「好き」になったら!
好きなポケモンについて書く。前回にもちらっと触れたけど、僕は基本的に「ほしい」とか「好き」と言うのが苦手で、その結果として、これまでの人生でいろいろなチャンスを逃してきた。そして、この性格の最も残念なところは、他者とコミュニケーションをとることが苦痛になるという弊害を生むことにある。
僕は極度の人見知りで、知らない人を前にすると、冷凍させたアクエリアスのごとく(無理に溶かそうとしてペットボトルをガシャガシャ振ったことありますか?)カチカチに固まってしまう。生まれ持った性格なのか、後天的に身に着いたものなのかは定かではない。両親によると、幼い頃は陽気(素早さ↑特攻↓)で明るい子供だったらしいから、人生のどこかの時点でこんな根暗で話しかけにくい(全能力↓)人間になってしまったと考えられる。
初対面の相手との会話の糸口をつかむために、趣味や好きなものを聞く、というのが一般的な方法みたいだけど、僕はこれが苦痛である。こちらから相手の話を聞くことについては、全然かまわない。勝手に喋り続けてくれる人だと、気まずい沈黙がなくて楽である。
ところが困るのは、相手から「趣味は何ですか?」とか「よく聴くアーティストは?」とか「好きなものとかあります?」とか、こちらのことについて聞かれてしまうパターンである。この展開になってしまうと、さあ、たいへんだ。
「えー、あっ、ほ、読書とか」
「あの、、バンプオブチキンって 知ってますか?」
「いやっ、その、ええ、ぽ、ポケモンがっ!」
要するに「自己開示」が究極に下手である。インターネットで「人見知りを治す方法」みたいな検索をすると、だいたいこの「自己開示」をすることがポイントであると書いてある。自分が心を開くことで、相手も自然に心を開くことができる、ということらしい。
でも、僕は自分について話すことを異常なまでに恥ずかしいと感じてしまい、無意識のうちに警戒心を発動してしまう。結果として相手も僕に対して「話しかけづらい人だな」という評価を下して、会話が全く弾まないことになる。双方ともに不快な思いをすることになるので、本当に誰一人得をしない。こうやって改めて書いてみると、まるで損をするために生まれてきたみたいな性格をしている。
そんなわけで、僕の交友関係はひどく狭い。中学・高校時代からの親しい友人を除けば、日ごろ交流する人は、片手で数えても何本か指が余るくらい少ない。友人たちにおだてられてYoutubeに実況動画を上げるようになって、Twitterを立ち上げてみたものの、どんな風に絡めばいいのかわからなくて、未だに「ネッ友」みたいなものができない。「〇〇さんと焼肉!」みたな呟きをみると、どこか遠い星で起こった出来事のように思えてしまう。
面と向かって人と話すのは苦手な僕だけど、というよりも「だからこそ」なのかもしれないが、文章であれば割と素直に自己開示ができるみたいだ。普通は女の子の話など到底できないけど、文章という形であれば「コトネちゃん最高!!!」「メイちゃんは正義」と叫ぶことができる。どうしてかはよくわからないけれど、人間にはそれぞれ向き不向きがあるのだろう、としか言えない。
それから、現実の人間の話をすると、どうしても「ごみまさが〇〇のこと言ってたよ」みたいな思わぬ形で相手の耳に入ってしまって、関係がぎくしゃくすることも、まったくないとは言い切れない。だけど、2次元の女の子ならそういう心配もいらないので、大手を振って語ることができる。唯一の弊害は「キモオタ」というレッテルを貼られて、現実の女性からまったく相手にされなくなることだけど、二十数年も独り身を続けている人間からすれば、取るに足らない問題である。
というわけで、ここからは好きなポケモンについて語る。
まずは嫁ポケのグレイシア(♂)から。
実はグレイシアのことを始めから好きだったわけではない。ランクバトルを始めるにあたって、なんとなく気に入ったポケモンを6匹選んだら、その中に入っていたというだけだった。むしろ、一緒に入っていたアローラキュウコンのほうが好みだったくらいで、なぜグレイシアをPTに入れたのかは思い出せない。
グレイシアはタイプも種族値も、非常に使い勝手の悪いポケモンであり、ブイズの多くがそうであるように、あまり対戦に向いているとは言えない。氷タイプ自体は、攻める上では抜群をとれる相手が多く非常に強いけれど、鋼と炎タイプで簡単に止まってしまう明確な弱点がある。それゆえ、氷タイプのポケモンをPTに入れるよりは、一般的には技範囲を補完するためのサブウェポンとして採用されることが多い。
