【東方Vocal曲紹介 Track.13】Puppet in the Dark
断ち切れ、闇より私を誘う傀儡の糸――
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基本情報
曲名
Puppet in the Dark (PartⅡ:Buried Away)
(ぱぺっと いん ざ だーく ぱーとつー べりーど あうぇい)
サークル
FELT
(ふぇると)
収録アルバム ※初出のみ記載
Sevens Head(2015年)
(せぶんず へっど)
原曲
聖徳伝説 ~ True Administrator
出典:『神霊廟』6面ボステーマ
関連キャラ︰豊聡耳神子(とよさとみみのみこ)
評価
オススメ度
★★★★★(並←→極)
英語歌詞が聞き取れなくても心で理解できるカッコよさ!
前提知識
★☆☆☆☆(少←→多)
神子の人となりを知っていると、歌詞に共感しやすくなるかも。
原曲度
★☆☆☆☆(弱←→強)
いつものFELTさん節。
雰囲気
★★☆☆☆(軽←→重)
歌詞に少し暗澹な部分もありますが、それを切り開くかのような展開がクール。
解説
月曜を報せる程度の能力になりたい。
選定理由
前回は『妖々夢』でしたが、そろそろ一度最初の10曲のカバー範囲から脱しておきたいという気持ちもあり、幽々子さまのコネを使って『神霊廟』までやってきました!
…………
……うーん、そろそろそれっぽい理由書くのも難しくなってきたな?
Track.4で、FELTさんには3人のボーカルがいることをちらりと説明しましたが、みなさま憶えてるよなおられますでしょうか?
そこから、何かしらの理由をつけて早いとこみんな紹介したいとウズウズしていた――というのが事の真相です。
もう1人の方は、また少し間を空けてからご紹介するつもりです。
さすがに続けて同じサークルさんをチョイスするのもちょっと……ね。
年甲斐もなくウズウズしていたのは、この曲がボーカルのVivienneさんにとっての――というだけでなく、ともすればFELTさんというサークルにとっての代表曲と言っても過言ではないレベルのインパクトを持っているためです。
サビに入ったときの電撃喰らったようなあの――っとと、この話はもうちょっと後にやんないとでした。
なお、曲名に「PartⅡ」とありますが、ちゃんとPartⅠもあります。
この曲の直前に収録されているインストゥルメンタルで、トラックこそ分けられていますが地続きの1曲となっています。
メジャーアーティストのアルバムでもたまーに見かける構成ですが(ミスチルの『蘇生』とか)、おそらく長くなるからイントロ部分を別曲扱いしたのかなーと勝手に思ってます。
一応微かに歌詞が入っていますが、PartⅡにあるものと同じ内容(のはず)なので、ここで取り立てて解説はしません。
記事タイトルで省略しているのは、単に冗長かなと思ったのと、PartⅠにも今ここで触れているのでまとめて扱っても嘘にならないだろう、という慢心からです。
原曲について
Track.7の『亡き王女の為のセプテット』以来となる6ボステーマ!です!
まぁ、特に原作で絡みがある組み合わせではない(悪夢日曜は除外)ので、だからなんだという感じではあるんですが……まぁ、一応、ね?
