【東方Vocal曲紹介 Track.19】Story
ふとしたキッカケで、暗い日常は色鮮やかに輝き出す。
一度駆け出したこの足は、もう誰にも止められない――
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基本情報
【タイトル】
Story
(すとーりー)
【サークル】
FELT
(ふぇると)
【収録アルバム】※初出のみ記載
Rebirth Story [2011年]
(りばーす すとーりー)
【原曲】
フラワリングナイト
出典:『花映塚』vs十六夜咲夜テーマ
関連キャラ︰十六夜 咲夜(いざよい さくや)
評価
【オススメ度】
★★★★★(並←→極)
美歌さんらしい、聴いている人に寄り添ってくれる曲。
【前提知識】
☆☆☆☆☆(少←→多)
いらないです!
咲夜さんよりも自分の姿をイメージしたほうが気持ちよく聴けるかも!
【原曲度】
★☆☆☆☆(弱←→強)
だってFELTさんだもん。
微かに原曲っぽいなと感じるところはあるかも。
【雰囲気】
★☆☆☆☆(軽←→重)
暗いところから明るい外に連れ出してくれそう!
(メインの場面は夜更けだけど)
解説
いつの間にか20曲目が目前に……意外と続いてるなぁ(他人事)最初の10曲ですら結構怪しいと思ってたのに「スキ」の力ってステキですよね!
選定理由
今回は満を持して、FELTさんのボーカル三人衆の最後の一角、美歌さんのご紹介です!
ふぃ〜、ようやくここまで辿り着いたぜぃ……
前回も咲夜さんでしたが、原曲は違うのでご安心を。
以前に咲夜さんを取り上げた回では、登場する前にお亡くなりになっていたり、お仕事で失敗しているところを晒されたりと、振り返れば散々な仕打ちをしてしまっているため、心からの謝罪と名誉回復に努めていく所存であります><
……過去の紹介記事を読んでくださっている稀有な方にはもうバレバレだとは思いますが、そんな感じでぼくの推しキャラは咲夜さんです。
ホンマか工藤、って疑われると証拠を提示できないですが、抵抗くらいはさせてください。
個人的に人型のぬいぐるみはちょっと苦手で、基本収集対象に入らないんですが、唯一の例外が咲夜さんです。
こんな感じ↓
普段行かないゲーセンに立ち寄った際、友人がお手洗いで離れている浮いた時間に、なんとなく見つけてコインいっこ入れたらゲットできてしまった……というなんとも絶妙なご縁ではあるものの、以来自室でぼくを見守り続けてくれている「大切なもの」です。掃除とかはしてくれない
一応ちゃんと調べたところ、どうやら2017年の商品らしいですね。
へー、なんか思ったより最近じゃん……ん? は、8年前!? ……グフッ(精神ダメで死ぬ音)
あ、この企画の中で贔屓にするつもりはないのでご安心を。
この曲も、仮に咲夜さん関係ないと言われても好きになっていたと思います。
というか、初めて聴いたときは原曲もキャラもわからなかったですけど、迷わずお気に入りに追加した程度の曲です。
そんな感じで、これまでもこれからも、本当に楽曲として好きなものしかピックアップするつもりはありません。
もちろん、ある程度サークルなどのバリエーションは持たせるように調整入れることはありますが……
原曲について
前回触れた『月時計 〜 ルナ・ダイアル』は、異変解決を阻む「敵」として登場した咲夜さんのテーマでした。
今回は『花映塚』で、お嬢様の命により霊夢たちと同じ異変を追う「ライバル」としてのテーマです。
『月時計』は激しめのロック調でしたが、こちらは麗しいクラシック寄りの音使い。
ストーリー上でもあまり決闘の必然性を感じていない様子のため、敵対者としてよりメイドとして接待する咲夜さんを描いた曲なのかもしれません。
(思えば『花映塚』だとあんま能力(※)使ってないな……)
といってもスローテンポというわけでは全然なくて、むしろ原曲の中でもかなり走ってる部類。
長い音があまりなく、常に何かしらの音を鳴らしてる感じで、音楽の素人でもなんとなく「ピアノで弾けると気持ちよさそうだなー」という印象を持ってます。
タップダンスも合いそうだけど、足が死にそうだな……
メロディの大枠は2種類と非常にシンプルな構成で、サビと呼べる部分と、サビ間を繋ぐ少しゆったりとした間奏部分に分かれます。
間奏部分はピアノとベースがメイン。
高揚感のあるサビから一気に音が少なくなるので、その落差もハマる一因になると思います。
飽きずに聴いていられる曲ですね。
ビートまりおさんによる超高速アレンジ『ナイト・オブ・ナイツ』のメイン原曲としても有名……な、はず。
ある種の伝説と化しているアレンジ曲ではありますが、なにぶん誕生が17年半前というレトロに片足ツッコみかけてる曲なので、最近では音ゲ界隈に触れていなければあまり聴く機会がないかもしれません。
インストアレンジなのにオンリーアルバムが出てるとかいうバケモン・オブ・バケモンなんだけどなぁ。
