【東方Vocal曲紹介 Track.16】301

ただ前に進み続ける。
今は届かぬその影を、いつか追い越せるように――


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基本情報

【タイトル】
301
(さんびゃくいち)※たぶん

【サークル】
凋叶棕
(てぃあおいえつぉん)

【収録アルバム】※初出のみ記載
夢 [2016年]
(うつつ)※誤記じゃないよ

【原曲】

  • 広有射怪鳥事 ~ Till When?

出典:『妖々夢』5面ボステーマ
関連キャラ︰魂魄 妖夢(こんぱく ようむ)

評価

【オススメ度】
★★★★☆(並←→極)
Bメロカッコいい! 最高!
素直な曲なので物足りなく感じる人もいるかも?

【前提知識】
★★☆☆☆(少←→多)
マイナーキャラだけど妖忌おじいちゃんのことは知っておきたい。

【原曲度】
★★★☆☆(弱←→強)
サビ後半がよくわかる。
A, Bメロもほんのり。

【雰囲気】
★☆☆☆☆(軽←→重)
たとえ道のりは遠くても、師匠の背中を追い続け、いつかは超えてやる!

解説

2024年最後の投稿になります!
来年もなるべくがんばらず、ゆるゆるやってく所存ですので、みなさま何卒よろしくお願いします!

ちなみに大掃除というわけではありませんが、目次が長いの気になってたんで、ちょっとフォーマット変えました。
(過去の記事にも反映してます)

選定理由

必然性は特にないですが、最強Bメロだと思ってるので早めにご紹介したかった次第。
前回がちょっと5の倍数回ということで無理矢理関係ない曲入れてまして、今回はTrack.14の続きという側面が強いです。
そこで紫の式である藍の紹介を(強引に)したので、ゆかゆゆ従者組のもう片方(=妖夢)を出そうという流れ。

あとは、最近しっとりめな曲が続いてたので、爽やかな曲もそろそろ挟んどきたいなと。
この次の2曲もしっとり寄りなんで……

一応先に言っとくと、この曲を年末にやることは、Track.10が終わって次の10曲を考える段階で決まっていたとかいないとか。

原曲について

まずはタイトルの説明から。
こちらは「ひろありけちょうをいること」と読みます。
室町時代から見た南北朝自体を描く『太平記』、その一エピソードとして収録されているタイトルです。
伝染病で多くの人が亡くなり、その爪痕が深く残る中で奇妙な鳴き声を響かせる鳥が現れ、弓の名手として名を馳せていた隠岐次郎左衛門広有(おきじろうざえもんひろあり)さんを直々に指名する討伐クエストが発注され、彼は見事期待に応えましたとさ――と、ざっくりこんな感じのあらましです。

また、「Tell when?」は、ファンの間では「いつまで?」と訳されます。
通常英語をどう翻訳するかは、翻訳者やコンテキストによって多種多様となるわけですが、これに関しては他の選択肢はありえません。
なぜなら、広有さんが射落とした怪鳥が「以津真天(いつまで)」という名前だからです。
その命名理由は至極単純で、前述の「奇妙な鳴き声」がズバリ「いつまで」だったから。
これは、(伝染病で亡くなった人々の遺体を)いつまで放っておくんだ、という問いかけだったようです。
まぁ、神主さん自身が「Till When?はただのダジャレ」って言っちゃってるので、シリアスな背景の割にあんまり締まらないんですが……

ちなみに以津真天さんは大きな鳥ですが、頭は人で尾は蛇という立派な妖怪です。
飢餓に苦しみ息絶えた人間が妖怪となったもの……らしいんですが、妖夢とどのような関係があるのかは不明。
弓使わないしなぁ……
次作の『永夜抄』で自機化したときには、みすちーシメることになるけども。
(ちょっと掠るくらいでもいいなら、「餓鬼」の字が入ったスペルカード2種類ありますが)
妖夢個人を指すものというより、なかなか春が来ない春雪異変の最中にあるため、「いつまで冬が続くんだ?」という人々の思いになぞらえたタイトルにしているのかもしれませんね。

