2024年の中国市場をどう見るか
1月23日の上海市の政府活動報告で2024年の上海GDP成長率目標を5%前後とすると発表されました。これとあわせて、地方一般公共予算収入を5%前後、全社会研究開発費支出をGDP対比4.5%前後、都市部の失業率を5%以内、消費者価格上昇率を3%前後とすることも合わせて発表されています。これを達成できるかどうかを考えるにあたり、2023年の実績を見てみましょう。
2023年の上海GDPは5%増、地方一般公共予算収入は9.3%増加し、消費者物価は0.3%上昇し、都市部の調査失業率は平均4.5%ということでした。住民の1人当たり可処分所得は8.5万元で、これは6.6%増加であったとのこと。これだけ見ると2023年はまずまずの状況だったといえます。しかし、周りに聞く限り景気に関してはあまりいい話を聞きません。一体全体どうなのでしょう。数字で見ていきましょう。
まずは消費者物価指数から。2023年1-12月の全国と上海の数字を引っ張ってきました。グラフを見る限りはまさに右肩下がり、デフレっぽい感じがします。全国で見ると7月及び10月以降、上海で見ると4・5月及び11月以降が前年比マイナスとなっています。
これだけ見ると、先行きに明るさがあまり感じられません。もう一つ、消費の勢いを見るうえで社会消費品小売総額を見ていきましょう。
上海の夏場がかなり落ち込んでいますね。絶対額だとイメージがわきづらいと思いますので、前年同期比増加率で見てみましょう。
4・5月がめちゃめちゃ膨らんでいますね。これは単純にその前の年度の同時期がさっぱりだっただけの話です。とはいえ、増加率の印象は強く、この時期あたりから盛り返してくると多くの企業・個人が思っていたと思います。ところが、思ったほど盛り上がらないまま年度を終えました。
うーん、やっぱり勢いが感じられない。そうだ、株式相場を見てみよう!最近は毎日のように日本株絶好調のニュースが流れていますが、中国はどうでしょう。上海総合指数の推移を見てみます。
長期トレンドとして上がっているのは分かりますが、2021年から2023年にかけては下落基調、そしていまもなお下落基調にあります。中長期的には上昇トレンドにあるとはいえ、ここ最近の中国株式市場の低迷ぶりを見ると、少なくとも短期目線では何もしないほうがよさそうです。
色々見てきましたが、こういう状況の中で、外資はどれだけ中国に対して投資を行ったのでしょうか。
まずは、上海における2023年の新設外商投資企業の数値を見ていきましょう。
これが多いか少ないかでいうと、1-11月累計で前年比でプラス33.8%という結果です。内訳でいえば合弁(ここでは中外合弁)がプラス49.6%、独資がプラス18.4%となっています。合弁のほうが多いのですね。
新設の数こそ増加していますが、実際外資使用額は前年同期比▲1.4%となっています。思ったほど減少していません。上に見た社会消費品小売総額みたく、大きく落ち込んだ月があったにもかかわらず、今一つ増やせなかったと考えるほうが妥当のように思います。業界別に見ますと、実際外資使用額の上位三業種は、情報伝送ソフトウェア・情報技術サービス業(前年比+14%)、リース・ビジネスサービス業(前年比▲23.8%)、科学研究と技術サービス業(前年比▲20.3%)といわゆるIT・ソフトウェア関係以外はマイナスとなってます。地域別で見ますと、トップ3は香港(前年比▲8.5%)シンガポール(前年比▲2.9%)、日本(1.8倍)となっており、日本の増加がかなり多いことがわかります。なんだかんだで昨年の日本の対中(対上海?)投資意欲は強かったのかあ。そういえば、私のところでも上海における新設の業務がありましたが、これを反映していたのかもしれません
次に全国を見ていきます。2023年の全国の新設外商投資企業は53,766社(前年同期比+39.7%)、実際外資使用額は前年同期比8.0%減となっており、過去最高水準と紹介されていますが、減少しています。報道では数が増えたことが強調されていますが、実際外資使用額は減少しています。
業界別に見た実際外資使用額は次の通りです。
ハイテク産業の投資導入額は実際外資使用額の37.3%を占め、過去最高を更新しています。金額が減少している中でもハイテク産業に対する投資額は大きいです。建設業がなぜか大きいのですが、以前契約していたものを2023年に消化したということなのでしょうか。
地域別で見ますと、メディアで紹介されていたのは次の5か国。上海では日本が1.8倍とかなり増やしていたのですが、全国だとこの5か国にはリストアップされていません。ただ単に紹介されていないだけなのか、日本企業の投資は上海及びその周辺に集中していることなのか。
つらつらと書いてきましたが、2024年はどうなるでしょうか。産経新聞では中国日本商会が行ったアンケートをもとに『中国進出日系企業の5割弱が対中投資を縮小方針 在中企業団体の会員調査』という記事を掲載していますが、要するに中国に対する見方は前向きと後ろ向きがそれぞれ半々、判断に迷うところですね。とはいうものの中国の市場が大きいことは間違いないので、様子を見つつ、タイミングを計りながら攻めていくというのが多いのではないでしょうか。タイミングを計るうえで市場がどうなっているのか、情勢がどうなっているのかといった材料が必要になります。そういう時は是非お声掛けくださいね!(さりげなく宣伝)
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