現在は公式Youtube(上記曲名のリンク)か、Spotifyなどの音楽サブスク、またはNintendo Switch / Steamで遊べる『東方ダンマクカグラ ファンタジア・ロスト』が、おうちで健全に視聴できる手段でしょうか。
※【Topics!】時止めだけじゃない! 咲夜さんの便利能力の真髄に迫る――
Track.7でも軽く触れていますが、咲夜さんの「時間を操る程度の能力」は、単に時間を止めるだけではなく、高速化/低速化も可能。
戻すのだけは無理、ってのも結構定番な設定ですね。
さらには相対性理論にもとづいて、時間の流れを調整することで空間を歪ませる(狭くする/広くする)こともできます。
あのDIO様よりも柔軟で強力な能力だとォ!?
なぜ一介のメイドさんがこんな能力を持っているのかは謎。
A secret makes a woman woman…
主な応用先が家事というのは前回の【Topics!】のとおり。
一方の弾幕勝負では、ナイフを大量に投げて相手の近くで一時停止させるものがほとんどで、その恵まれた能力も十全には活用しきれていないご様子です。
「どうあがいても避けられない攻撃はNG」というスペルカードルールの制約によるものと思われますが、投げたナイフをせっせと回収していることも考えると、もうちょい違う戦い方を考えたほうがいいんでは……? と正直思っちゃいます。
もっと素手でロードローラー投げるとかさ!
(そういうのは紫さんがやってくれそう。電車持ってきてるし)
ご本人(固有名詞に非ず)の申告では、「無質量+超高速で動いてるだけ」とのこと。
なにいってだこいつ……って感じですが、要は光子(フォトン)になっているということでしょう。
なるほどね、完全に理解した。
――できねーよ!
ナイフの時間停止を見てもそうですが、明らかに自分の他の空間・物体に干渉しており、しかもその対象や持続時間を細かく制御しています。
これらはただ高速もとい光速で動くだけでは説明がつきません。
脳ミソどうなってんねん……いや、もしや感覚でやっているのか?
先天的に持っている能力であれば可能かとも思いますが、そのあたりについては残念ながら情報がありません。
咲夜さんの出生の謎については『求聞史紀』でも触れられていて、そこでは元吸血鬼ハンターだったのでは? という阿求の妄想根拠の薄い推測が記載されています。
また、『永夜抄』のキャラ設定.txtでは、永夜異変の主犯とも言える八意永琳(やごころ えいりん)の紹介の最後に、サラッと「咲夜を見て大変驚く」と書かれており、この一文がファンの反響を呼びました。
神主さんもこれについてコメントを残していて、『永夜抄』と密接に関連する書籍『儚月抄』にヒントがある、としています。
そこから、『儚月抄』の書籍群に多く登場する月人に連なる人物だとか、小説版に登場する木花咲耶姫(このはなさくやひめ)の関係者だとか、いろいろ考察が行われています。
結局真相はわからずじまいのまま、『永夜抄』から20年、『儚月抄』関連作品群の連載終了からは15年が経過してしまいました。
ただ、冒頭に書いたとおり、謎に包まれているところも咲夜さんの魅力のひとつ。
今後も時々登場しては意味深な言動をチラ見せしていただいて、同士沼るファンが増えていってほしいですね。
感想︰曲調とボーカル
まずは美歌さんのご紹介から。
ボーカル三人衆の中では立ち位置がやや特殊で、原曲を持たないオリジナル曲を歌うことが多い方です。
(残念ながらそちらはこの企画でご紹介できませんが……『letter』は一度聴いてみてほしい)
舞花さんやVivienneさんは透き通った幻想的な歌声でアルバムの世界へとリスナーを没入させていくタイプですが、美歌さんは比較的地に足をつけた声をしていて、ゆえに心に優しく響くんですよね。
FELTさんもそんな特性を理解してか、美歌さんにはアルバムのラストトラックをお任せしていることが多いです。
つまるところ、アルバム世界から現実世界へ帰るための案内役を担っているということでしょう。
そんな事情もあって、美歌さんが担当される曲は静かでゆったりとした曲が多いのですが、今回は美歌さん節を残しつつも高揚感の強い曲となっています。
というのも、収録アルバムの『Rebirth Story』はFELTさんのベストアルバム第1弾なんですが、それまでにリリースされた4作品から選りすぐったもの+新規描き下ろしの曲から構成されていて、今回の紹介曲はその描き下ろしかつリードトラックであるため、インパクト強めな曲調になっているのでしょう。
タイトルを見てもアルバム全体のテーマ曲と考えていいと思います。
なんならその後ベストアルバムはすべて『Rebirth Story {2以降の整数}』となっており、ある意味でFELTさんの歩んできた「物語」そのもののテーマと言っても過言ではありません。
……たぶん?
