦記は幕を閉じる。今でもブックオフに行くと中古ROMを漁るが、かつてガチャに取りつかれた日々のように無性に欲しくなるということはない。夏の終わりと共に、ROMガチャの神様は僕の前から姿を消してしまった。ギャンブルには向いていない性格なのだ、きっと。

まだポケモン図鑑完成の話が終わっていないので、次は500年前のマギアナを手に入れる話をするつもり。




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