しばらくは淡々とした展開が続くため、他の6ボステーマと聴き比べると少し落ち着いた印象を受けるかもしれません。
(イントロ終わりのテッテッテン!が強いくらい)
サブタイトルにある「Administrator」は政治を行う人という意味もあるため、その強大さを表現する方向性として「したたかさ」を重視しているのかなーと勝手に想像してます。
言葉で表現するなら「貫禄」「風格」といったところでしょうか。
しかしもちろん、彼女の心の裡にもちゃーんと熱いモノが滾っておりまして。
2回目のサビまで聴いていくと、それが爆発するかのように急激な転換を見せ、異変のラスボスに相応しい「威厳」と「義烈」がプレイヤーを圧倒します。
やっぱ一瞬の無音を挟むのが好きなんだよなぁ。
ちなみに、タイトルの「聖徳」は「しょうとく」と読みます。
そう、かの有名な聖徳太子のことです(※)
憲法十七条や冠位十二階などが自然と連想され、True Administratorというサブタイトルにも説得力が生まれますね。
※【Topics!】現代に蘇る聖人、豊聡耳神子――
飛鳥時代に道教を学び、その術により不老不死を目指す過程で尸解仙(死を跨いで蘇ることで仙人となる)となった、数々の超常的な逸話を持つ偉人です。
外部要因により蘇生をしばらく邪魔されてしまったことと、その逸話を否定され始めたことで、現代の幻想郷で蘇るに至ります。
公式設定でも原曲コメントなどで名言されていますが、彼女はまさしく聖徳太子その人です。
「忘れられた存在が幻想郷に入ってくる」という東方世界の仕組みを知っていると、特に30代以上の方は驚く方が多いかもしれません。
まさか聖徳太子ほどの高名な人物が幻想入りとは……
しかし、現実に蔓延る科学は確実に伝説を蝕んでいました。
一万円札から姿を消し、その実在も怪しいとする学説が出てくるなどの時代の変化により、眠りに就いた状態のまま幻想郷に移動。
その気配を察知した『星蓮船』直後の白蓮たちが、封印を継続する目的でその真上に命蓮寺を建てたものの、それでも神子の存在に惹かれた神霊たちが付近に大量発生し始め――というのが、原作『神霊廟』のバックストーリーです。
なぜ女性になっているのかは不明。まぁ幻想郷は女の子じゃないと弾幕ごっこできないしな……
実際のところ、とある高名(ガチ)なお坊さんの妄想夢で、太子が建てたお寺のご本尊さまが「お前がどうしてもってんならTSして相手になってやんよ(超意訳)」と宣言した逸話があるようで、おそらくそのへんから設定持ってきたのでは? と推測されています。
二次創作ではその出自も相まって、有能な常識人(ただし軟派)枠に収まるか、飛鳥文化アタックを決めるかの二極化になりがち。
あと、耳髪がミミズクっぽいとネタにされることがありましたが、どこかの紅いコウモリとつるむ手書き劇場が人気を博したことで、界隈にかなり浸透したと思います。
(最近久々に投稿あってテンション上がり気味。今年の人気投票でもイラスト提供してたし……あんま意識してなかったですが、作者のかわやばぐさんのご活躍も選定理由のひとつかも)
感想︰曲調とボーカル
まずはボーカルの方のご紹介から。
Vivienneさんは主に英詞曲担当のボーカルさんです。
かなーりネイティブに歌い上げておられるのですが、どうやらご両親が国際結婚されているという背景があるようです。
透明感と力強さを兼ね備えたその声は、FELTさんの曲作りとよくマッチしていて、ボーカル3人衆の中ではもっとも曲調のバリエーションがあると思います。
アルバムが出るごとに「今回はどんな曲かなー」とワクワクさせてくれる方ですね。
ちなみにAメロの合間やラストに挟まる部分で歌っているのはW.novaという方で、主にVivienneさん曲のコーラスとして参加されています。
メインとなる曲はなく、最初から最後まで縁の下の力持ちに徹している非常にストイックなお方です。
この曲では珍しく単独でしっかり歌っているので、実は結構貴重かも……?
