第十一回博麗神社秋季例大祭 徘徊レポート
前書き
本レポートは,筆者が第十一回博麗神社秋季例大祭(†1)に参与観察(一般参加)し得られた知見を取りまとめたものである.
そのため,過去に参加経験のある者にとっては有益な情報に乏しい点は留意いただきたい.
筆者は2007年ごろに東方Projectに触れて以来のライトファンであり,古参と呼べるほどではないものの,二次創作を含め界隈の動向をそれなりに窺ってきた自負はある.
しかし、博麗神社例大祭(以降単に「例大祭」とする)への参加は今回が初であり、イベント参加の観点では実質初心者と変わらない.
加えて,就職活動での合同説明会以来、実に十数年ぶり(†2)の東京ビッグサイト訪問であり,コミックマーケット等の大規模イベントの経験もない.
以降の章では淡白な説明を滔々と続けることになるが,当人は相応に周章狼狽しながら会場を一人彷徨っていた.
読者においては,しがない中年男性が不審者めいた挙動で人混みに揉まれ右往左往する様子をコミカルに想像していただき,それにより僅かでも口角を上げる一助となれば欣幸である.
†1 詳細な開催情報については公式サイトを参照のこと.
†2 年齢がバレる.大変マズい.
1. はじめに
1.1. 目的
本レポートの主な目的は,筆者と同様に雑踏を不得意とする者が,博麗神社例大祭(以降、単に「例大祭」とする)への参加を後悔しない程度に満喫するためのヒントを提示することにある.
何をもって満喫とするかは個人によって異なる(†3).
しかしながら,各人の満喫を阻害し得る要因はいくつかの類型にカテゴライズ可能であり,危険予知(†4)を事前に行うことでリスクを回避・低減することができる.
本レポートを通じて心身の安全を確保する準備を十全に行い,己が満足へと集中できたと感じる読者が一人でも現れれば,本レポートの役割は果たされたと言えよう.
†3 なお,筆者の満喫条件は「イベントの雰囲気を肌で感じる」「本レポートに含められそうな情報を収集する」「なるべく多くの展示を確認する」「小物系のグッズを購入する」「上記を他者との会話を最小限に抑えた上で達成する」の計5点.特に経験の乏しいうちは達成可能な目標設定が肝要である.最後の条件に疑問を抱く読者も多いと思われるが,見知らぬ他者との会話でスリップダメージ(大)を受ける特性を持っている身としては,コンビニエンスストアのレジ等で取り交わされる「お願いしまーす」と「ありがとうございまーす」以上の発言を無傷で行使するのは困難であり,筆者にとっては五体無事に帰還するための必須要件となっている.
†4 未来予知の能力を発揮せよという無茶振りではなく,中央労働災害防止協会の提唱するKYT(Kiken Yochi Training)を指す.現場業務のある企業の社員であれば,耳にタコが出来るほど耳にしているだろう.ふざけた頭文字の取り方だと嘲笑うなかれ,全人類が安全に日々を過ごす上で非常に役立つ、かつ簡便な手法である.子供たちの安全のためにも,ぜひ学校の授業に取り入れてほしい.
1.2. 本書特有の表記
本レポート内は,以下のとおり独自の表記を含む.
原作名
原作名の多くは『東方○○○ ~ ×××××.』という命名法に従っているが,煩雑になるため『○○○』と略記する.
これはすでに界隈に広く浸透しており,原作者も使用している省略形であることは付記しておく.
なお,上記命名法の例外(†5)についても,同様の理由でサブタイトル(「~」以降)は省略する.キャラクター名
1回目はフルネーム、2回目以降は姓名のうち名のみの表記とする.
なお,キャラクター名は原作のメタ領域(漫画の名前テロップなど)で使われる表記に従う(†6).
†5 いわゆる外伝にあたる作品に多い.ゲーム本体である実行ファイル「th●●.exe」の「●●」部分が整数であれば本編,小数であれば外伝にあたる.ただし,外伝の中でも外部サークルに委託(原作者は監修)したものは,本編と同様の命名法となっている.
†6 この注釈が必要なのは,一見紛らわしい通称(例:青娥娘々.娘々は娘娘とも書き,にゃんにゃんと読む.猫ではなく,高貴な女性に対する中国語の尊称)であったり,原作中でキャラクター名が仮名であることが明示されている(例:八意XX.XXは月で暮らしていたころの名で、地球人には発音できない設定.断じて「ダブルエックス」ではない)ケースがあるため.
1.3. 構成
本レポートは以下の章から構成される.
前書き
本レポートの作成背景などを含む.
本筋の情報は含まないため,読み飛ばしても支障はない(†7).1. はじめに
本章.
3章以降を読み進めるにあたり、事前に提示すべき補足情報を記す.2. 入場までの流れ
事前登録から会場に入るまでの流れを示す.3. 会場:4F(第3, 4ホール)
企業ブース,サークルブース(グッズ,楽曲アレンジ),昼食を中心に,筆者の所感を記す.4. 会場:1F(第1, 2ホール)
縁日(ミニゲーム),イラストコーナー,サークルブース(同人誌)を中心に,筆者の所感を記す.5. 退場
退場時の流れを示す.6. おわりに
本レポートのまとめを示す.後書き
本レポートの作成に関連する余談を記す.
本筋の情報は含まないため,読み飛ばしても支障はない(†8).
今回は読者のイメージが湧きやすくなることを狙い,実際に筆者が取った行程を追従する形での説明を試みる.
当然ながら会場内でのルート取りは筆者と同一である必要はなく,来場者はスタッフの案内に従う範囲で自由に移動できる.
ただし,今回の例大祭は東京ビッグサイトの南展示棟で開催されたが,会場は毎回固定されているわけではない(例えば,今年の春季例大祭は東展示棟で行われた)点には注意を要する.
