【東方Vocal曲紹介 Track.17】永遠の刹那
人の夢は、ただ儚く流れ――
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基本情報
【タイトル】
永遠の刹那
(えいえんのせつな)
【サークル】
SOUND HOLIC
(さうんど ほりっく)
【収録アルバム】※初出のみ記載
Moon Crusher [2012年]
(むーん くらっしゃー)
【原曲】
砕月
出典:『萃夢想』Story Mode最終Stage会話シーン
関連キャラ︰伊吹 萃香(いぶき すいか)
評価
【オススメ度】
★★★★☆(並←→極)
砕月万能説。
男性ボーカルを受け入れづらい人はいるかも。
【前提知識】
☆☆☆☆☆(少←→多)
特にないのでビギナーさんでも安心して聴けまするぞ〜
【原曲度】
★★☆☆☆(弱←→強)
サビなどわかりやすい部分はあるけど、全体で均すと原曲成分はやや弱め。
【雰囲気】
★★★☆☆(軽←→重)
全体的にメロウでありつつも、サビでは激しさを伴うアレンジ。
歌詞はノスタルジックで、少し暗い雰囲気を覗かせる部分も。
【カラオケ】
DAM / JOYSOUND
解説
あけおめた! ことよろす!
という感じで今年もエタらないことを祈りつつゆるゆるやっていく所存ですので、みなさま何卒よろしくお願いいたします。
選定理由
年明け初投稿なので、リハビリ兼ねてあんまり解説いらない軽いやつでこれまでにはなかった要素多めでいきたいなと。
初紹介のサークルさんなのはもちろんのこと、小数点作品、ZUNさん以外の原曲、男性ボーカルといろいろ詰め込んでます。
あとちょっと怪しいですが、おそらく冬の曲にカウントしていいはず……
歌詞の中に「夢」が入っていて、前回からの夢つながりでもあります。
みなさんの初夢はいかがだったでしょうか?自分は無事に会社支給のPCを紛失する悪夢が見れました☆ミ
本当ならもっと新年っぽく、博麗神社×謹賀新年感のある曲をチョイスしたかったんですが、紹介したい曲の中には含まれてなかったので大人しく諦めました。
来年まで続けられたとして、次はどうしたものやら……
原曲について
さきほどもちょっと触れましたが、『砕月』はZUNさんの作曲ではなく、『萃夢想』の開発元である「黄昏フロンティア」というサークルに所属する あきやまうに さん(当時は「U2」名義)の曲となります。
あきやまうにさんの作品も原曲アレンジを含め東方ファンからの評価が高く、特にこの曲は「砕月万能説」と呼ばれるほど、二次創作動画内で締めのBGMとして一種のミーム的に活用されていました。
曰く、どんなオチでも感動作のような雰囲気に持っていける――と。
同作ラスボスである伊吹萃香(※)との戦闘前会話シーンで流れる曲のため、シリアスな雰囲気はありつつも、東方らしくどこかお祭り感のある曲調になっています。
しかしながら、激しい音使いやキャッチーなメロディも存分に含まれており、会話曲とは思えないほどの人気を博しました。
ラスボスの東方Vocalアレンジとしては数がやや少ない印象ですが、それも強力な個性ゆえでしょうか。
イントロはホットスタートで、短いながらもお祭りのクライマックスが始まったと思わせるに十分な迫力があります。
イントロ後は一転して落ち着いて、笛の音をベースとした穏やかで情景を物語るようなメロディに切り替わります。
サビと呼べる部分は3段階あって、ラッパの吹き上げから意気揚々とした力強さを感じる前半が、特に有名なフレーズです。
中盤は前半の音使いを踏襲しつつ、締めに向かって流れるようなアレンジになり、最後は加速しつつ再び笛の音が加わって、夜風が踊るような旋律を奏でます。
つまみ上げるような高音がクセになるんですよねぇ。
聴きどころさんが多いので少し時間はかかりますが、一度は一周するまでお祭り気分に浸っていただきたいところです。
※【Topics!】小さくも強大な鬼の娘、伊吹萃香――
『萃夢想』およびその続編の『緋想天』『非想天則』は、弾幕シューティングならぬ弾幕アクションという分類のゲームで、簡単に言うと弾幕要素(遠距離攻撃)マシマシの格ゲです。
ZUNさん監修の元で黄昏フロンティアさんが制作したもので、小数点(th*.5)ながらも原作の一部、つまり外伝として扱われています。
(『非想天則』後も形を変えながら外伝作品を制作されています)