あ、曲の話をしてなかった。
上記の背景もそうですが、ゲーム的には敵の居城=白玉楼に乗り込まんとする自機勢がその直前で妖夢と接敵(5面道中)、軽い交戦の後に一度は退けるも、態勢を整え本格的な決闘が始まる――という、結構シリアスな場面で流れるものの、舞台に合った幽玄さは残しつつも意外とハイテンポで明るめな曲になってます。

はじめはどことなく『できるかな』に似た愉快寄りのリズムで、続けてそのフレーズは保ったまま緊張感のある伴奏が付加されます。
サビではそのどちらからも解放され、雄々しくもミステリアスな展開に。
上記のダジャレとともに、以津真天という「謎めいた妖怪」をイメージした楽曲であるとコメントしている神主さんですが……一体何を考えたらこんなメロディが出力されるんですかねぇ?


※【Topics!】半人前の半人半霊、魂魄妖夢――
妖夢さんは白玉楼で庭師をしている辻斬り剣士で、主人である幽々子の警護も担うほか、幽々子に剣術指南をしたりもします。
(なお、お給料やお休みはない模様)
ちなみに庭の幅は200由旬とされており、1由旬の定義はまちまちですが、仮に7kmとすると1400km――なんと鹿児島の桜島から青森の恐山くらいの距離!
それはもう庭ではなく国なのでは……
一応、1由旬=100m説もあるため、20kmくらいならまだ現実的……いや現実的か?

しまむらで見かけそうな衣装白と緑がイメージカラーで、周囲に浮かぶ雫型の幽霊が特徴的。
この幽霊はまさしく妖夢の半身で「半霊」と呼ばれており、人間部分と物理的に繋がっているわけではありませんが、不可分の存在となっています。
半分は幽霊ということで、少なく見積もっても人間の4〜5倍という寿命を持つ妖夢ですが、そもそも半人半霊の家系に生まれた様子。
幼少期、それまで300年もの間庭を守っていた先代かつ剣術の師匠である妖忌(ようき)から突然後を継がされ、行方をくらませたその背を追って日々修行に励んでいます。

奔放な幽々子に振り回されることが多く、二次創作でもおおよそ似た扱いを受けています。
ピンクの悪魔の食費に悩まされたり、主人と主人の友人からコキ使われたり、その友人様の従者がスペック高すぎてコンプレックスを抱えたり……となかなかの苦労人ぶりで、境遇に耐えかねて暴走することも。
いずれにせよ「未熟」な部分を強調される描写は恒例となっており、怪談が苦手という総ツッコミを受けそうな公式設定を追い風にして可愛い方向に振り切ったり、『萃夢想』での「斬ればわかる」発言から繰り広げられる問答無用ムーブをベースにバーサーカー化させるなど、多種多様な育成方針(?)を楽しむことができます。

その未熟さと東方では珍しい剣士の出で立ちゆえか、次作『永夜抄』では早速の自機化。
その後『萃夢想』『花映塚』にも立て続けに自機として登場し、一時は咲夜さんと並んで準レギュラーのような立ち位置を確立しました。
『風神録』以降は出番が減っていますが、自機キャラとなる機会もありますし、書籍作品での活躍もあるため、今でも手堅い人気を維持しているキャラクターです。

戦闘においては、獲物の長刀「楼観剣」と短刀「白楼剣」を振るう二刀流。
楼観剣は幽霊特攻の性質を持つ強力なメイン武器、白楼剣は「迷いを断つ」ことで霊の成仏や自身のバフなど様々な応用が可能なサポート武器です。
弾幕戦ではこれらを媒体として、主に鱗のような形状の弾を放ってきます。