会場に応じて会場内外での行動が変化するおそれもあるため,利用する施設・設備などはあらかじめ十分に確認しておきたい.
†7 まず間違いなく手遅れである.
†8 †7の反省を活かし読み飛ばすことを推奨する.これは、人間が学習可能な生物であることを証明するまたとない機会であろう.
2. 入場までの流れ
2.1. 入場チケットの購入
例大祭に参加するには,入場前のチケット購入が必要となる.
チケットは購入方法や入場制約の違いにより,以下の4種類が用意されている.
チルノのあたいが一番早いわよパス(†9):3,000円 & オンライン購入
一般入場券より割高だが,代わりに優先して入場可能となる.
完売のおそれがあるため一刻も早く入手したい,再販や委託販売の望みが薄いためこの場で必ず入手しなければならない,といったアイテムがある場合は本チケットの購入を検討すべきだろう。
また,入場までの待ち時間のストレスを緩和したい場合の選択肢としても有効である.一般参加入場券:2,000円 & オンライン購入
最もスタンダードなチケット.
午前から午後にかけて参加し,かつ上記のような特段の理由がなければ,こちらのチケットを購入するとよい.
待機列に合流し実際に入場するまで,1時間程度かかる想定で準備しておきたい.
なお,筆者も本チケットを購入した.当日券:3,000円 & 現地購入
当日,入場券のチェックを行うゲート付近で購入できるチケット.
機能としては一般参加入場券と同様だが,割高となるため,一般参加入場券の購入を強く推奨する.午後入場券:1,000円 & 現地購入
当日13:00から会場手前で販売開始されるチケット.
割安であるが,この時点で人気アイテムは完売しているおそれがある.
物販にあまり興味がなく,会場の雰囲気を楽しめればよい参加者向けか(†10).
この時点で会場内の人数は多いものの,入場のために並ぶ必要はない.コスプレ参加用入場券:3,000円 & オンライン購入
更衣室利用料(1,000円)と一般参加入場券をセットにしたチケット.
当日に会場でコスプレ参加者登録することもできるが(金額差なし),入場および着替えをスムーズに行うためにも事前購入が推奨される.
児童に同伴する保護者向けの「保護者チケット」も用意されており,こちらは児童・保護者のいずれかがコスプレする場合でも利用可能となっている.
コスプレをした状態での入場は禁じられているため注意されたし.
オンライン購入は「LivePocket -Ticket-」で行える.
例大祭のイベント公式ページ(今回の場合は『第十一回博麗神社秋季例大祭』)から、入場券購入フォームへのリンクが貼られているため,そちらを辿っていくとよい.
会員登録が必要だが,当日午前9時まで購入可能であるため,直前まで参加または不参加を検討できる.
仕事の状況により直前まで予定確保が困難なファンにとってはありがたい仕様だろう.
†9 もちろん筆者がウケを狙って命名したわけではなく,実際にこの名称で販売されている.そもそもなぜ「優先入場券」のように一般的な名称としなかったのか,そのあたりの経緯は不明である(情報求ム).
†10 筆者も(少なくとも当初は)何かを購入するつもりはなく,早起きが辛いタイプの人間でもあるため,一時は午後入場券にすべきか悩んでいた.しかし,コミックマーケット等のイベントに名高い待機列なる文化を一度体験してみたかったこともあり,強い決意と大いなる勇気を胸に一般参加入場券をポチった.結果はなんとも言い難いものとなったが,本レポートに活用できる資料となったためよしとする.
2.2. 参加サークルの確認
入場前に,興味のあるサークル・企業がどの位置に出展しているかは把握しておきたい.
イベント公式ページには,下図のように会場案内図が掲載されている.
併せてサークルおよび企業がリスト化されたページへのリンクも貼られている(下図最下部)ため,そちらの情報と照らし合わせながら出展場所を確認することになる.
上図の会場案内図は拡大しても細かな文字が見えにくい.
おおよその推測は可能だが,きちんと確認したい場合は,「サークル配置」のページを経由して「サークル参加者向け配布資料(事前)」から「サークル参加者向け会場図(†11)」を取得するとよい.
一例として,「サークル配置」ページの参加サークル一覧と「サークル参加者向け会場図」の対応付けを下図に示す.
多くの場合は,ひらがな一文字(五十音順)が列を示す.
各列では,10~20程度のサークルが縦長の長方形を作るように並んでいる(†12).
サークルが使用するブースはそれほど広くなく,長机1個程度の幅とイメージすればよい.
基本的に1サークルが1ブースを使用するが,1ブースを複数のサークルが合同で使用したり,その逆もあり得る.
†11 PDF形式で,サークル参加者でなくともダウンロード可能.
†12 後述もするが,各サークルはそれぞれ面する通路に向けて出店している.通路の幅によっては隣接する列を巡覧する参加者と交じって移動することになるため,持ち込む荷物や購入品のサイズには注意しておきたい.
2.3. 移動と受付
開場前の受付は,東京ビッグサイトの2階屋外部分,西寄りにあるセブンイレブンとタリーズコーヒーの間のスペースに設置されていた.
そのため,受付としてはゆりかもめの東京ビッグサイト駅が最寄りとなる.
りんかい線(国際展示場駅)で向かう場合とそれほど運賃・時間が変わらない場合は参考にしてほしい.
受付では,事前購入チケット(QRコード)を提示する.
問題なければ紙製のリストバンドを手渡されるため,すぐに装着し,案内に従って入場待機列の最後尾へ向かう(†13).
当日券を購入する場合は,近くに簡易な販売所が設置されているためそらへ向かう.
人混みもあるため,場所が確認できない場合は,付近のスタッフに確認するとよい.
†13 時間帯によっては受付の待機列が出来ている場合もある.先に入場待機列へ並ばないように注意.