(なんならPartⅠはソロ曲と言えなくもない)
メロディは例によって原曲感少なめですが、Bメロ始めは比較的わかりやすいかと。
サビもベンベン鳴らしてる部分は原曲イントロとそっくり……かも(自信なし)
Aメロも裏の音に集中するとなんかそれっぽい感じがしないでもない。
FELTさんはよくセルフインストアレンジを出してくれるのですが、この曲に関してはリリースされておらず、一度ボーカル抜きで聞いてみたいところ。
なおカラオケ入りはしていない模様。
A, Bメロは緩急入り混じっていて、歌おうとすると結構難しそうですが、労せず聴いてる側としてはそれがクセになってきます。
特にBメロはメリハリも利いていて、アップダウンが激しいレースコースを走っているような気分が味わえます。
そしてサビはもう圧巻の一言。
クロスフェードデモの公開時、この曲が流れたときに「ヤバっ」となったのは自分だけじゃないはず。
爆発的な入りから、そのエネルギーが広がっていく最後のロングトーンは、後述する歌詞との親和性も高いです。
ラスサビでは入りの部分がほぼボーカルのみとなり、また違った表情を見られるのも好きー。
歌えるとめちゃくちゃ気持ちいいんだろうなぁ……
なお(ry
感想︰歌詞
この企画で初めての全編英語歌詞です。
もちろんFELTさんの専売特許というわけではないですが、「へーこういうのもあるんだ」くらいに思ってもらえればまずは十分かなと。
というか海外でも東方Vocal曲が作られたりしているので、なんというか、裾野の広さを感じますよね……
英語苦手なんでニュアンス間違ってたら申し訳ないですが、歌詞の内容をすげー雑にまとめると、「しがらみを振り払って自分らしく生きよう!」という主人公の心境を描いたものになります。
そういう意味では最初のAメロで完結している感じもありますが、ここで言う「しがらみ」は、成長に伴い好奇心(curiosity)が薄れてしまったところにあるようです。
原因はいろいろあると思います。
忙しくてそれどころではなくなったとか、単に心を動かすことに疲れを覚えてしまったとか、誰かから「犯人はヤス」攻撃を喰らったとか。
ただ、そうして言い訳をして自分がかつて持っていた気持ちを抑えこんでいる現状に対し、主人公は強い危機感に近いものを抱いていて、おそらくそれを「dark」と表現しているのかなと。
本当の気持ちは違うのに、自分ではない何かに操られるように生きている。
うーん、ぐうの音も出ないくらいグサグサ刺さってくるんですが、咲夜さんか誰かが大量にナイフ投げてないすか?
夜という暗闇の中でもまだ輝きを残している「本当の気持ち=何かを知りたいという意欲」、それを掴み取ろうとして主人公は立ち上がります。
いつもより、少しだけ強い力で、少しだけ大きな声を上げ、少しだけ遠くへ向かい――そして、その先にある「夜明け」を迎えるために。
ちなみに6面道中で流れる『小さな欲望の星空』は、原曲のセルフアレンジとなっています。
その曲名も踏まえた歌詞になっていると思うと、なかなかエモいものがありますなー。
私たちの現実に置き換えて考えてみると、もちろんその試みが非常に勇気が要るものであり、そして簡単に実を結ぶものでないことは容易に想像がつきます。
2番サビでは「自分は完璧ではない」ことを認めつつも、「何度でもトライする」という強い決意が示されています。
『ジョジョの奇妙な冒険』5部の「真実へ向かおうとする意志」ではないですが、その固い意志は必ずや主人公を夜明けに導いてくれるでしょう。
この曲では結末こそ描かれていませんが、原作の神子の進取果敢な様子を見ていると、答えは一等星よりも明白ですかね。
流石の私も十の曲を同時に聴くことはしません
不協和音がとんでもないことになりそう。
ちなみにあのヘッドホンぽいのは周囲の心の声を防ぐために付けているのであって、音声を再生する機能はない、はず……だよね?
なのでこちらの曲も単独でしっかり聴くこと
Liminality(原曲︰彼岸帰航 ~ Riverside View)
Vivienneさんが歌うもう一つの代表的な一曲。
特にアレンジの評価が高く、8分弱とかなり長い(おそらく最長)曲ではありますが、それをまったく感じさせないほどの没入感があります。
ホンマに二次創作でこのクオリティを吐き出してええんか……?
ライブ映えする曲でもあると思うので、ぜひとも現地で聴きたかったです。
でも実際聴いたら喜びのあまり泡吹いて昏倒しそう!(そして彼岸へ……)
あの曲も聴きたいという欲が漏れているぞ?
The Starry true(サークル:Liz Triangle)
Liz Triangleさんが歌う、ただ一人の声を求める神子の一曲。
恋愛か友情かは歌詞から判断できませんが、いずれにせよ神子さまにここまで言わせる「あなた」ってすげーな。
Bメロで原曲の印象的なフレーズを使っているところがいいんすよね。
ここあんまりボーカルと合わないと思ったけど上手くアレンジしてるなーって気持ちになる(後方仙人面)
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