ちなみに『妖々夢』で初登場したときの妖夢(通称YYY)は、半身になって二振りの一方をこちらに突きつけて牽制しつつ、もう一方を後ろに引いて強い一閃を放てるように構えるイラストになっています。
なっているのですが、どこかみょんなそのデザインはインパクト強いので一見の価値あり。
……ハッ!? お…お前は!!
妖々夢妖夢!!! (エンダアアアアアアアアアアア


感想︰曲調とボーカル

なんか原曲と妖夢の話で結構な尺を取ってしまった……
気を取して紹介曲の内容に移りましょー

ボーカルはTrack.11と同じく、安定と実績のめらみぽっぷさん!
今回はサビよりもBメロでそのカッコよさを如何なく発揮していただいております。

全体を通して原曲の構成に沿った爽やかアレンジとなっていて、A→B→サビを緩(弱)→急→緩(強)といった感じで紡いでいきます。
必然的にBメロが強調されることになりますが、原曲では妖しげな緊張感を重視しているところを、ここでは大きな壁を乗り越えようとする武者震いのような緊張感に上手くアレンジされています。
東方Vocal全体を見渡しても屈指のカッコよさを誇るBメロだと思っているので何卒!
……あれ、実はあんまりハードル上げないほうがいいんかなコレ?

ちなみに一番最後はラララ締め(今命名)です。
ある意味前向きな感じが一番出ていて、聴いてて元気になれるところですね。
このラララ締め、てぃあめら曲あるあるなアレなので、凋叶棕さんに興味を持っていただいた方は少し意識しといてもいいかも。
また最後にララララ言ってるよ〜
カラオケでここを歌えるかどうかで聞き込み具合がわかるやつですね。
ま、配信されてないんですけども!

変な捻りがない曲なので、めらみぽっぷさんも結構素直に歌っている印象があります。
凋叶棕さんの中では珍しく考察とかあまり気にせず聴ける曲になっているので、凋叶棕ローテを組む場合には貴重な休憩枠になること請け合いです。
自分も家でリモートワークしてて気が滅入ってきたときは、気分転換にこの曲の口笛吹いたりしてます(上手いとは言っていない)

感想︰歌詞

最初にアルバムの説明からしておきます。
この曲が収録されている『夢(うつつ)』ですが、地上7階から地下7階に下っていく構成のアルバムとなっています。
地上/地下ともに偶数の階がボーカル曲、奇数の階はインスト曲です。
ボーカル曲が3曲なのは、おそらく睡眠のステージ(レム→N1~3)に倣った数なのかなと勝手に思ってます。

地上曲は「良夢」、地下曲は「悪夢」という設定になってまして、今回の紹介曲は4F、つまり良夢側の曲です。
見ている夢の内容も様々ではありますが、この曲の場合は妖夢が妖忌の夢を見て「私も立派になるぞー!」と決意を新たにしている感じです。
(この曲には)バッドエンドなんてないから安心していいぞ。
そして地上と地下の境には――

さて、そんじゃあ本題の歌詞に移り――たいところですが、その前に曲名の「301」って何よ、という疑問を持たれている方もいそうですね。
実は歌詞にも「三百一年」という形で登場するのですが、要は時間を表す数字となります。
どっから来た数字やねーん! とツッコみたくなる気持ちはよく分かる。
ただ、明確な言明がないのできちんと回答できないんすよねぇ……

ただ、おそらくコレだろうというアタリはついています。
上記の【Topics!】にも書いている、妖忌が幽々子に仕えていた期間です。
もちろん精確に300年というわけでもないので、おそらくこのプラス1年は、代替わりを示唆するものではないかと思われます。
後任を命じられたものの、まだ幼く半人前の妖夢は、自分がまだ妖忌の持っていた役割を果たせていないと感じており、300.5を301にしようとしているわけです。

ちなみに数学的には、301は「素数」であり「不足数」であり「ハッピー数」でもあるそうです。
これだけならほかの数字(15とか)もあてはまるのですが、上記の300年の話も含めると、半人半霊半人前の妖夢が見る良夢としては「これしかない!」と思わされる納得の数字ですよね!