しかもグレイシアは、これまたブイズの特徴なのだが、技範囲が非常に狭く、メインの氷技以外に覚えられるのが、せいぜいゴーストタイプのシャドーボール程度で、威力も低いため裏への圧力がかけられない欠点を持つ。せめて目覚めるパワーや水の波動があればまだしも、剣盾では両方とも没収されてしまったので、余計に範囲が狭くなってしまった。
グレイシアの種族値は特攻がトップクラスに高い上に、剣盾ではフリーズドライも習得して水タイプに圧力をかけられるようになった。あとはせめて素早さが高ければ、高速アタッカーとして使えなくもないけれど、残念ながら素早さは中途半端だし、耐久よりの種族値も昨今の火力インフレ下ではあまり役に立たない。
氷単タイプというのは、守りの面でも非常に弱い。岩・格闘・鋼・炎・といったメジャーなタイプを弱点に持つほか、半減できるのも同じ氷タイプだけなので、サイクル戦には容易に組み込めない。そのためグレイシアをメインに活躍させるためには、やむを得ず一方通行で対面的な構築を組まざるを得ないのだけど、選出を誤ると挽回しにくい対面構築は勝率が安定しない。実際に上位ランカーの多くはサイクル構築を使用しており、初手の出し負けを立ち回りでカバーすることで、相性が不利であっても立ち回りでカバーする、という技術で勝率を安定させている。
グレイシアの弱みばかり書いてきたけど、何シーズンか前の禁止伝説2体環境でも、グレイシア入りでレート2000を達成した方もいるので、多くのポケモンはトレーナーの力量次第で輝かせることができることも事実である。
こんなに弱点ばかりが目立って、対戦には向いていないポケモンをなぜ好きになってしまったかというと、僕がグレイシアを全然活躍させてあげられなかったから、である。他のポケモンはそれなりに役割を持たせることができたのに、グレイシアだけは選出することすらままならず、試合に出しても全く何もすることができなかった。
そのまま諦めて違うポケモンを使うという選択肢もあったはずなのに、僕はグレイシアを活躍させられないのは自分の力不足だと思って、絶対にPTから外さなかった。そして「こだわりスカーフグレイシア」という、今思えば完全におもちゃみたいな型を採用して、サンダーやランドロスを冷凍ビームで奇襲する役割を見出した。
それ以来、僕はシリーズ13で幻統一をやるまで、常にグレイシアと一緒にランクバトルに潜り続けてきた。一目惚れ、というものではなかったけれど、一緒にいるうちにすこしずつ愛着が湧いてきた。負けが込んでもう対戦をやめようかと思った時に、グレイシアは「相棒パワー」としか呼べない、あり得ないレベルでの強運を発揮して連敗を止めてくれた。キャンプでも色んな場所にいって、いっぱい遊んで、たくさん話をすると、あの可愛い声で応えてくれた。
グレイシアはそのクールで美しい見た目から、どちらかといえば冷たい印象を持たれるけれど、実際にはそんなことはない。むしろ人懐っこいくらいだ。呼べば嬉しそうに走ってきてくれるし、よく笑う。こんな可愛いポケモンを差し置いて、おじさんみたいな顔をして相手のポケモンを威嚇するあいつや、混乱や麻痺を引き起こす不穏な運ゲー鳥を採用する意味が僕にはわからない。ランクバトルでみんながあんな物騒なやつらを使うのをやめれば、もっと平和で楽しい対戦環境になるのに、と思う(おじさんや鳥が好きな方がいたらすみません。ビジュアルは全然嫌いじゃないので、対戦における性能を少し落としてください。)。
次はラティアス。ラティアスも見た目が可愛いポケモンだが、僕はRSE世代=アドバンス・ジェネレーションであるにも関わらず、つい最近までラティアスがそんなに好きではなかった。「水の都」は見たはずなのだけど、幼かったこともあって、ちゃんと物語を覚えていなかったことも理由である。それからルビーでは「むげんのチケット」がなければラティアスが出現しなかったため、そもそもラティアスとの接点があまりなかった。
そんな僕も、ついこの間リバイバル放映された「水の都」を観に行って、ラティアスのファンになってしまった。あの映画の物語自体はちょっとお粗末というか、描かれていない部分が多すぎるなという印象が拭い切れないけれど、音響や演出といった面では非常に優れているし、何と言ってもカノンに扮したラティアスの動きがあまりに魅力的すぎるので、良い映画である。ラティアスの声も可愛かった。