†14 お世辞にも美しいとは言えない中年男性の手が映りこんでいるが,服装のセンスとともにそっと見逃してほしい.
2.4. 入場待機
入場待機列は4人1組を1列として,ゆりかもめの有明駅に向かって伸びていた.
筆者は9:25ごろに東京ビッグサイト駅に到着し,受付後9:40ごろに入場待機列の最後尾に並んだ.
その時点で最後尾は有明駅近くの花の広場まで伸びており,待機列の構成者数は数千人に及んでいたと思われる.
待機列は一目で判別できるため,受付方面から列を辿っていけば自然と最後尾に加わることができる.
また,付近にスタッフも配置されているため,まず迷うことはないだろう.
入場待機列に合流する際,スタッフからリストバンドの色が正しいか自己チェックの呼びかけがある.
一般参加者は青色(実際の色味は図2-5参照)となる.
入場待機列が動きを見せたのは10:15ごろだった.
花の広場で首を伸ばして待っていた参加者たちだが,スタッフの指示には冷静に従って移動していた.
しかし,そのままスムーズに入場できるわけではなく,途中で何度か立ち止まる.
今回は南展示棟でいくらか距離があることも相まって,それから南展示棟内に入るまでにおよそ30分を要した(†15).
天候にもよるが,当日は12, 3℃と肌寒かった.
前日,居住している広島市は夏日であったため,ジャケットは過剰かとも考えていたが,トップス3枚体制では心許ないほどだった.
天気予報をよく確認した上で服装を準備したい.
(春季例大祭の場合は,通例ゴールデンウィークに開催されるため,逆に暑さを心配することになる)
†15 南展示棟への移動途中,会議棟下の左手にある巨大モニタの前を通ったのだが,そこには「南展示棟 本日のイベント情報はありません」と表示されていた.それでは我々は何のために長蛇の列を作っているのか――非常に哲学的な問いかけを迫る光景であった.
2.5. 入場
南展示棟へは,2Fから長い通路を進んで入ることになる.
2Fはコンコース(要は通路)となっていて,展示ホールは1Fまたは4Fにある.
今回の例大祭は第1, 2ホール,第3, 4ホールをそれぞれ分ける仕切りが取り払われており,会場としては2フロアで構成されているとイメージすれば支障はない.
南展示棟までは流れに逆らわず進んで行けばよいが,棟内に入るとチケットの種類によって分岐が発生する.
案内の看板やスタッフの声がけもあるが,このあたりでは興奮を抑えきれない参加者がやや足早になっている.
列を乱さず進むことに注心しかねない状況のため,周囲にも気を配るようにしたい.
少し進むと,コスプレおよびカメラ登録の受付があった.
カメラについては,コスプレイヤーや痛車,その他展示物を撮影するために許可が必要となる.
撮影を希望する参加者は忘れず立ち寄ること.
筆者はコスプレや痛車にさほど興味を持っていないため,カメラ登録は行わなかった.
(それゆえ,以降の章で会場内の写真は一切添付されない)
なお,コスプレした状態での入場は禁じられているが,アクセサリーなど一般ファッションの一部として取り入れている分には問題ないようだった(†16).
例えば,レミリア・スカーレットや古明地こいしといったキャラクターの帽子(いわゆるZUN帽)のみ被っている参加者が,入場待機の時点から多数見受けられた.
コンコースにはエスカレーター下にロッカーがあり,また特設のクロークもあるため,遠征で大きな荷物を抱えている者でも遠慮せず楽しめる.
(ただし屋外の待機中は持ち運びが必要.遠征の荷物やコスプレ道具などで嵩張るときは,周囲の迷惑にならないよう気をつけたい)
また,車椅子での来場者も数名見かけた.
コンコースは十分広いので,往来が多くとも問題にはならないだろう.
ただ,展示ホール内において,ブース列間の通路もスペースはある程度確保されているが,やはり人だかりで身動きの取りにくさは否めない(†17).
移動に不自由がある方を見かけた場合は,道を譲るなど配慮したい(†18).
どのような身体的特徴を持っていようと,共に例大祭に参加し盛り上げたいと願う対等な同士であることを忘れてはならない.
†16 即座に着脱可能かで判断されているのではないかと推測するが,筆者が確認する限り詳細な基準は用意されていなかった.参加者の良識に委ねられていると思われる.その隙を突いてギリギリを攻めるような試みは,その後の運営に影響するため決して行わないこと.
†17 通路の幅はまちまちで,狭い場合は車椅子同士ですれ違うのがやや難しい程度.そこでは健常者でも30秒ほど立ち止まることがあったため,身動き云々については車椅子に限ったことでもない.
†18 お天道様と龍神様が皆の言動を見ておられる.
3. 会場:4F(第3, 4ホール)
4F会場では,グッズや楽曲アレンジを主体としたサークルブースの他,企業ブースや昼食向けの飲食店(下図のケータリング)が軒を連ねていた.
また,企業とサークルのブースを隔てるように痛車展示が行われていた.
出入口付近(第4ホール側)および企業ブース寄りの壁際はスペースが広く取られているため,マップの確認などで立ち止まる際はこのあたりがよいだろう.
カタログや例大祭公式グッズもこちらの会場で購入できる.
購入物の宅配も可能なので,何の憂いもなくアイテム蒐集に勤しめよう(†19).
†19 金銭面の憂いについては本レポートの対象外である.
3.1. 企業ブース
メロンブックスやとらのあなといった馴染みの深い同人ショップはもちろんのこと、20の企業がグッズ販売など独自コンテンツの展開を行っていた.
回遊中,特に目立った企業を以下にピックアップする.
株式会社ケイブ
高難度シューティングゲーム『怒首領蜂』シリーズなどで知られる企業.
その実績からか,東方Projectとコラボして2023年秋にスマートフォン向けシューティングゲーム『東方幻想エクリプス』をリリースした.