原曲については正直なところ、注意して聴いてもなかなか気づけないレベルでアレンジされています。それってもうオリジナルって言っちゃっていいのでは?
暗い部屋に光が差し込んでくるような音から始まるイントロは、それだけで良曲を予感させるに十分。
小躍りするようなAメロ、助走をつけるようなBメロを経て、サビでは外に飛び出していくイメージが脳裏に浮かびます。
2番サビ前はタメのあとで一瞬音が消える演出があってハイハイあーもう神神!(説明放棄)
2番サビ後はシームレスに大サビへ移行。
大サビの途中、叶わぬ願いを天に祈るような長い高音の「Ah…」が胸に刺さるんよ……
最後は前半が落ちサビとなっていて、後半に入る直前に演奏が戻ってくるのですが、そのときの歌詞ととてもリンクしていて、落ち込んだ気分にもよく効きますねぇ。
その勢いはアウトロまで継続、最後だけポロンとピアノの音で静かに終わっており、そのおかげで慣性という名の余韻が心地よく耳に響きます。
総じて、最初から最後まで気持ちよく、かつ穏やかに聴ける曲です。
演奏には結構強いギターの音も入っていますが、美歌さんの歌によってその音も優しいものに変わっているのかもしれません。
カッコいい曲もかわいい曲も、悲しい曲も鼓舞する曲も、いろいろ聴いて自由に楽しむのはもちろん大切です。
それに加えて、最後に安心して帰ってこられる曲をひとつ持っておくのも、音楽をよりよく堪能するコツなんじゃないかなーと、強く感じた一曲でした。
感想︰歌詞
歌詞も美歌さんが担当しています。
というか、舞花さん担当曲も含め、FELTさんの曲における日本語歌詞の多くは美歌さんが生み出したもので、実は作詞側が本業だったりするかもしれません。
全体的な歌詞作りの傾向として、日常の中でふっと芽生えた気持ちに視界に映る景色を交えて描いたものが多く、一人ひとりの心に寄り添うような優しさがまぁ沁みるんですよね……
今回は、夢に向かって駆け出す人の背中を押してくれる歌詞となっています。
が、ただ前向きに応援するだけじゃないところがいいんです。
初っ端から「時間を止めてこなす日常」という歌詞があり、一般の方には不思議な表現に思われるでしょうが、東方ファンならこれだけで咲夜さんのことだとピンと来るはず。
ただ、その直後に溜息をついており、少し咲夜さんらしくない部分が顔を覗かせます。
変わり映えしない、なんとなく繰り返される毎日。
しかし、そんな停滞した景色の中にもふと美しいひと欠片を見つけて、明日へと向かう希望の気持ちを見出す――と、大体そんな感じの内容です。
ストーリーと呼ぶにはあまりにもプライベートで切り取り範囲が狭いですが、そんな日々の積み重ねがいつか物語としての質量を持ってくるのだと思うと、ありふれたごく小さな断片にも間違いなく意味はあるのかなーと感じさせてくれます。
夜を淡く彩る月明かり、その眼下で小さく揺れる花々。
いつもそこにあるものでも、その時々の心持ちで見え方は変わってきます。
晴れない悩みを抱えていた咲夜さんが、そんな代わり映えしないはずの光景を目にしたとき。
なぜか昇る月が愛おしく、花々は背中を押してくれているように感じられ、その瞳には希望が芽吹くほど輝かしく映ったようです。
(前回も「月」が登場してますが、その表情はまったく違いますね笑)
現実とは非情なもので、いつも物事が上手く進むとは限りません。
時には挫折が脳裏をよぎるほどの壁に直面することもあるでしょう。
そんな辛い気持ちを抱えた夜は、咲夜さんと同じように、一度空を眺めてみてください。
そこにはただ月が輝き、星が瞬き、あるいは雲が流れるだけ――それでも、あなたを拒むものは何もありません。
悲しみに涙を流しても、悔しさに拳を握りしめても、夜空は静かに受け止めてくれます。
そうやってしばらく深閑に心を泳がせていると、きっと気持ちも落ち着いてくるはず。
そして明日にはもう一歩を踏み出すことができるかもしれませんし、もしかしたらその一歩こそが壁を乗り越えるキッカケになるかもしれません。
……あ、夜風で身体を冷やさないようにだけは気をつけて!