こちらでも必ず新キャラが登場しており、後に弾幕シューティングや書籍などZUNさんが手掛ける作品にも出演、外伝とはいえ東方Project全体のストーリー展開において重要な役割を持つキャラクターも少なくありません。
『萃夢想』で初登場を果たした萃香もその一人です。
東方Projectの世界では最強格の妖怪である鬼――その四天王の一角という、非常に大きな力を持った存在として霊夢たちに宴会を半ば強制しの前に立ちはだかりました。
伝説の鬼・酒呑童子とされていますが、東方Projectでの設定は現実の伝説と少し異なっている部分もあり、
まぁ、現実のほうが人間側の都合で解釈された別モノ、ということかもしれませんが……
「粗密を操る程度の能力」で体を霧状に変化させ、常に幻想郷中を漂っているという、スケールの大きいお方。
人間たちと話をするときは、その一部から幼い女の子の容姿を取りますが、側頭部から生える二本角が彼女の鬼たるプライドを如実に示しています。
ただ、戦闘時のモーションはほぼ糸目で、酔拳のごとくフラフラしているという、なんとも気の抜ける振る舞いを見せます。
能力の応用で、スタンド『ハーヴェスト』のようなミニ分身軍団を展開したり、自身の身体を何倍にも大きくしたり(通称「ミッシングパワー」)できますが、こちらのモードでも可愛らしい様子は変わらずです。
おそろしい「鬼」のイメージがどんどん書き換えられていく……
酔拳使いっぽいこの幼女ですが、なんと実際に常時酒気帯び運転しており、戦闘中にはお酒の入った瓢箪までも武器にしてきます。
「伊吹瓢(いぶきびょう)」と呼ばれるその瓢箪の中は、幻想郷中のお酒が少しずつ萃(あつ)められていて常時満タン、酒豪の萃香さんが好きなときに好きなだけグビグビいけるというなんとも素敵なアル中量産待ったなし仕様。
キミら、酒呑んでばっかなのを利用されて退治された経験あるのに、まーったく凝りてないですな?
ちなみに伊吹瓢をタクシー代わりに使っている座敷童子がいるとかいないとか……
『萃夢想』では、お酒大好きな幻想郷の住人にとっても異常と感じるほどに宴会が開かれまくるという、少し珍しいタイプの異変が起こりました。
酒氾――もとい主犯である萃香の動機は、「春雪異変で春が短くなってお花見(=宴会)がほとんどできなかったから」という、プレイヤー側からしてみれば気の抜けるような内容でした。
裏の思惑として、宴を開くことで鬼の仲間を惹きつけようとしたようですが、いずれにせよ少し寂しがりやさんな性格が垣間見えます。
二次創作では、寝っ転がってお酒を飲みながらぐーたらしているアル中 人間のクズ 出不精みたいな描写が多いものの、裏でアレコレ糸を引いていたり、たまに本気出して圧倒的な格の差を見せつけるなど、残念な面だけでは終わらない活躍が見られることが多いです。
また、霊夢のことを気に入っていることから、博麗神社まで頻繁に遊びに来たり、設定によっては住み着いて巫女化するケースもあります。
勇儀や華仙といったほかの鬼キャラや、もともと住んでいた妖怪の山の面々(基本パワハラ)との絡みが描かれるのもメジャーですね。
霧化で幻想郷中に遍在しているだけあって結構顔が広く、横の繋がりが多々発生する漫画版原作でもそれなりな回数の出演があるため、二次創作でも使いやすいキャラとして重用されているのかもしれません。
感想︰曲調とボーカル
かなり今さら感もありますが、今回初紹介となるSOUND HOLICさんからの一曲です。
東方Vocalを語る上で外すことのできないサークルさんで、規模の大きさやアルバム数を見ても界隈の最大手と言ってよく、黎明期から現在まで精力的に活動されています。
ポップやロックを中心として、ガチからネタまでアレンジの幅は広いです。
特有の強みとしては、ユーロビート系の曲が有名で、そちらの趣向をお持ちの方はまず間違いなくお世話になることでしょう。
界隈ではある種のスタンダードと化しているSOUND HOLICさん。
関わっているボーカルさんも多いですが、今回はニ大巨頭の一角である709sec.(ななまるきゅーせっく)さんにスポットライトを当てる運びとなりました。
先述のとおり、709sec.さんは男性です。
東方キャラが軒並み女性ということもあって、そもそも男性ボーカルの数が少ないという背景はあるものの、ボーカル全体で見ても持ち曲数はトップクラス。
(集計はしていないですが、まぁ間違ってはないかと)