今回はその試遊会が開かれており,関連グッズも販売されていた(†20).Play, Doujin!
メディアスケープ株式会社を中心とする,主要ゲームハード向けの同人ゲーム配信をサポートするプロジェクト.
(当初は東方Projectの二次創作をターゲットとしていたが,現在は同人ゲーム全般を手広く扱っている)
『不思議の幻想郷』といった有名タイトルを含む5, 6種類の二次創作ゲームが試遊が可能だったほか,特殊ルール付きの麻雀シミュレーション『東方幻想麻雀』を用いてプロ雀士(†21)と対戦する企画が催されていた.株式会社Gift
様々なコンテンツのグッズを手掛けており、東方Projectについてもその例外ではない。今回はキャラクターぬいぐるみ(ジト目微笑み)を販売しており、長い行列を作っていた。筆者もここではグッズ購入もあり得ると予想していたが、あまりの盛況ぶりに諦めざるを得なかった。株式会社バンダイナムコアミューズメント
アミューズメント事業の大手として著名な企業であるが、例大祭では恒例となったアーケードゲーム『太鼓の達人』の試遊会を今回も開催.
すでに実装されている楽曲のみならず,近く配信予定の楽曲も体験することができた.
筆者は音楽関連の心得が一切ないため遠目に眺めるのみだったが,小学生ほどの子供たちが遊んでいる姿が微笑ましく印象的だった.東方やおよろず商店
グッズ販売を主とするオンラインショップだが,例大祭では取扱商品を現地購入できる.
また,今回は『東方謎解異変2』と題して,会場内を回ってリドルを解くゲームが行われていた.
「2」とあるように今回が第2弾であり,第1弾は今夏開催の『博麗神社夏祭り in よみうりランド』で体験できた.
(プレイにあたって前作の知識は不要)
謎解きクリエイターとして活躍する松丸亮吾氏を代表取締役とする「RIDDLER」とのコラボ作品で,筆者は直接問題を見ていないが,知識よりもヒラメキを重視した老若男女問わず楽しめるものとなっているだろう.
†20 スマートフォンでプレイ画面を見せると無料で入手できるグッズも配布されていたが,ブース前を通りかかったばかりの筆者はスタッフに近づく心の準備が整っておらず,素知らぬ顔でそのまま通り過ぎてしまった.
†21 プロ雀士を招いて『東方幻想麻雀』をプレイする企画は一種の定番となっており,例大祭以外のイベントでも開催されることもある.直近の例では,東京ゲームショウ2024において,Mリーグ出場者の中でも著名な堀慎吾氏,村上淳氏を迎えていた(ただしこちらは一般ファンとの対局なし).
3.2. 痛車展示
ペイントやグッズであらん限りにメイクされた十数台の車両が,会場中央に堂々と配列されていた.
他のコンテンツでも同様と思われるが,基本的には1台につき1キャラクターが割り当てられている.
ボンネットに大きくキャラクターのイラストが象られていたり,そのキャラクターにちなんだ文字列やアイテムのステッカーでエクステリアの細かい部分まで装飾されていたり,インテリアまでもこだわり抜かれたその精緻さに,素人ながら強い愛情とプロ意識を感じた.
ただ,痛車に関して筆者に知見がなく,「すげー」と中身のない感嘆を吐く以外のリアクションが取れなかった.
また,クルマ自体の造詣も浅いため,ベースとしている車種についても判別できなかった.
(一部車両はエンブレムも確認できず)
本当に走行できるのか疑問に感じたものも中にはあったが,走行を目的としない,展示用に振り切ったアレンジというのもあり得るだろうか.
何にせよ,その真髄の一端にも触れていない状態で観察しても得られるものは多くないと感じ,このコーナーは足早に切り上げてしまった.
次に参加する機会があれば,事前に楽しみ方を学んで再挑戦したいところである.
3.3. サークルブース(グッズ、楽曲アレンジ)
4F会場は,グッズや楽曲アレンジをメインに提供しているサークルが中心だった(†22).
他の場所が会場でもこうした区分けは行われる可能性は高いため,同人誌を探し求めている場合は先にそちらへ向かうべきだろう.
サークルブースのうち楽曲アレンジは左半分,グッズ類は右半分ほどだった(左右は図3-1基準).
グッズの種類については千差万別と言うほかなく,ここですべて列挙することは叶わないが,Tシャツやアクリルスタンド等々,おそらく他コンテンツと大きく差はないと思われる(†23).
もちろんデザインについては,原作に登場したキャラクターやアイテム等をベースとしたものであり,特殊なこだわりがなければ何かしら個人の好みに沿ったグッズ(†24)が見つかるだろう.
また,創作ゲーム(デジタル/アナログ問わず)を提供しているサークルもあり,痛車展示の左手にゲーム体験用スペースが用意されていた.
デジタル系のゲームは1人用のものが大半のイメージだったが,カードゲームのように対戦を前提としたアナログゲームも見かけた.
こちらはサークルスタッフに時間の余裕があれば,ルール説明のついでにトライアルでの対戦もしているようだった.
ただ,熱中すると矢のごとく時間が経過してしまうため,ゲームに興じるのは予定していた用事を終えた後にすべきかもしれない(†25).
これは取り扱う品に拠らないが,各サークルでのアイテム購入方法は,テーブルに積まれたものをそのまま購入する形式と,卓上のディスプレイ品を指定すると裏手に確保された同一品が提供される形式に大きく分かれる.
好みのサークルやアイテムを見かけたとしても,歓喜の勢いに任せ息を巻いて「これください!」と詰め寄るのではなく,一度深呼吸して販売スタイルを確認しておきたい.
なお,いずれの場合においても,購入が確定しているのでなければ,品物に手を触れる前に「手に取って良いですか?」などと,簡単にでも断りを入れるべきだろう.
