知らない土地の知らない喫茶店
妻とドライブに出かけた。どっかに連れていけと言われたので、何処へ行きたいかと聞くと、それはお前が考えろと言う。どっかへ行きたいが、行き先を考えるのは面倒くさいのである。
とりあえず車に乗り込むが、その段階でも明確な目的地は決まっていなかった。そういう時は、北へ向うのがいいだろう。そして、唐突にこんな曲を思い出した。
田中美智子/北へ向かって
着いたのは、北限の茶所として知られる、城下町の風情が残る町だ。町屋造りというのだろう、道路に面した間口は狭いが、奥行きがある建物が並ぶ。いい雰囲気で妻のテンションも上がる。旅に来た感がある。町をぶらぶら歩きながら、地元の民芸品店、地酒を売る店などまわった。疲れてきたので、お茶でも飲もうとなり、店を探すとレトロ風な喫茶店が見つかった。妻の「よさそうね」のひとことで決まった。
ここも、町屋造りのようで、間口は狭めで横から見たら奥行きが随分と長い。ただ正面の外観は、30〜40年位前によくあった洋風の喫茶店スタイル、入口横には、レンガを積んで作られた花壇がある。ドアは濃い色のガラスで、「営業中」の看板が下げてある。黄色い看板に黒い文字で店名が書かれている。花の名前である。
ドアを押して中へ入る。中は、全体的に茶色がかっていて、ほの暗い。4人掛けのボックス席が7、8席あり、店の奥のカウンターは少し高めでスツールで、おじさんが新聞を読んでいた。窓に面したボックス席には、いかした感じの中高年のアベックが、ナポリタンを食べている。都会からの旅行者かと思ったが、話し言葉にこの土地の訛りがあり、地元の人ようである。
私たちも、ボックス席に座る。お店のおばさまが、水とおしぼりを持ってきてくれる。紙製ではなく、タオルの蒸したヤツが嬉しい。ブレンドコーヒーとチョコレートケーキを注文する。
おばさまは年の頃なら70代か?特別に愛想がいいわけではないが、ごく普通の対応が心地いい。そして、コーヒーが美味しかった。濃くて、何というかしっかりとしたコーヒーの味。妻ともども満足。
知らない土地の知らない喫茶店で、美味しいコーヒー(ケーキも)と、地元のレトロな雰囲気を堪能できた北へのプチ旅でした。