東方Vocalの発展に多大な貢献をされたお方であることに異論はないでしょう。
気のいいお兄さんチックな歌声で、カッコいい曲担当と思っていただければ大体OK。
英語歌詞の曲をよく歌われているので、そちらの印象が強い方もおられるかと思いますが、この曲ではほとんど横文字は使われていません。
709sec.さんの紹介はこのへんで、そろそろ曲のほうに戻りまして。
バラードとまではいかないものの、全体的にゆったりとしたアレンジとなっています。
一方でエレキギター中心のロックな音使いになっていて、イントロやBメロからサビにかけての力強さは原曲譲り。
盛り上がりが最高潮を迎えたサビでは、中盤で高音のボーカルが心地よく響いて、グッと心掴まれること請け合いです。
間奏後に落ちサビがあるのですが、ここでボーカルも音程を落とすところもギャップがあっていいんですよねぇ。
さきほどの高音部は裏声で表現していますが、こちらは地声のまま。
儚げに歌う709sec.さんの声にも癒されますが、カラオケ的にも癒しポイントです。
その後のラスサビに備えて喉の調子を整えましょう。
感想︰歌詞
シチュエーションが想像しづらく少し難解ですが、少しづつ整理します。
まずは登場人物。
春から冬への季節の流れに想いを馳せ、人間の儚さを一抹の寂寥感とともに受け入れる主人公の「僕」――あえて東方キャラを当てはめるのであれば、ここが萃香になるかと思われます。
もう一人、「君」がいわゆる回想的に登場しますが、今際の際にも「君」を思い出していたいという旨の歌詞があり、おそらく「君」はすでにこの世にはいない人間でしょうか。
つまりこの曲も、Track.7で取り上げたような「いつか訪れる結末」系の歌ということになります。
「君」を特定できる情報はありませんが、萃香にとってそこまで思い入れのある人間はそこまで多くないこと、歌詞の中で儚さを憂いているものを「人」ではなく「人の夢」と表現していることから、自ずと対象は絞られてきます。
四季の移ろいを「螺旋」と称して、時の流れによって「君」を喪った悲しみを癒やしていく――この曲ではそんな「僕」の様子が描かれているわけです。
「僕」が死を近くに感じるまでにどれほどの月日が経ったのかは想像できませんが、そこに『砕月』、すなわち「歳月」の意味合いがかけられているのは想像に難くありません。
1番サビとラスサビの末尾は「遥か彼方 知らない場所から僕を呼ぶ声がする」となっていて、1番の時点では春~秋の情景くらいしか情報がないので、唐突に出てくるこの歌詞にはクエスチョンマークが浮かぶことになります。
2番の歌詞で上記の背景が語られるため、そこでようやく真意が明らかになる、という洒落た構成となっています。
……あれ、ここで解説しちゃダメなやつじゃねコレ?
うん、まぁ、ここまでしっかり読む人いないだろうからヘーキヘーキ。
この曲の事は良く知ってるよ、ずっと聴いてきたもの
そういや霧になってるときって知覚どうなってるんだろ?
本当だ! 我ら鬼が人間に嘘を吐くものか!
demystify BEAST(原曲︰Demystify Feast)
同アルバムのリードトラックで、同じく709sec.さんが歌う英語歌詞の一曲。
709sec.さんの通常運転はこちら側。
アルバム名(Moon Crusher=月を砕く者)から察せるとおり『萃夢想』のアレンジ曲がラインナップされており、この曲もその一部です。
友人の謎行動の真意を探るような歌詞となっていますが、おそらくその友人が萃香なのでしょう。
最強格の妖怪である萃香を友人と呼べる立場のキャラと言えば……?
のんびり音楽聴いたり、みんなで歌ったり……夢が広がるねぇ
Saigetsu(サークル:Alstroemeria Records)
クールな声の綾倉盟さんと、かわいい寄りのmikan*さんのデュオが織りなすスタイリッシュなトランスアレンジの一曲。
春という季節そのものに想いを寄せる萃香の切ない心情が歌詞になっています。
サビの最後、掛け合いのように畳み掛ける部分がクセになるんじゃ……
原曲感は薄いですが、ラスサビ後は原曲まんまのメロディが流れてくるので「あ、そういえば『砕月』だった」と思い出させてくれます。
……いや、いいんかその説明で。
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