【東方Vocal曲紹介 Track.10】色は匂へど散りぬるを
いつか枯れる命だからこそ、アナタを強く求めたい――
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基本情報
曲名
色は匂へど散りぬるを
(いろはにおえどちりぬるを)
サークル
幽閉サテライト
(ゆうへいさてらいと)
※他のサークルとの合同HPですが、リンガーハットで例えると浜かつとか長崎ちゃんぽんといったサークルがある(要は母体が同じ)認識でOKです。
収録アルバム ※初出のみ記載
色は匂へど散りぬるを(2010年)
原曲
神々が恋した幻想郷
出典:『風神録』3面道中テーマ
関連キャラ︰河城にとり(かわしろにとり)
カラオケ
DAM/JoySound
評価
オススメ度
★★★★☆(並←→極)
Track.1で紹介した『Bad Apple!! feat. nomico』に次いで、東方Vocalで最も有名な曲の一つであるため、この沼界隈に入るのであれば一度は耳にしておきたいところ。
特定のキャラに依存しないため、初心者にオススメしやすい。
前提知識
☆☆☆☆☆(少←→多)
不要!
強いて言うなら、冒頭に貼ったPVを手掛けるサークル「満腹神社」さんについて知っておくと、東方二次創作の世界が少し広がるかも。
原曲度
★★★★★(弱←→強)
大体ずっと原曲。
雰囲気
★☆☆☆☆(軽←→重)
幽閉さんのいつものちょい重恋心。
解説
祝☆10曲目!
選定理由
Track.8で主役を飾った古明地こいし、彼女が『地霊殿』で初登場した場所を憶えていらっしゃるでしょうか?
そうだね、守矢神社だね。
というわけで、こいしちゃんお出かけ先の聖地巡礼第2弾!
守矢神社の面々が初登場した『風神録』にちなんだこの曲をお届けする次第と相成りました。
実際のところ、最初の10曲は「原作」「関連キャラ」「サークル」「ボーカル」が被らないように気をつけながらチョイスしています。
(Track.5は少し怪しいですが、2個目の原曲はあんま使われてないんでセーフセーフ)
で、10曲目をどうしようかとしばらく悩みながら書いてきたんですが、Track.1で有名曲を紹介した以上はこちらも紹介せざるを得ず(謎の強迫観念)、せっかくだから最後に持ってきちゃえーって感じです。
一応、11曲目以降もこの縛りで多少続けられそうではあるのですが、これ以上は選曲時点での精神消耗度が残念なことになってしまうので、このあたりでいったん区切らせていただきます。
原曲について
『神々が恋した幻想郷』というタイトルからしてすでに名曲感が漂っていますが、決してその名に劣らないメロディが展開されます。
すごいのは、おそらく渾身の一作であろうこの曲を、3面道中という中途半端な(※)位置に据えていること、そしてそれでいてきちんと「道中曲」として完成されていることです。
ZUNさん自身も「コテコテの幻想郷節」と評していて、どこまで狙い通りかはわかりませんが、道中曲としては珍しく人気投票で常に上位にランクインしており、まさに幻想郷を代表するような一曲となっています。
※体験版では3面が最終面であるという背景から、ZUNさんとしては意識的に力を入れて作曲されているようです。
ストーリー上の場面としては、異変が起こった山の頂上(※)に向かって、主人公が渓谷に沿って登っていく途中となっています。
散りゆく紅葉が弾幕とともに流れていく光景もまた美しく、2面が少し暗い雰囲気なこともあり、華麗なBGMと併せてプレイヤーの心を一気に高揚させてくれます(紅葉だけに)。
サビから入る曲となっていますが、この時点でのゲーム画面は暗く、メロディも華やかではありますが比較的抑えめ。
Aメロに入ると徐々に視界が開ける演出となっています。
その後しばらくはゆったりめな旋律を聴きながら進路を邪魔する妖精たちを退治し、再度サビに入るタイミングで河童の河城にとりが中ボスとして登場する(1回逃げるけど)流れです。
Bメロ終わりには強い音をテーンテーンテーン!とテンポよく3連打、続くサビもそれに合わせてより華々しさが増したものになり、プレイヤーのテンションも上がりに上って盛大に事故ります(ピチューン!
