創約とある魔術の禁書目録9&「禁書目録」への雑語り
創約とある魔術の禁書目録9/鎌池和馬
来月に10巻が出るのでそれまでには読まないと、と駆け足で。
話の流れは強大な敵にどう対処するか、という禁書ではわりかしおなじみの展開で、今まであったようで無かった学園都市の兵器vs魔術師(敵)という構図になる。嘘をついた、今までにないというのは大げさで、化学兵器と魔術サイドの交差、戦闘はあったけれど、本巻ほど総力戦の描写は無かった。ゴジラとかエヴァの使徒襲来をイメージしてもらえれば分かりやすいだろうか。案の定、兵器達は無力で、傷を与えられないのだけれど、想像力で生み出された兵器達はロマンがあってワクワクする。
学園都市製のトンデモ兵器とのドンパチがぼくが思う創約9巻の読みどころ。
次の10巻は話が大きく動きそうで、楽しみで、期待している。
ここからは野暮。ストーリーは「意外な展開」で読者を酔わせる。面白い。けれど読み終わってみるといつもの「禁書目録」だったなぁとあまり残っていない。これだけシリーズが続くと仕方ないが慣れてしまっている。
「意外な展開」は「禁書目録」では良く使われる手法だ。鎌池和馬のと言い切っても良い。他作品はあまり読めていないが。
読み終わったと途端に酔いが醒める。この巻も次への布石で、すでに過去になっているという感覚がある。シリーズ物としては間違っていないのだろう。なんだかつまらない。賞味期限(対象年齢)を過ぎてしまったのかと思ったけれど多分そうではなくて、付き合いが長すぎたのだと思う。一気読みなら面白い。長くても2年ぐらいで読み通すのが「禁書目録」の面白い読み方だと思った。酔いが醒める前に次の巻を手に取る。酔う。幸せスパイラル方式で読み通す。
新刊を待って、読んでる最中は楽しくて、でも似た構図で、がっかりする。たまに気合いが入った巻に興奮する。そのサイクルがもう厳しい。
ぼくが「禁書目録」を読み始めた時には既に新約18巻まで出ていて、「禁書目録」の中では比較的歴が短い。でも、もう「禁書目録」に呼ばれているという感覚は消え去った。
ぼくは新約18巻の構造を壊すような、自分の首を絞めるようなトンデモ展開に惹かれて物語構造に関心を持つ。距離が近いノベルゲームから一般文芸に。実験小説なんかを読んでるうちに気づけば古典に関心が向いている。
「禁書目録」をよりおもしろがろうと頬張っていたら、「禁書目録」へかける時間が無くなって、関心も薄くなってしまった。
最近、Twitterでは魔術や宗教の知識で0から「禁書目録」を読んでいる方がいて、楽しく読ませてもらっている。彼は豊富な知識から独自の「禁書目録」のおもしろがり方をしている。ぼくは憧れたし、嫉妬した。錆びた「禁書目録」を光らせている。でも、それでも、再び「禁書目録」にのめりこむことは現状ではない。新刊が出る度読むだろうけど、読むだけでそれ以上のものもない
復帰することがあるならば、それは5年、10年かけて、小説やフィクションに詳しくなって、新しいおもしろがり方を身に付けて、錆びた「禁書目録」を光らせる力がついてからだろう。
最もそのころ「禁書目録」に目を向けるだけのリソースがあるとは限らないが。