見出し画像

2022年参加アーティスト②浅沼圭さん・奥澤秀人さん【AIR日高村12日目】

こんにちは。フリーキュレーターの牛込麻依です。
2023年10月に参加しているAIR日高村の活動レポートをお届けしています。

2022年のAIR日高村

今回はAIR日高村2年目となる2022年参加アーティストのまとめ第二弾ということで、浅沼圭さん、奥澤秀人さんのお二人を紹介したいと思います。お二人はユニットとして2022年11月に滞在されました。

2022年度参加アーティスト・浅沼圭さん・奥澤秀人さん

2022年度のプログラムで3組目となるアーティストは、ダンサー・振付家の浅沼圭さんと、元シルク・ド・ソレイユのパフォーマー奥澤秀人さん。浅沼さんが最初にプログラムに申し込み、後から奥澤さんを誘う形で、2名での参加となりました。

浅沼圭さんプロフィール
ダンサー、振付家。
東京出身。これまで森山開次、串田和美、広崎うらん、矢内原美邦、谷賢一など、ダンス・演劇・サーカスの演出家作品に出演、国内外のツアーに参加。
2010年まで新体操の選手として、数ある賞を受賞し、日本代表にも選出される、北京オリンピック強化選手。引退後はコンテンポラリーダンスに魅了され単身渡英、ダンサーへ転身。現在は舞台・映画・CM・MV、アーティストとのセッションの出演を中心に振付、ステージングでも活躍。ダンサーという枠を超え、身体表現を軸に様々なフィールドで活動をし、また自身の創作活動もしている。
2022年11月日高村のアーティスト・イン・レジデンス(注)に奥澤秀人さんを誘い参加。壬生農園にて2週間“ダンサー×生姜農家”として活動した。

nossonインタビューより

この、滞在制作を求めない大変興味深いアーティスト・イン・レジデンス日高村に参加できたことに心より感謝しております。大自然の環境の中で自分の活動と他の仕事をしながら、身を置くことは、はじめてで、これまでの経験の中で奥深い体験になりました。まず、ダンスすることに仕事、自然の中に身を委ねることは自分自身の生活の中で根底にある一部分と考えており、それが2週間の体験で”どんな身体になるのか?”とても楽しみでした。また、1人サーカスパフォーマーのアーティストを追加してもらうという無理なお願いから始まり、練習環境を整えてくださったり、また期間中にもさまざまなリクエストを柔軟にご対応していただきましたこと、感謝申し上げます。生姜収穫仕事はとても大変‼︎と村の方々、口を揃えて仰っており、とてもドキドキしていましたが、体勢を変えたり、ストレッチしたり、身体のリズムを意識したりなど試行錯誤していたら日に日にコツを掴み、自分の身体に効果的なやり方を見つけることができました。お陰様で、東京に帰ってからはとても体が強くなった感があり、本当に畑仕事は足腰が強くなるんだと実感しました。また、一緒に作業されているアルバイトのお爺さんお婆さんとも休憩中話す機会があったりなど普段、東京では話さないような年齢層の方とも交流することができ心温まりました。壬生農園の壬生さんも私たちの活動に大変ご理解のある方でのびのびと普段の活動もさせていただきました。アーティストの活動の方は能津小学校の体育館を手配していただき、そこで日々、生姜の収穫仕事が終わり次第向かう形でしたが、正直なところ、2週間の中で生姜収穫仕事と練習はとてもハードなスケジュールでした(笑)。基本的に練習は開放し、地域の方や能津小学校の職員・子どもたちがチラチラと尋ねてきてくれました。初めて見るものにどう興味を持ってもらえるのか少し気に掛かっていましたが、皆さんとても気さくに開催する提案をさせていただき、初めてダンスする人々がほとんどでとても楽しんでいた様子でした。最後には能津小学校で講和とちょっとしたパフォーマンスをする機会があり、舞台など見たことない子供達が、物珍しそうに見ていたのがとても印象的でした。本来のアーティスト・イン・レジデンス日高村の目的以外にさまざまな体験をさせていただき、能津小学校校長先生はじめ、小学校の先生方、壬生農園さんには心より感謝しております。アーティスト・イン・レジデンス自体に参加することは初めてのことでしたが、今回こちらを体験させていただいてみて、地域によって様々な形があること、地域の方々の受け入れ態勢、作品制作など、アーティストが地域へ滞在することの意味を考えさせられ、異なった文化や環境で、価値観などの相違を改めて感じた時間になりました。

活動レポートより


奥澤秀人さんプロフィール
2005年日本人初、カナダのサーカス集団「シルク・ドゥ・ソレイユ」日本国内オーディションを受け本社でのトレーニングプログラムを経て入団。14年間鉄棒のスペシャリストとして世界各国をツアーし、計4000回以上のステージに立ち延べ800万人以上の人々に感動を与えて周った。日本での公演は2009年ダイハツ コルテオ、2016年ダイハツ トーテムに参加している。2020年世界的パンデミックとなり帰国後元Kバレエカンパニー プリンシパルの白石あゆ美と組みエアリアルと身体表現のコラボレーションアクトを発表、他にもシルホイールを 使った演目も行う。未来ある若者や子供たちに夢や希望を持ってもらいたいと思い、自分の失敗体験や怪我の経験を元にした講演活動も行っている。

