メキシコで発生した大停電について
2020年12月28日(月)午後2時28分、首都メキシコシティを含む12州で1,030万人が影響する大停電が発生した。停電した需要は8,698MWであり、これは当該時刻の需要の26%に相当する。停電発生時点の需要は31,789MWであった。
1. 時系列
メキシコ国立エネルギー管理センター(CENACE)が公表している停電に関する情報、12月30日にCFEがオンライン上で記者会見した際に公表した情報を整理すると、時系列は以下のとおりである。
・午後2時27分 Lajas変電所(ヌエボ・レオン州)とGüémez変電所(タマウリパス州)間を接続する400kV送電線のうち1回線が計画外停止した。
・午後2時28分 27分に停止した400kV送電線のもう1回線が計画外停止した。
↑ Lajas変電所とGüémez変電所を接続する400kV送電線2回線(Googleストリートビューより。画像をクリックすると、ページがGoogleマップに遷移します。)
・この400kV2回線送電線の停止により、周波数は61.82Hzに上昇、火力電源と再エネ電源側で周波数上昇リレーが作動、9,262MWの供給力が脱落した。
・電源側でOVRが作動し供給力が脱落した影響で周波数が58.9Hzに急低下。今度は需要側の自動負荷遮断動作が行われ、8,696MWの需要が停電した。
・午後2時33分 CENACEはCFEと連携して復旧作業を開始。
・午後4時12分 停電は解消された。
2. 送電系統停止事故の原因
この送電系統の事故は、タマウリパス州Padilla周辺で発生した山火事(30haを焼いた)によるものであったことが判明している。
メキシコ合衆国大統領報道官ヘスス・ラミレス・クエヴァス氏は31日に現地の空撮動画をTwitter上で公開した
3. 停電発生中に追加的に発生した供給支障
①Jerónimo Ortiz Martínez変電所(デュランゴ州)とFresnillo変電所(ザカテカス州)間を接続する230kV送電線の停止
②MazatlánDos変電所(シナロア州)とTepicDos変電所(ナヤリット州)間を接続する2回線400kV送電線の停止
③TapachulaからグアテマラのLos Brillantesを接続し、中央アメリカとの国際連系線機能を負っている400kV送電線の停止
4. 発電所の停止状況
CFEは12月30日にTwitter上で、停止した発電所がLNGコンバインドサイクル11か所、地熱発電所2か所(Humeros、Azufres)、小水力発電所4か所、石油火力発電所(Mazatlan Power Station)と公表した。
CFEが有する計画外停止した電源の設備容量は1,218MWであり、うち1,084MWは事故点から北西側のLNGコンバインドサイクルだった。また、4,084MWはCFE以外の発電事業者の電源であった。
事故発生時点のVREの出力は8,877MWで需要は低く、VREの出力比率は28.13%にも達していた。CFEの公表情報では、VREが脱落したといった情報はない。
CFEの公表では、「高い再エネ比率(と、おそらくN-2事故発生)が系統の不安定さを引き起こした」と記載されているが、どのような根拠に基づき「系統不安定」との用語を利用しているかは言及がなかった。
尚、事故発生後、6か所の水力発電所(Angostura, Manuel Moreno, Aguamilpa, Zinapan, La Yesca, Carlos Meléndez)が順次並列している。
情報が判明次第、引き続き逐次更新したい。