サークルによっては手製のフィギュアなども展示されており,破損のおそれがあるものについては接触禁止となっていることもある.
†22 筆者がまず4F会場に入った理由もここにある.午後から参加者が増えると予想していたため,早いうちに思う存分楽曲アレンジを物色する算段だった.入場を待つ長蛇の列を目の当たりにしていたこともあって,展示ホール内の様子を見た瞬間に半ば諦念の域へと陥ってしまい,スペースに余裕があった企業ブースを先に回る方向へ舵を切った次第である.
†23 筆者はグッズを購入するほど入れ込んでいるコンテンツが少ないため断言できないところであるが,例えば『名探偵コナン』のような商業ベースのグッズ展開と比べても,二次創作の自由度が高さゆえか,バリエーションの幅は同等かそれ以上に広い.それはつまり,ニッチな作品も多いということでもあるが.
†24 今回は不参加だったサークルのものだが,筆者が過去にホビーショップで購入したこともあるキャラクターダイスを一例に挙げたい(サークル:幻想骰子。別サークルに委託して販売はされていた).1の目が特定のキャラクターに置き換わったもので,ダイス自体の色味もキャラクターイメージに合わせて調整されている.ほぼすべてのキャラクターが網羅されているため,売り切れを除き入手不可の心配はほぼなく,ボードゲームやTRPGを嗜む者であれば数個は確保しておいて損はない.
†25 会場内において,正当な理由で椅子に座ることができる数少ない手段でもあるため,歩き回って疲れたときの休憩場所として活用できる――のだが,例えそれが本心であっても,しっかり遊んで興味が湧けば購入してほしい.少なくとも制作陣は,東方ファンの同士に楽しんでもらえるよう,真摯な心で作品づくりに取り組んでいるのだから.
3.4. 昼食
ケータリングのスペースが確保されているため,昼食抜きでの強行軍については心配無用である.
出発前,混雑による食料確保失敗に備えて一応おにぎり2個を用意していたのだが,その必要もなかった.
会場内には中華料理,インド・ネパール料理といった露店(†26)があり,11:30ごろはほぼ並ぶことなく購入できた.
カレーに強い興味を惹かれてフラフラと近づいたものの,直前で前日の夕食もカレーだったことを思い出し,別店舗のタンドリーチキン&ローストビーフのハーフ丼(税込950円)に切り替えた.
マヨネーズをかけるか尋ねられたが,筆者はマヨネーズが苦手なため,この心遣いは大変助かった.
なお,大盛り無料という垂涎もののサービスもあったが,こちらは客側が注文時にメニュー名と併せて申告する必要がある.
露店コーナーの奥側にやや広いスペースがあり,50名ほどが休憩を取っていた.
椅子やテーブルは用意されていないため床に座ることになるが,各自そのようにしているためあまり気にする必要はないだろう.
12:00ごろには人数が多くなってきたため,様子を見つつ前後の時間帯にずらしたほうがよいかもしれない.
また,このスペースのすぐ隣にはゴミステーション(†27)が設置されているため,食後の容器を持ちながら会場内を練り歩く心配はない.
†26 正確にはキッチンカーが乗り入れている.東京はスケールが違う.
†27 当然だが,家庭ごみを持ち込んではならない.良識忘れるべからず.
4. 会場:1F(第1, 2ホール)
こちらの会場では,大半のスペースが同人誌を中心とするサークル出展であった.
グッズを併せて販売しているブースも多数見かけたため,片方の会場で狙いのグッズが見つけられなかった場合は,もう一方の会場にも足を運んでみるとよい.
2Fコンコースを経由して3Fとの行き来は可能であるため,(時間が許す範囲で)琴線に触れるアイテムを掘り当てるトレジャーハントと洒落込むのも一興だろう.
また,祭らしく「縁日」というカテゴリで簡単なアトラクションが楽しめたり,ステージで様々な催しが行われるなど,物販とはやや趣を異にした活気が感じられた.
買い物続きで目が回りそうなときは,こちらに移動して気分をリフレッシュさせることも考えておきたい.
4.1. 縁日など
日本において,祭の日に露店で射的などの遊びに興じる文化があることは周知のことと思われるが,例大祭でも同じように「縁日」と称してミニゲームを楽しめるブースが設けられている.
規模は大きくなく,遊べるゲームも3種類しかなかったが,いずれも特別な景品が手に入るチャンス(†28)であるため,時間に余裕があれば積極的に挑戦したい.
「積極的に」と勧めているのはもう一つ理由があり,1プレイにつき専用のチケット(入場券とは別売りで,縁日スペース内にて1枚500円で購入)を1枚消費するシステムなのだが,このチケットに限りがあるためだ.
もちろんすぐになくなるような量ではないが,閉場間際のタイミングでは間に合わないおそれはある.
客の回転自体は速いため,チケットさえ先に入手してしまえば問題ないだろう.
また,この日の目玉となっていた「だるまおとし」は,そのデザインや大きさのインパクトもあって,筆者が通りかかったときには集客数も一際だった.
清蘭が持っているようなサイズのハンマーでそれを吹き飛ばす様は痛快だが,一段一段にキャラクター(†29)の顔が描かれているため,それが「推しキャラ」の場合は複雑な心境に陥ってしまうかもしれない.
推しキャラを存分に愛でたい場合は,すぐ側にある「ぬいフォトスポット」を活用するとよいだろう.
20cmほどのキャラクターぬいぐるみのために設営された舞台で,持参またはスタッフから借用したぬいぐるみを自由に置いて撮影できる.
ぬいぐるみにとっては貴重な晴れ舞台でもあるため,共に祭を楽しんだ思い出をぜひとも写真に残しておこう.
(コスプレや痛車同様,事前のカメラ登録が必要となるため注意)
区分上は縁日と別枠になっているが,原作の体験プレイが可能なスペースが隣に用意されていたため,併せて紹介したい.
