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青い空のカミュ 雑感

青い空のカミュ KAI-soft

2019年に発売されたアダルトゲーム。
タイトルのカミュはフランスの作家のカミュから。
気配もなく降ってかかった不条理にどんな態度を取るのか。
カミュ、サルトル、ベケット、宮沢賢治など引用を駆使して語られていく。
難解かと言われると否と言いたいけれど、カミュに関しては多少知識があった方が面白がれると思う。『素晴らしき日々』とか衒学的と言われてるやつらよりは易しいかな。
『素晴らしき日々』は作りはエンタメ的で、種も全部明かしてくれるから
ネタ元のウィトゲンシュタインに目をつぶれば易しいけれど。
『青い空のカミュ』はネタ元が易しめだけど、作りは煙に巻いてくるから、難しいという感想になっちゃうのかも。

オススメは『ペスト』と『シーシュポスの神話』の表題作、気になったならエッセイもいくつか目を通してみると良い。
僕もその二つ+『カリギュラ』の不条理三部作、それに『反抗的人間』をちょろっと目を通した程度でかなり楽しめたから間違いないと思う。

好きなやり取りを一つ。
待ち合わせをしていたが急な予定により会えなくなった。当初の時間から大幅に遅れている。でも会いに行ってみる。それで終わらせることが嫌だったから。するとそこに、いる。待っている。それで終わらせることが嫌だったから。



「仕方がないけど、それだけで終わらせることが嫌だった」
カミュの『ペスト』はペストという不条理に人を死に向かわせる病に、医師リウーが立ち向かう話でもある。程度は違えどリウーのような力強さが、それに二人の不条理に対する態度が簡潔にそしてクリティカルに表れている大好きなやりとりだ。

肝心なシナリオはというと、筋は正直パッとしない。気持ちよくなれたり、泣いたりするような話を期待すると肩透かしになる。
しかし、シーンごとのやりとりはどれもこれも印象に残っている。
二人の信念や関係性、行動といったものに注目してみて欲しい。


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