nossonインタビューより

誘ってくれたダンサーの圭さんから初めて日高村と聞いて聞いたこともない村の名前で場所がどこなのかさえも分からなかった。何やらアーティスト・イン・レジデンス日高村と言うプログラムがあると言う話で誘っていただいて二つ返事で参加することになりました(笑)。この日高村という場所は高知県にあって自然いっぱいなところで何よりも近くを流れる仁淀川の水の綺麗さには感動した。それから村人の方々は気さくな人が多く、気軽に話ができて楽しかったです。色々な出会いに感謝の滞在でもありました。滞在場所はとても静かで暮らしやすい場所でした。夜になるとあたり一面暗闇の世界で星が綺麗に見えて、聞こえる音は虫の音くらいでした。都会に住んでいる人にとってこの暗闇だったり静けさだったりはなかなか味わえないのでかなり貴重な体験になるのではと思います。ただ、場所的に車がないと買い出しに行くのも畑に行くのも一苦労だと思いました。受け入れ事業者の壬生農園さんにも大変よくしていただき楽しく毎日作業できました。今まで生姜はスーパーで並べられているものしか目にする機会がなかったので畑での作業は最初は体力、体勢的にきつかったが何日かすると筋肉痛も和らぎ慣れてきました。ただ作業スピードや正確さは毎年作業している地元の方に到底及びませんでした。この作業を一つの畑が終わるまで続けてて、終わったらまた次の畑へという感じで作業が進められていきました。一つの広い畑での収穫が全て終えるたびに達成感がありました。生姜はこうやって畑でできていてここからいろんなプロセスを経てスーパーの棚に並べられるんだと学びました。これ以降スーパーで生姜を見るたびに日高村で体験させてもらったことを思い出します。それから滞在中に能津小学校の参観日に合わせてパフォーマンスの披露と公演をやらせていただき子供達にも新しい刺激が伝わって何かを感じてくれたらいいなと思いました。

活動レポートより

浅沼さんたちの受け入れ事業者となったのは、生姜を育てる壬生農園さん。11月はちょうど生姜の収穫時期で繁忙期。壬生農園としてはとにかく人手が必要な時期なので、アーティストが来て手伝ったことで助かったそうです。特に、体を資本とするダンサーさんだったので、相性は良かったことでしょう。

滞在中は、1日中農作業をして2時間ほど練習をする日と、半日作業で午後練習する日があったようです。能津小学校の体育館を利用して、ダンスやサーカスの練習などで体を動かし、その様子を公開されていたそう。

近所の方をはじめ、先生方、子供達が覗きに来て、一緒に踊ったり、体を動かしたりと、直接的なコミュニケーションを取られていました。

AIR日高村のプログラムは成果発表の義務がありません。その中でも、自分達の技術を使って地域の方と繋がる活動をされていたのが印象的です。色々な方にお話を聞く中でもお二人の名前が出てくることが多かったです。

滞在中には地域の神社でお祭りがあって、そこのステージに飛び入り参加してパフォーマンスされた、というエピソードも。地元のお婆さんが、「ダンスとかはよくわからないが、世界を相手にしてきたプロで、すごいことはわかる」とおっしゃっていたそうです。

日高村はとても暮らしやすいところ。でも、自分から積極的に動かないと、芸術に触れられる機会はほとんどありません。

そんな中、日常に(小学校の体育館に)プロのダンサー、パフォーマーが来てくれて、一緒に体を動かしてくれる、というのは村の人々にとって途轍もない、貴重な経験だったことでしょう。

浅沼さんがインタビューの中で以下のように話しています。

私、整ったところに、水滴を垂らすような行為が好きなんですよね(笑)
わくわくすることって生きていく上で必要なエネルギーの一つで、何か生まれる瞬間でもある。私が子どもの時に経験した「世界が広がった瞬間のあのわくわく」を、今の子どもたちにも知ってほしいんです。そのために、私ができることは献身的にやろうと思っていました。

そして、伝承していきたいんです。
私たちのような職業は特に人口が少ないので、この出会いは最初で最後かもしれないという思いも常にあるので。

nossonインタビューより

同様に、奥澤さんも。

私の地元の群馬や、今回の日高村で公演した時にも思ったのですが、地方に行くと私みたいなパフォーマンスを見たことない人も、こういう仕事をしている人がいることすら知らない人が多いんです。

さっきお話ししましたが、夢中になれることを見つけて欲しい。だからなるべく選択肢は多い方がいいと思うんですよね。知らないということは、選択肢にすら入らないんです。なんなら、選択肢がないってこと自体にも、気がついてない人も多いかもしれません。

広い世界に目を向ければ、いろんな生き方をしている人がいっぱいいる。それを知るきっかけを作れたらいいなと思います。私や仲間のパフォーマーと一緒に日高村に来て、村民の皆さんと交流ができたり、公演ができたらいいなと思います。

nossonインタビューより

AIR日高村のプログラムが村に及ぼす影響の一つは、「子どもに広い世界を見せて、選択肢を広げること」なのかもしれません。もちろん大人もですが、より影響を受けやすいのは、きっと子供世代。

普段の生活で出会うことのできないアーティストという人類に日常の中で出会い、交流し、その出会いがきっかけで、新たな世界が広がる。選択肢の広がりを知る。

単純に農家さんにとっての労働力として人が必要なのであれば、アーティストである必要はない。ここに、アーティストを地方に呼ぶことの理由が詰まっている気がします。


大野くわ製造所見学

本日午前中は、日高村の村の駅からほど近くにある大野くわ製造所に見学に行ってきました。村唯一の鍛冶屋としてくわの製造・修理などを中心に鍛冶仕事をされていらっしゃいます。

飛び散る火花がかっこいい
こちらが燃料
800度以上の炎で金属を温め、形を整えていきます
マシンで叩いているところ




いいなと思ったら応援しよう!