歌詞の中で、夢の中の妖夢は強く現実を意識しており、幻を視るのではなく「こうありたい」という正真正銘の夢を見ています。
ゆえに、サビの最後にある歌詞は「昨日の自分より、弱いままではいられない」「明日の自分が、今より先にあると信じて」という決意の形をとっています。

己の未熟に思い悩んだり、文字どおり地を這うような仕打ちを受けても、プラスに捉えて前に進み続ける――その姿は、夢の中とはいえとてもカッコよく映りますよね。
自分も一緒にがんばりたくなります。
共感型の応援歌、とカテゴライズしてもいいかもしれません。

最後に小ネタですが、この曲にも謎ルビが振られています。
3回あるBメロのそれぞれ同じ部分、
 ・100回中100回打ち負かされてからの「百一度目」
 ・白玉楼の庭幅=200由旬を越えた先の「二百一由旬目」
 ・妖忌が庭師を務めた300年を受け継いでの「三百一年目」

これらはすべて、「このさき」と読みます。
それを表す尺度や観点は違っても、妖夢はその先に常に同じものを見据え続けている、ということでしょうか。
それは、妖忌自身というよりも、その妖忌が辿り着こうとしている境地のことを言っているようです。
師ですらも「長き道の途中」にあるのならば、私は「いつまで」――

途方もない「このさき」を前に妖夢は怯みかけますが、迷いを断ち斬り妖忌の影に立ち向かうことを自分自身に誓いました。
その誓いは間違いなく、次の一年(ひととせ)の妖夢を強く成長させることでしょう。

というわけで、お後もよろしく今年最後の記事を締めたいと思います。
それではでは、みなさまの初夢がよきものであることを願って!

聴けぬ曲などあんまりない!

カラオケで歌える曲はあんまりなかったりする。
東方Vocalゆえの苦しみ。
でも今回はJOYSOUNDで歌える曲を取り揃えております!

妖怪が鍛えた曲……ではありませんが

  • be your sheild(原曲︰東方妖々夢 ~ Ancient Temple)

同じくてぃあめら曲から、妖夢が今度は幽々子を想って決意表明する一曲。
今回の紹介曲との直接の繋がりはありませんが、原曲は5面道中なので、こちらを先に聴いてみるのもいいかもしれません。
妖忌も「我が師」としてチラっと歌詞に出てきます。

未熟な部分を深刻な悩みとして捉えている節があり、内容は今回と比較すると結構重め。
もちろん妖夢は盾持ちじゃないので、我が身を盾にする系のアレです……
幽々子さんが重ロリになっちゃうから装備重量増やすのよくないよ。
え、幽々子って「重」だけど「ロリ」じゃな (コメントが白楼剣に斬られる音)

取り敢えず、聴きに来た。話はそれからだ。

  • 幻奏幻花、届かずの音色(サークル:EastNewSound)

EastNewSoundさんが送る広有さんのトランスアレンジから、いつまでも春を探し続ける一曲。
このサークルさんはボーカルが原曲無視なケースが多いのですが(演奏は原曲)、この曲においては特にサビがかなり素直に原曲を追っています。
ちなみに歌っているいずみんさんは男性ですが、サークルとしては女性ボーカルの曲数が多いです。念の為。
2番の歌詞が厨二感満載で、いずみんさんのクールな声と合ってていいんですよね……

今後紹介できるか不安なので先に言っておくと、EastNewSoundさんは『{漢字4文字}、{漢字2文字}ノ{漢字1文字}』という曲名のシリーズが有名でして、特に『緋色月下、狂咲の絶』というフランちゃん曲は高い人気を誇っています。
殺してあげる系のクセ強ゆえのカルト的な人気ではありますが、この曲とそのアレンジがびっしり詰まったアルバムも出たくらいでして……
ん? オンリーアルバム? どっかで聴いたなぁ?(年末の原点回帰)


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