全作品とはいかないが,少なくとも近年のタイトルなら確実にプレイ可能な環境が20台ほど用意されており,1人15分ほどプレイできる.
未プレイ作品がある場合は,この機にチャレンジしてみてはどうだろうか(†30).
当日ふらりと立ち寄ることも制度上は可能だが,人員整理のためWeb上での事前申請を受け付けていることを考えると,あまり賢い選択ではないかもしれない.
後述のイベントで利用できない時間帯があり,常に試遊可能というわけではないため,ある程度計画立てて動く必要がある.
正午前後の1時間ほど,試遊コーナーで『東方コロシアム』が開催された.
開催ごとに特定タイトルのスコア等を参加者間で競うもので,今回は『萃夢想』が選ばれた.
通常の原作と異なり,番外編の『萃夢想』は格闘ゲームをベースとしたシステムのため,相手プレイヤーと直接対戦してゲーム内の勝者がそのまま勝ち進んでいくシンプルな形式となった.
(シューティングの場合は進行状況やスコアの差で判定)
なお,試遊コーナーで行われたのは予選まで.
準決勝以降は,次節で触れる「例大祭ステージ」で実施された.
†28 子どもたちは参加賞のような扱いで確実に景品を手に入れられるようだ.大人は大人気なく好成績を狙うべし.
†29 博麗霊夢,霧雨魔理沙,チルノ,十六夜咲夜,魂魄妖夢が積まれている.他のイベントでも出展されていたが,例大祭仕様にパワーアップしていたらしい.
†30 筆者は一応全作品触れている(クリアしたとは言っていない)ため,他の参加者に席を譲ることにした.決して下手なプレイを見られたくなくて逃げたわけではない.
4.2. 例大祭ステージ
1F会場の右奥には特設ステージが用意されていた.
前節の「東方コロシアム」の準決勝・決勝戦だけでなく,カラオケ大会やスマートフォン向けゲームアプリ『東方LostWord』のプロモーションイベントも開かれた.
ステージと言っても大きなものではなく,テレビの撮影スタジオの半分程度,客席も簡易な柵で囲まれているだけで椅子あるわけでもない.
イベントがあるタイミングでは観客が押し寄せるため,事前にスケジュールを把握して早めに良位置を確保しておくとよい.
イベントがない時間帯は企画の一環として生放送による会場中継が行われており,コスプレ参加者インタビューなどを含んだ映像が現在でもYouTubeから確認できる(†31).
残念ながら諸事情で例大祭への参加が叶わなかった者たちも,こちらの動画で雰囲気を楽しむことができるだろう.
(東方コロシアムの決勝については,むしろ動画のほうが見やすいかもしれない)
†31 会場案内も含まれており,つまるところ,ここまで文字情報として綴ってきた現地の様子もおおよそ一目瞭然となっている.初めにこのアーカイブ動画を紹介していればこの記事の大半は省略できたはずだが,この節に着手するまで頭の中からすっかり抜け落ちていた.
4.3. イラストコーナー
参加者が自由に描ける壁紙が設置されていたほか,小中学生によるイラストコンクールも開催されていた.
(事前に応募された作品を展示する形式)
筆者は絵心が皆無であるため(†32),またしても中身のない感嘆を漏らしながら横切るほかなかったが,実際,子供たちの実力には舌を巻くばかりである.
また,『幻想郷のおえかき道場』と題して,塗り絵にチャレンジできる企画が開催されていた.
それなりに広いスペースが取られており,筆者は中まで入っていないが,親子を中心に賑わっているように見えた.
イラストの指南書も販売されていたようで,初級者~中級者には有用な参考書となるだろう.
道場では講師として実際の絵師たちを迎えており,彼らの手掛けた原画も展示されていた.
これらを観覧するだけも十分な満足感が得られること請け合いであるため,興味があればショッピング後の行先として優先度高めの候補となる.
†32 アンパンマンやドラえもんの顔すらまともに描けないレベル.絵が描けるようになったら記事の見出し画像を自作したいと常々夢想しているが,どうしても絵より先に文字を書いてしまう.
4.4. 軽食
本節については手元にメモが残っておらず,記憶頼りになってしまう点を始めに断っておく.
1F会場にもケータリングコーナーが設けられていたが,4F会場と比べて規模は小さくキッチンカーは1台のみ.
提供されている料理も,デザート系の軽いものだった(†33).
4F会場のよう食事ができるスペースがなかったことを考えると、こちらはあくまでちょっとした休憩を想定していたのだろう.
キッチンカーの傍には紅茶の茶葉などの土産にできそうなものも置かれていたが(†34),いずれも東方Projectと直接の関係はない.
筆者はアルコールを嗜まない生物であるため気にしていなかったが,4F会場含め酒類は提供されていなかったかもしれない.
(当然ではあるが「ZUNビール(†35)」も置かれてはいなかった)
展示ホール外の飲食スペースではため,アルコールを求めるのであればそちらに足を運ぶのもよいだろう.
南展示棟であればラーメンやハンバーガーを提供する「FOOD SQUARE」が該当する.
もちろん,酒に呑まれてしまっては元も子もないので,神主ほどの酒豪でなければ摂取は控えたほうが賢明である.
†33 確かクレープだったと思うが,昼食から間もない時間帯で文字通り食指が動かなかったこともあり,ぼんやりとしか印象に残っていない.
†34 茶葉以外にも瓶詰めの商品があった.よく確かめもしないままハチミツかジャムのいずれかだろうと思い込んでいたが,周りに紅茶やスイーツが売っていた影響だろうか.
†35 「ニコニコ超会議」でZUN氏が毎年のようにプロデュースしているビールの総称.残念ながら例大祭など他のイベントで振る舞われることはない.飲みたければ幕張メッセへ出陣すべし.