こんなことを書いてるぼくもまた、咲き乱れる花々の一つということでしょうか。
お花というほどキレイな人間じゃないんで、そのへんの雑草扱いにしといてもろて。
たとえ雑草だとしても、夢を持って歩んでいるすべての人たちを心から応援する所存です。
とはいえ、この歌詞のとおり、遠くから手を振って、背中を押す仕草を見せるくらいしかできないですけど……
みなさんも一緒に音楽を聴きませんか?
前回のこのコーナーは異変解決モードな咲夜さんだったので、今回はメイド長モードで。自分で勝手に始めといてなんだけど、ここのネタ考えるのも結構労力が……
今日の曲はとっておきなんですよ
TODAY(原曲︰月時計 ~ ルナ・ダイアル)
美歌さんが歌う咲夜さんテーマのアレンジをもう一曲。
こちらはかなり落ち着いた、少し切ない曲調となっています。
上述したとおり、FELTさんに慣れ親しんだ方にとっては、こっちのほうが美歌さんらしいと感じることでしょう。
歌詞は今回の紹介曲と通じるところが多いです。
思い出を振り切って、時の流れを受け入れて、今日を歩んでいく――そんな内容になっています。
今回は水面下から空へ飛び立つようなイメージでしたが、こちらは水底から水面へ浮上するような感じですかね。
時に傷みを感じて夜空を見上げた咲夜さんにフォーカスした内容と言えるかもしれません。
余談、FELTさんという物語の終わりについて。
この曲は『Last Wink』というアルバムのラストトラックとして収録されているためか、穏やかな心で朝を迎える様子が、最後の瞬きを惜しみながらも目を開く、強い決意を感じさせます。
アルバムを買ったFELTさんのファンたちは、そのタイトルから「よもやこれは『最後の挨拶(=サークル解散)』という意味では……?」と気が気でなかった(※)のですが、今にして思えばこの曲はそんなファンの心境を予期して前向きに宥める役割を持っていたのかなと、なんとなくそう感じています。
※1stアルバムのタイトルが『Milky Wink』だったこと、また『Last Wink』がベスト含め30作目のアルバムとキリがよく、さらに9年目(2019年)の年末リリースだったことから、「10年目に締めのベストを出してお別れか」という予感がどうしても脳裏を過りました。
実際にはコロナ禍の影響で1年空きましたが、その予感はおおよそ当たってしまいました……
オリジナルアルバムも追加でリリースされたのは、よい意味で裏切られましたが。
まぁでも、FELTさんの活動に「一区切り」がついただけであって、完全に終わったとは微塵も思ってないけどね!
アバンギャルドなテーマソングですわ
Closed world(サークル:rythmique)
「自分の居場所」について思いを巡らせる咲夜さんの一曲。
なんとなーくラテンっぽい印象のアレンジです。
一純悠人(いずみ ゆうと)さんの芯のある歌声がよく似合っています。
原曲名を力強くに叫ぶBメロがとても印象的。
自身の出生についてふと思い出しつつも、現在の紅魔館での暮らしこそが自分の居場所であり守っていくべきものだと感じる、日常の中で生まれたちょっとした思いを綴った歌です。
幸せな咲夜さんでよかった……
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少女祈祷中…
(次は1週間の出張挟むのでしばらくかかります)
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