📓夢日記：踊って走る地動説

地球が回るというのはつまりどんどん夜が動いていくということなのかもしれない。
例えば心臓発作みたいなのが起こって地球が回るのをやめたら、夜がずっと続く国の人たちがいてなんだ？と言っている反対側では太陽が照り続ける国の人たちがいてなんだ？と言っている。
時間が止まっているわけではないらしい。日光の届かない大地の草木は枯れていき、日照で乾いた大地の草木も枯れていく。地球の活動が止んだら波も風も止んで地震も無いし火山も噴火しないんだ。手に負えなかったものの心配をしなくてよくなったと肩をなで下ろして、不安から目をそらす。

夜の国。
自転をやめた地球はどんどん他の惑星に引き寄せられていく。
「金星がどんどん近づいてきている！」「違う地球が近づいて行っているんだ」「わかったようなことを」「君は誰」「陰謀論だ！」「馬鹿言え」「どうしてわかる」
かつてのものとはまた別の天動説と地動説が対立を始める。眠らず議論を続けて脳みそと頭は大きくなり、肉体は弱り、色も白くなっていく。

昼の国。
月って夜になったら光るんだったっけ。あんな白いのに、本当に光るんだろうか。とか言っていられたのも束の間で、どんどん太陽が近くなり「暑すぎる！」「焼けて死んでしまう！」もうだめだ。地下を掘って太陽から逃げ始める。下へ下へ陽が届かなくなるまで。みんなすっかり日に焼けた、目もよく見えないが構わない。スコップを握る腕は太くなり、足腰もどっしり強くなる。

そうしてどのくらい経ったか。もうみんな忘れてしまった。

ついに昼の国が、夜の国まで行き着いた。
「夜だ！」「夜に追いついた！」「なんて寒いんだ」「なんて暗いんだ」「星が見える」「宇宙のように」「本当だ」「見える気がする」「月の光」

舞台は整い、時は来た。
信じる者、踊りたい者、考えない者、幸せな者、信じない者、怒る者、眠りたい者、食べる者、さあさあみなさん、思うまま！
昼夜逆転ごちゃ混ぜに、走って地球をまわしましょう！

誰かが鳴らしたピストルの音。走りだす。全員の足音で地が響く。走る。地割れが起きる。走る。
活火山は刺激され、地球がゆっくり目を覚ます。これは踊りだろうか。
「スコップはもう捨てよう」走る。
「頭が大きすぎて走りにくい」走る。
おやおや明るくなってきた。
「なんだ？」「光だ」「朝が来た！」「ところで君は誰なんだっけ？」「おいそこ足を休めるな！」

さあみなさん、手をつないで輪になって！海の波も静かです。もう赤道くらいまで来ましたよ。想像して、信じてみてくださいね。さあ右にステップして！ドンドドンドンドン。さあさあ左に！ドチャチャドチャ。踊りながら走り、走りながら踊る。音楽が聞こえる。

「気がついた？」「昼を越えている気がする」「日が暮れてきた気がする」「夕暮れだ」「私たちが回っているのか？それとも」「ほら見て一番星が」

夜が来て、踊りが終わり、足を止めても朝が来て、昼が来て、また夜が来た。走らずとも、何度でも夜は明けた。

「ああ明日も明日がくる」
「新しくて懐かしい人生が戻ってきた」
「さあ起きよう」「さあ眠ろう」

「それにしても走っただけなのに」
「風を起こして、波を起こして、火山を起こして」
「それにしても手をつないだだけなのに」
「地球がまわって」
「遊んでいるのかと思っていたの」
「踊っているのかと」
「楽しかったな」
「これが平和なのか」
「走ったからね」
「手を繋いで」
「でもわたしはサボっていたの」
「そうかしら」
「雨のような気がして」
「わかるわ」
「声が聞こえていて」
「そうかも」
「くたびれて」
「泣いたし」
「いいのよ」
「眠っていたって」
「いいの」
「心があれば」
「それにしても」
「遊んでいただけだわ」
「でも心が健やかなんだもの」
「いいの」