……いや、実際、プレイに集中しているとBGMが耳に入らないことも多いのですが、この曲はそのフィルタを突破して脳みそを揺らしてくるパワーを持っています。
ゲーム中の背景は山腹ですが、この曲単独で聴いてみると、まるで山頂から空高く飛び上がって幻想郷中を360度見渡すような爽快感です。
はー、そら美しすぎて恋もしますわ(恍惚)
ちなみにタイトルで恋をしている神々ですが、『風神録』ではそのタイトルにちなんでか多くの神々が登場しており、幻想郷にいる神様ズを広く指しているものと思われます。
外の世界から引っ越してきた守谷神社の面々もそれなりの覚悟を抱えていたと思いますが、うん、幻想郷がいいところでよかったね!
と、喜んであげたいところなのですが、後の所業を思うと……
※【Topics!】博麗神社のライバル? 外の世界から来た刺客、守矢神社――
守矢神社は幻想郷に高くそびえる妖怪の山の上のほうに「最近建てられた」神社です。
最近建てられたというのは語弊があって、正確には「『風神録』の少し前に外の世界から転移してきた」のが実態。
近くの湖ごと引っ越すとかいうパワーワードもあるため、ガチで「転移」したものと思われます。
移転前は長野県の諏訪市にあったようです。
古くから信仰の地とされている地ではありますが、やはり現代では十分な信仰が得られにくくなり、苦肉の策として幻想郷に拠点を移すことを余儀なくされた――というのが、『風神録』もとい守矢神社出現の背景です。
現実の諏訪市には諏訪大社があるのですが、ここを元ネタとしている節があり、一種の聖地と化しています。
(行くのはいいけど、迷惑かけるのダメ絶対、リスペクト大事に)
守矢神社には、博麗神社と異なり祀っている神様がきちんと存在していて、三柱の神々が実際に暮らしています。
まずは二次創作でお父さんポジを確立している八坂神奈子(やさか かなこ)。
原作でも守矢神社のメイン神様として扱われており、参拝時は基本的にこのお方からご利益をいただくことになります。
蛇に通じる環状の注連縄を背負っているのが特徴的で、決闘時はさらに数本の御柱を周囲に展開し、圧倒的威厳を見せつけてくれます。なんかガンキャノンっぽい
(諏訪大社では「御柱祭」という有名な祭事が行われています)
お母さんポジにいるのは、見た目は子供、神格は伝説級のカエルっぽい神様、洩矢諏訪子(もりや すわこ)です。あーうー。
巷では「ケロちゃん」の愛称で呼ばれることもありますが、公式というかスペカ名で自称してるのよねコレ……
シルクハットに似た形状の大きな帽子のてっぺんには、一対の目が付いていて、なんとキョロキョロ動いて瞼もないのに瞬きします。帽子本体説
で、そんな二柱の子供枠にいるのが、巫女兼弟子の現人神、東風谷早苗(こちや さなえ)です。
大体緑と青の霊夢みたいな感じ。ルイージ言うな
正式には巫女ではなく風祝(かぜはふり)というらしく、本人もたびたび修正をしていますが、幻想郷では霊夢の印象が強いせいか若干の諦めムード。
外の世界では女子高生をやっていて、幻想郷に来たばかりのころは文化文明の違いに戸惑っていたものの、次作『地霊殿』でのゲスト出演などを経て常識に囚われない境地に至ったようで、その次の『星蓮船』では早速自機の一人に選ばれました。
感想︰歌詞
実はあんまり語ることがなかったり……
少女が抱く片思いの恋心を描いた歌詞となっています。
幽閉サテライトさんの歌詞はポップな恋愛ソングといった印象のものが多く、恋の駆け引きや切なさなどがよく歌われています。
幻想郷の美しい風景を「色」に託しつつ、また「散る」という表現からは『風神録』の季節である秋を想起させ、原曲タイトルも踏まえて一つの「恋」の輪郭を象っているわけです。
「恋」という言葉が歌詞中に一切出てこないのもよきよきのよきです。
もちろん、タイトルにもなっている『色は匂へど散りぬるを』は、説明するまでもなく「いろは歌」冒頭の一節です。
現代でもその内容は解釈が確定しておらず、諸行無常を歌ったものとする説もあるようですが、それをこの原曲に当てて恋心に落とし込むセンスが素晴らしいですね。
ちなみに、原曲が流れる3面道中では紅葉が舞っていると前述しましたが、日本で最も多く見られる種が「イロハ」モミジだそうです。
おそらくここからの連想と考えていますが、果たして真相や如何に。
さて、幽閉サテライトさんの作風の別の側面として、歌詞内に直接キャラを絡めてこないという特徴があります。
もちろん楽曲により差はありますが、基本的にフレーバー程度の扱いで、キャラに近くてもイメージソングのような曲が多いです。
しかも今回の原曲は道中曲であり、特定キャラのテーマというわけではない(にとりが中ボスとして登場しますが、彼女のテーマは別にある)ため、いったん東方のことは頭から外して聴くのがいいかもしれません。
ま、一番はやっぱり「PVも一緒に再生」ですけどね!