4.5. サークルブース(同人誌)
1F会場にも多くのサークルが集っており,こちらでは同人誌が中心となっていた.
面積占有率だけで語るならば,例大祭メインコンテンツと言っても差し支えないだろう.
ニコニコ動画やYouTubeといった動画サイト,またPixivやX(旧Twitter)への投稿で名を馳せたサークルがいくつも出店している.
筆者は楽曲アレンジがメインで他の分野には疎いのだが,それでも常に視界のどこかに見知った絵柄のイラストが映り込むという,人生で初めて遭遇する異様な状況だった(†36).
原作別にブースがまとめられているため,キャラクターを中心に探す場合は参考になるだろう.
コンコース奥の第2ホールを入口として、奥=第1ホール側に向かって、漫画形式(『紅魔郷』→『妖々夢』→…→旧作)→小説形式→18禁、という構成となっていた。
このうち18禁コーナーについては訪れていない(†37)が,そのほかは全サークルのブース前を通りチラチラと出品内容を確認した.
作品ごとのサークル数を抽選によりある程度バランシングしているのか,旧作など比較的マイナー作品を除き,大きな偏りはなかったように感じる.
印象的だったのは,黒谷ヤマメのコスプレをした参加者が,彼女メインの作品を購入している姿だった(†38).
コスプレ参加者も多いため,冷静に考えれば会場内のどこで見かけてもおかしくはないのだろうが,初めて目撃したことによる衝撃は大きく,大変失礼なことにその方の背後で思わず「おぉ」と声を漏らしてしまった(聞こえていなかったかもしれないが,この場を借りて謹んでお詫び申し上げる).
このような即売会イベントならではの光景に思いがけず出会うのも,イベント参加の一つの魅力と言えるだろう.
†36 表現力がないため衝撃があまり伝わっていないかもしれないが,筆者にとって,作品を制作しているクリエイターたちは雲の上の存在である.そんな彼らに囲まれる空間は,神秘に満ち溢れた雲海と言っても過言ではない(謎).もはや興奮を通り越して感情が迷子になっていた.クローズドな会場で肉体ごと迷うことがなかったのは不幸中の幸いと言えよう.
†37 精神年齢は永遠の5さいなのでそもそも閲覧権を持っていない――わけではなく,単に苦手なだけである.
†38 ヤマメですか(喜)(嬉)(幸)
5. 退場
退場口は,入ってきたときと同じく同じ南館玄関からとなる.
案内もあり特に迷うことはないが,特定の発車時刻の電車に乗ろうとして駆け足になる参加者がいくらか見受けられた.
当然スタッフから注意を受けていたが,転倒して怪我をするならまだしも,せっかく購入したアイテムを破損するおそれもある.
田舎と違い時間あたりの本数が少ないということはないので,祭の余韻に浸りながら安全に移動したい.
無事に家へと帰るまでが例大祭である(†39).
†39 このころの筆者は段々と増えてきた人混みに酔い始めており,疲労と緊張とのトリプルパンチで活動限界が見えていたため,やや早め(14:00ごろ)に退散することにした.最後まで楽しみたかったのは山々だが,倒れて周囲に迷惑をかけては本末転倒と判断した.
6. おわりに
6.1. 参加を通しての所感
月並みな言葉になってしまうが,「参加してよかった」が素直な感想である.
東方Projectというコンテンツにおける同好の士がこれほどの規模で集う会,その熱気を直に味わえただけでも,筆者としては十分な利益だった(†40).
一方で,その熱気に飲まれてしまうと,財布の紐が緩んでしまい,ともすれば帰宅難民にもなりかねないと感じた.
堅い意志を維持する自信のない者は,事前にこれと決めたアイテムだけ購入するか,撤退の時間を決めておくなどの対策が必要かもしれない.
半ば脅すような物言いになったが,何はともあれ祭を楽しむことが第一だ.
筆者は地方に住んでいることもあり毎回の参加は難しいが,コミュニケーションが苦手な人間でもまた来てみたいと思える魅力は間違いなくあった.
地域で開かれる祭のように,直前まで参加不参加を悩む時間があるというのも,ハードル下げている一因だろうか.
地域といえば,もちろん例大祭ほどの規模ではないものの,多くの都道府県で東方Projectのオンリーイベントが開催されている.
初めから例大祭に挑むことが躊躇される場合は,まずは比較的小規模な地方イベントから参加してみるのもよいだろう.
地方とはいえ,近隣の都道府県を中心に,各地からサークルが出展するケースもよく見受けられる.
予定が合わず例大祭やコミックマーケットに参加できなかった場合でも,サークル情報を追うことで所望の品を現地購入できる可能性はある.
観光ついでに地方イベントに参加する,という楽しみ方もできそうだ.
ちなみに,地方イベントでしか入手できない,いわゆる「ご当地グッズ」も存在する(†41).
なお,原作者の神主ことZUN氏も今回の例大祭に来場していたが,残念ながらその姿を確認することはできなかった.
少なくとも縁日のミニゲーム(だるまおとし)に興じていたことは確実だが,筆者が撤退した後だったのかもしれない.
仮に見かけたからといって,信仰に近い眼差しを遠くから送っていただけだろうが.
†40 筆者の場合は「モノを買うより現場の空気感を味わいたい」というおそらく稀有なスタンスで臨んだためか,最後まで冷静さを保つことができた.かつて楽曲アレンジ蒐集に熱を上げていたころの自分であれば,あるいは財布内のすべての紙切れがCDケースに置き換わっていたかもしれない.
†41 筆者の住む広島県で開かれる『東方椰麟祭』では,広島銘菓のもみじ饅頭と犬走椛がコラボレーションした商品が販売されることがある.小ネタではあるが,椛が初登場する『風神録』では,そのインストール中に「もみじ饅頭でも食べながらまったりお待ち下さい」という文言が表示されるため,単に名前が被っているという理由だけでコラボされたわけではない.
