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アーティスト・イン・レジデンス日高村とは何か【AIR日高村14日目】

こんにちは。フリーキュレーターの牛込麻依です。
2023年10月に参加しているAIR日高村の活動レポートをお届けしています。

仁淀川散策

最終日は車で45分ほどのところにある仁淀川の名スポット、にこ淵へ。最終日にふさわしいとても美しい絶景を見ることができました。

アーティスト・イン・レジデンス日高村まとめ

今回、私はキュレーターとしてこのAIR日高村に参加させていただいています。制作義務のないレジデンスのプログラムであったため、どんな滞在にしようか迷ったのですが、「架空の展覧会を日高村で開催するならばどう企画するか」という目標を掲げて参加しました。

そのためのリサーチとして
・日高村がどんな場所なのか
・AIR日高村のプログラムはどんなものなのか
・過去参加されたアーティストはどんな方々か
・過去受け入れされた事業者はどんな方々か
・過去受け入れされた事業者はどんな感想を持っているのか
などを調査してきました。

順番に整理していきたいと思います。

日高村はどんな場所か

日高村村史を読みました

高知県高岡郡にある日高村は、高知市街地から車で約30分の場所にある、アクセスの良い場所にあります。

日本一の清流と呼ばれる仁淀川と、日下川に挟まれており、日照時間が長く、朝晩の寒暖差が大きく、降水量も多い特徴があります。この気候に適した農産物として、フルーツトマト、茶葉、生姜、いちご、ピーマン、なすなどの栽培が盛んです。

過去何度か水害にあった場所でもあり、村史にはその歴史が記載されていますが、近年は公共工事の普及によって村は守られています。

行政の中心である日高村役場は、とても積極的に活動しており、我々の滞在したEat & Stayとまととの設立や、地域おこし協力隊の誘致、村まるごとデジタル化政策など様々な地域おこしの活動をされてきています。現在日高村の地域おこし協力隊は20名。任期後の移住定着率も高く、たくさんの方が精力的に活躍されています。

また、地域のお母さんたちのおせっかいから始まったNPO法人日高わのわ会によって障害者の方が地域と共に生活したり、年配の方のフォローが手厚いなど、とても暮らしやすい環境が整っています。一般社団法人nossonは日高村の発信に長けており、その魅力を外部へ伝えて、それが新たな移住者を呼び込むことに繋がっています。

行政と民間とが協力し、少子高齢化・過疎化先進国である高知県の中でも自分達の村の生活を豊かにしていこう、という気概のある、勢いのある自治体だと思います。

AIR日高村のプログラムはどんなものなのか

アーティスト・イン・レジデンス日高村(AIR日高村)は、2021年度から始まったプログラムで、地方創生推進交付金を使っています。文化庁系の補助金ではないので、他エリアでよくあるような、アーティストに制作発表を課すプログラムではないのが特徴です。

元々、村内の農家さんから「繁忙期に人手が足りない、スポットで手伝ってくれる人はいないか」という相談があったのもプログラムが始まったきっかけとのこと。農家さんの人手不足解消も目的の一つとなっています。

アーティストは村内の宿泊施設及び移住お試し住宅に14日間滞在します。有報酬の場合はその中の10日間ほどを農家さんの元で働き、無報酬の場合は2〜3日間働きます。

「農業×アート」というのがAIR日高村の特徴の一つです。アートを通じて地域の方々と交流するのではなく、農業を通じて、一緒に作業をする中で交流を深めていきます。地域の方々の日常の中に、アーティストが入り込む形です。

過去参加されたアーティスト、事業者はどんな方々か

過去参加されたアーティストは画家、ダンサー、舞台作家、パフォーマー、写真家など様々な経歴の持ち主。お話を聞く中で相性が良かったのは、生姜農家×ダンサー&パフォーマートマト農家×画家だったようです。

生姜農家さんでは、11月ごろに収穫の時期を迎えます。この収穫作業がとにかく人手が必要で、全身運動になります。ここに、普段から身体を仕事道具としているダンサー&パフォーマーの方々が助っ人として入ることで、農家さん側には人手確保のメリットが、ダンサー&パフォーマー側には身体の使い方を学んだり、足腰が鍛えられたりするメリットが生まれていました。

トマト農家さんでは、葉の選定や実の収穫に、センスや技術が必要になります。農家さんが見せた見本をしっかり観察し、手先を器用に使って模倣する技術が問われます。こういった意味で絵描き・画家の方が相性良く、農家さん側には人手確保のメリットが、アーティスト側にはアーシングと観察眼を磨けること、スケッチの材料が手に入ることなどのメリットが生まれていました。

そもそも、農業とは、アートに非常に近いことをやっているようです。毎年作っていても、「全く同じものは作れない」。でも、「どうにかいいものを作りたい」という思いで、0から1を作り出している美しい造形のものが高く取引されるため、一つ一つ丁寧に、時間をかけて育てている。

農家さんの考えていることはアーティストの考えることとも近く、親和性があったのではないでしょうか。

過去受け入れされた事業者はどんな感想を持っているのか

受け入れ事業者の方々は、皆さんコミュニケーションが高く、外部の人の受け入れに理解のある方々。2週間という短い間での助っ人でも、皆さんとても役に立ってくれたという感想を持たれていました。

また、子供や地域の方を巻き込んで開催されたワークショップや講演に関してはとても良い機会だったと喜んでいました。普段の生活の中でできないことができる機会、特に子供にとっては、AIR日高村のプログラムを通じてアーティスト(普段接することのない人)と交流できるのが、地元住民にとってのメリットなのかもしれません。

AIR日高村のイベントを企画するなら

当初の予定では、いかにこのAIR日高村のプログラムをわかりやすく伝えるか、そして、過去参加されたアーティストさんについてわかりやすく伝えるかに焦点を当てた展示にしようと思っていましたが、この14日間の滞在を通して、180度方向性が変わりました。

焦点を当てるべきは、「人と人との交流」でした。

AIR日高村の滞在の中では、アーティストたちは、「アートの専門家」として交流したのではなく、「1人の面白い人間」として農家の方々と交流したのだと思います。

その中で仲良くなり、「また日高村に帰っておいで」という誘ってもらえるほど仲を深めた方もいます。

これまでのAIR日高村をまとめるようなイベントの機会がありましたら、彼らのアーティストとしての成果やアウトプット(ダンス、パフォーマンス、絵画、写真)なども展示したいですが、それよりも、「アーティスト自身がもう一度日高村に来て、農家さんたちと再会する」ことに注力した方が、喜ぶ方が多そうです。

私たちキュレーターのできることは、日高村の方々に喜んでいただくイベントを作ること。そのためには、同窓会のような、再会の機会をコーディネートする方がいいのかもしれない、という学びを得ました。

14日間の滞在の中で、たくさんのことを学びました。
ご協力いただいた皆様に感謝を申し上げます。
私自身もまた日高村に遊びに来たいと思える、素晴らしい14日間でした!





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