サトシにキスをしたのはカノンかラティアスか、という古典的な問題も、今回配布されたラティアスが「てんしのキッス」を覚えていることから決着したと思われる。そもそもサトシとカノンは劇中でほとんど会話をしていないから、急にカノンとサトシの関係を仄めかされても不自然な感じがする。きっと当時の気の利いたスタッフが「こんな風に謎めいて終わったら観客が喜びますよ」と言って、それが採用されたのではなかろうか(真相は知らない)。おかげで20年間論争が続くことになったのだから、ポケモン映画もつくづく罪づくりだ。
でも、「水の都」は人気のある作品でもあるし、せっかくならリメイクして、もっとサトシとカノンの会話シーンを増やしてほしいなあとも思わなくもない。そうしたら、カノン-ラティアス論争も再燃して楽しそうだ。
ホウエン世代の話を続けると、ベタだけどサーナイトも好きだ。人間のような美しい容姿に加えて、初登場のルビー・サファイアでは出現率が低いため、レア感が高いことも魅力だった。サーナイトは図鑑に「パートナーを守るために全身全霊を尽くす」みたいなことも書かれていて、信頼関係を大切にするところも評価が高い。当時の小学生はみんなやっていたと思うけど、催眠術+夢食いのコンボを使って遊んでいた。
見た目がいいポケモンばかり話していると面食いだと思われそうだけど、ラグラージもルックスが好き。今のラグラージは四つ足だけど、RSE時代のラグラージはなんと2本足で立っていたのだ。僕はルビーでキモリを選んだのだけど、友達がラグラージを使っているのを見てそのビジュアルがうらやましかった。あの肩の光沢というか、テカリ具合が結構好きだ。それに弱点が1つしかない水・地面タイプというのも格好よく見えた(対戦を始めてから少し嫌いになりかけたけど、グレイシアでワンパンできるから許せる)。
ちなみに画像のラグラージは色違いでマスターボールに入っているけど、もちろん当時こんなラグラージは存在しません。既出の「ジラーチ受け取り未遂事件」で僕が落ち込んでいるのを見た父が、ヤフオクで「全ポケモンが入ったサファイア」を購入してくれた中に入っていたものだ。つまり”改造”なので、今の世代に連れ来るのはさすがにまずい。今でこそ”改造”は当たり前のように否定されるけど、僕が小学生だった時代には改造ツールのPAR(プロアクションリプレイ)が普通に(?)販売されていた時代なので、それほど珍しいものではなかった。
そもそも小学生には”改造”なんてややこしい話はわからないので、みんなに自慢して「すげー!!」みたいなことをやっていた。そのせいなのか、未だに僕は改造に対して抵抗が薄い(もちろん改造なんて絶対にやらないしやったこともないし人にもすすめない。人によっては”改造”という言葉を聞いただけで拒絶反応を起こすこともあるので、それに比べれば、という意味です)。
さすがに時効であるし、故意ではなかったものだったので話しをしたけど、明確に法律で禁じられている行為なので、みなさんは真似しないでくださいね。どうしてもやりたくても、僕はどうぞとは言いません。
最後はポケモンGOで相棒にしているアシマリ。第7世代はエアプなのだけど、アシマリ系統のビジュアルが好きで、ランクバトルでも使ったことがある。それにネーミングもおしゃれで、特に中間進化のオシャマリなんて最高ですよね。最終進化のアシレーヌは見た目も良いし、種族値も悪くなく、タイプも水・フェアリーと優秀なので、対戦でもしばしば活躍している。今は相棒のアシマリ(個体値が微妙なんです…)を進化させるか否かで悩んでいる。
好きなポケモンは他にもたくさんいるけど、とりあえずこの辺りで終わり。
世の中には相棒のポケモンができなくて困っている人もいるみたいだから、グレイシアに出会えたのは幸運だったのだろう。
好きなポケモンがいる生活というのは、良いものである。グッズを見つけるだけでも嬉しくなるし、一緒に旅をするともっと楽しい。風当りばかりが強く生きづらいこの世界において、好きなものがあるということは、小さいけれども確かな幸せだ。推し活はいいぞぉー。
次は何の話をするのか決めていないけど、もう一度対戦の話をするかもしれない。