感想︰曲調とボーカル
原曲を可能な限り活かしつつも王道なポップに落とし込むのが得意な幽閉サテライトさん。
もちろんこの曲も原曲要素モリモリです。
東方Vocal界隈を年代で切り分けていくと、2000年代後半は比較的原曲に忠実なアレンジを行うサークルさんも多かったのですが、2010年代に入って参入サークルが増えてくるとその分アレンジの幅も増していった印象です。
逆に言えば、原曲に従うばかりだと差別化を図りにくかったり、それが縛りになってオリジナリティを発揮しにくくなってきていた、ということでしょうか。
そんな中で、高いレベルでの両立を実現したこの曲の登場は、界隈に大きな衝撃を与えました。
以降、界隈全体の競争もより活発化した印象で、その嚆矢としての貢献は非常に大きなものでした。
(黎明期を支えたニコニコ動画では、いわゆる「ネタ曲」の割合が大きかったですが、このあたりから動画視聴サービスへの依存が減り、音楽文化としての独立を進めていった印象です)
幻想郷らしさに重点をおいた原曲のため、アレンジも和風テイストに。
幽閉サテライトの代名詞的なボーカルのsenyaさん(現在はサークル引退)が、その優雅なメロディに美しい歌声を乗せており、初っ端のフレーズから「あっ、この曲すごい」と思わせてくれるインパクトがあります。
静かなサビから始まり、直後の間奏で視界が広がる展開は原作のシーンを彷彿とさせ、原曲へのリスペクトを感じさせるのもいいんですよねぇ。
また、東方Vocalでカラオケと言えば、まずこの曲が筆頭に挙がるでしょう。
(同じく東方Vocal代表曲である『Bad Apple!! feat. nomico』は、カラオケ入りがかなり遅かったという背景もあります)
原曲の素晴らしさを十分に活かしつつも盛り上がりのあるアレンジ、senyaさんの味のある歌声、そしてそれらを3分ほどとコンパクトにテンポよくまとめ上げており、東方Vocalの中ではかなりカラオケ向きな楽曲となっています。
1曲目はまずここから、みたいなファンの方も多いのではないでしょうか。
実際、東方Vocal曲オンリーのカラオケランキングでは度々1位を獲得しており、これからも長く歌われ続けていってほしいですね。
ねぇ盟友、作った機械の音質テストに協力してくれない?
山の河童の技術力は世界一ィィィィ――――ッ!
いや、うん、ここでにとりさん出しとかないと、もう機会がない気がしまして……
まずはさっきと同じ人の歌から試そうかな~
月に叢雲華に風(原曲︰ラストリモート)
同じく『幻想万華鏡』で使用されている一曲。
もちろんこちらも音ゲなどのメディア展開が多く、知名度はほぼ同等と言っていいでしょう。
そして満腹神社さん制作のPVがあるのも同様です。
個人的にはBメロ部分が大好き。
対応する原曲部分はボーカルアレンジが結構厳しそうな印象だったんですが、そのハードルを悠々越えていったのは脱帽の一言です。
よし、じゃあ次はちょっと声質が違う曲にしよう!
Thank you 感謝!(サークル:COOL&CREATE)
東方という一つの文化を生み出してくれた神主さんに感謝を捧げる一曲。
ボーカルのビートまりおさんはZUNさんとも深い交流のある方で、『ナイト・オブ・ナイツ』に代表されるインストアレンジでも非常に有名です。
黎明期より二次創作界隈を音楽の側面から支えてきた立役者でもあります。下ネタ曲もあるのが玉に瑕
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