6.2. 備考︰戦利品
入場前は購入品ゼロ進行を予定していたものの,各ブースを見て回っていると,やはり気になるアイテムの一つや二つは出てくる.
今回は2サークルの世話になった.
筆者が入手した戦利品を以下に紹介する.
東方てんすうクッション(サークル:EastSparking)
原作において,主に敵の撃破時に出現する小さなアイテムのうち,最もポピュラーな霊力(赤),ボム(緑),得点(青)の3種が手のひらサイズのクッションとなっている.
オンラインショップでの委託販売は1ヶ所(あきばお~こく)で確認できたが,最近は補充されていないようで欠品もある.
各種イベントで出品されるかチェックするのが確実だろう.
筆者は一目惚れした勢いでよく確認せず(†42)3種すべて購入したつもりになっていたが,博麗霊夢や霧雨魔理沙といったキャラクターがデザインに含まれるものもあった.
サイズの関係でクッションとしての用途を果たすことは難しいかもしれないが,インテリアとしてはそのインパクトを存分に発揮してくれることだろう.
なお,犬猫等のペットを飼っている家庭では,おもちゃ代わりにされ損傷するおそれもあるため注意したい.
笛巻物語シリーズ(サークル:笛巻物語)
サークル主催のかとろーる氏自らがフルートで演奏する原曲アレンジ集.
つい前日にたまたまフルート奏者(アマチュア)の知人と会話をしていたこともあって,大きく書かれた「フルート」の文字に惹かれふらふらブースに近寄ったところ,霊夢のコスプレをしていた(おそらく)かとろーる氏本人に「よかったら見ていってくださーい!」と明るく声をかけていただいた(†43).
これもめぐり合わせかと直感し,並べられていた『笛巻紅魔物語』『笛巻妖々物語』『笛巻博麗物語』の3枚すべてをまとめ買いした.
各作品に2曲ずつ収録されており――主題から逸れるため曲評をここに記すことは避けるが――いずれも美麗で素晴らしいアレンジと演奏であった.
3作ともメロンブックスの通販サイトからも入手可能であるため,興味があればぜひ手に取っていただきたい.
†42 確認不足については,人の流れもあって,自分で勝手に焦っていたということもある.イベント経験不足とコミュニケーション能力の低さが如実に現れたモデルケースと言えよう.とりあえず落ち着くべし.
†43 氏からすれば単なる呼び込みの一環で,今となっては記憶の端にも残っていないと思われるが,この声がなければ遠目に眺めるだけで購入には至らなかっただろう.筆者にとっては大変名誉なことであった.呼びかけは大事.
謝辞
最後に,改めて原作者のZUN氏,ならびに,例大祭の土台を支え続けた運営スタッフや,出展により華々しい灯りで彩りを添えた企業・サークルの関係者方,そして祭に欠かせない熱気をもたらした一般参加者と,すべての東方ファンへ深い感謝の意を表し,締めの言葉とさせていただく.
後書き
――さて,完走した感想(†44)だが,まず初めに,これほどの規模のイベントを年2回開催していることへの驚嘆と、それを支えるスタッフを始めとするすべての参加者たちに敬意を評したい.
これが,ZUN氏というたった一人の人間が童のごとく遊ばせていた空想から広がったものだと考えると,非常に興味深い沿革と言わざるを得ない.
日本で醸成された「文化的」な文化をベースとして,現代風な手法と感性をもってリメイクした結果,東方Projectという新たな小文化(†45)が産声を上げた.
これが千年に渡り持続するとは筆者も考えていないが,コンテンツの消化スピードが大きく上がった今の時代にも長年生き延びることができているのは,
「同人作品であり続けるがゆえのコンテンツを管理する作為の不在」
「原作者による好意的二次創作の積極的な容認」
「エロ/グロを始めとする安易なインパクトに依拠しないことで広がった間口」
といった種々の要因が,日々変化しながらもどこか空ろな淀みを抱え続ける一部現代人のニーズへと柔軟にフィットするからであろう.
その恩恵を長らく享受してきた者としては,感謝の心をいくらか還元するためにも,例大祭に一度は参加せねばと考えていたが,なかなか折が合わず諦めかけていた.
初めての経験で心身の摩耗は否めないが,今回こうしてその本懐を遂げることができ感無量である.
今後の例大祭にもあまり参加はできないだろうが,筆者なりの方法で細々と貢献しながら,東方Projectの世界が末永く続いていくことを切に願っている.
重ねて余談だが,本レポートは筆者作成の他記事と大きく形式が異なっている.
基本スタンスが不真面目なため,堅苦しい筆致を続けていると全身がむず痒くなってしまうのだが,今回については普段の調子で進めると永遠に書き上がらない予感がしたため,自戒の念も込めてレポートに近い形での執筆と相成った(†46).
これを最初に読んで,もし仮に他記事にも興味を持った方がいたとしても,おそらくご要望に添えないか,ギャップに戸惑う結果となるだろう.
寛大にもご容赦いただける場合は,東方Vocalに関する記事をいくつか投稿しているため,まずはそちらに目を通して肩の力を抜いていただければと思う.
†44 イベントが違う.
†45 すでに根付いている(しかし日本では忘れられかけている)信仰という文化(の一側面)のコンテキストを活用している点において,小さいながらも「文化」と表現している.神道の言葉を借りるならば,文化の分霊(わけみたま)と呼んでもよいかもしれない.既存文化の象徴的アイコンをコンセプトに一部取り入れる様子は他コンテンツにもよく見られるが,例えば弾幕シューティングゲームというシステムすらも「ごっこ遊び」としているように,基盤として融合しているものはそう多く見られないだろう.
†46 もうやりたくない.