【東方Vocal曲紹介 Track.14】千ノ縁
また逢いましょう。
きっと必ず、泡沫の夢が覚めたとしても――
<< 前の曲
基本情報
【タイトル】
千ノ縁
(せんのゆかり)
【サークル】
Yonder Voice
(やんだー ぼいす)
【収録アルバム】※初出のみ記載
千ノ縁 [2016年]
(せんのゆかり)
【原曲】
ネクロファンタジア
出典:『妖々夢』Phボステーマ
関連キャラ︰八雲 紫(やくも ゆかり)
【カラオケ】
JOYSOUND
……で、一時期歌えてたんですけど;;
評価
【オススメ度】
★★★★★(並←→極)
和楽器を使用した独特な雰囲気の曲。
Aメロの歌い方が好き。
【前提知識】
★☆☆☆☆(少←→多)
安定のゆゆゆか曲@紫サイド。
【原曲度】
★★★☆☆(弱←→強)
サビは原曲感強め。
【雰囲気】
★★☆☆☆(軽←→重)
The 雅。
歌詞は若干愛が重い。
解説
ここだけの話。
月曜投稿にしてるのは、日曜夜に襲ってくる「明日から仕事だ……」という陰鬱な気持ちを「明日はこれ上げるぞー!」の気合で紛らわせるためらしいです。
(いわゆる「トヨタカレンダー」を採用してるトコなんで、祝日も仕事という悲しみ)
選定理由
前回、海外でも東方Vocalやってるよーって話をチラッとしましたが、その関連です。
Yonder Voiceさんは上海を拠点として日中を跨いだ活動をされているサークルですが、日本語歌詞の曲を提供してくれているので、アルバム聴いてるだけならあまり気にならないと思います。
東方Projectは「上海アリス幻樂団」が展開しているコンテンツなので、ある意味では本場と言えるかもしれない(錯乱)
実際神主さんも現地のイベントに参加されたりしてますしね。
原曲、キャラ、歌詞のシチュエーションと、Track.6と被る点は多いですが、曲調についてはまったくの別物になっています。
そのギャップ(アレンジのバリエーション)を楽しむのも東方Vocalの醍醐味……というか、これを楽しく思っちゃうと抜け出せなくなる沼要素です。一応言っとくけど被る要素が多いと解説省けて記事書くのがラクになるとか考えてないですよ?
あとはまぁ、Track.11以降、最初の10曲とサークル被りしてたので、そろそろ新しいサークルさんを挟んでおきたいという感じで。
次またあのサークルさんにするつもりなのもあって……ゴホンゴホン
何も考えずに進めてるからこんなことになるんやぞ、反省しろ!
しないけど!
原曲について
今回は『ネクロファンタジア』のみです。
曲についてはTrack.6で解説(?)済みなので、基本はそちらを参照してもらうとしまして。
実はExボス&紫の式神である八雲藍(やくもらん)(※)のテーマ曲『少女幻葬 〜 Necro-Fantasy』をベースとしたアレンジ曲となっています。
(単なるアレンジだけでなく、新しいフレーズが追加されたりしてます)
キャラと曲の上下関係が逆転しているのは面白いですよね。
ちなみに、紫のキャラに合わせて禍々しさと胡散臭さがプラスされた結果、思ったより違う曲になったとか。
※【Topics!】賢者を支える九尾の式、八雲藍――
紫は非常に強力な妖怪で、藍を自身の式神(作中では単に「式」と表記)として従えています。
そんな藍の正体は、知る人ぞ知る大妖怪、あの「九尾の狐」です。
それを屈服させた紫さんやべーな。
もちろん九尾たる藍自身ももともと強大な力を持っていた上に、式となったことでスパコンな並みの計算速度をも獲得し、カタログスペックだけなら全東方キャラの中でもかなり上位に位置する存在です。
その証拠に、藍もまた橙(ちぇん)という猫又の式を持っています。ちぇえええええええええん
東方キャラの中でも、式の存在が確認されているのは紫および藍だけ――という事実は、彼女たちの特異さを何よりも雄弁に物語っています。
(似た立場のキャラとしてはとあるバックダンサーズが挙げられますが、こちらは洗脳に近く式というわけではなさそう)
まぁ、幻想郷の管理者である紫さんはぐーたらしたいお仕事が忙しくて&冬眠時期をカバーしてくれる有能なお手伝いさんが欲しかっただけであって、普通の妖怪はそもそも式なんて必要としていないだけかもしれないですが……
上司が上司のためか、幻想郷の中でもかなりの常識人で、二次創作でも(ある一点を除いて)そのようなキャラで描かれることが多いです。ちぇえええええええええん(天丼)
その力を如何なく発揮して、「紫様の手を煩わせるまでもない」的なカッコいい一面を見せることもあります。
耳まで覆っているZUN帽は珍しく、どこか寝巻の一部っぽいので寝巻にされることもありますが、個人的なオススメは割烹着藍しゃまです(強い眼差し)
また、式化した時期については公式で明言されていませんが、かなり早くから紫の式となっていて、生前の幽々子も知る設定であることもそれなりに多「かった」ように思います。
過去形なのは、『獣王園』で畜生界からの脱走者であることが明かされたため。
九尾でも耐えられないブラック企業とは……
九尾の狐の逸話で面白いのは、やはり玉藻前でしょうか。
物語の内容というよりも、注目すべきはその年代。
玉藻前が取り憑いていた鳥羽上皇は、幽々子の父である西行法師より15歳ほど年上で、西行さんは出家するまで上皇の近衛兵を務めていました。
幽々子の元ネタである「西行の娘」は近衛兵時代に生まれていて、つまり玉藻前は幼い幽々子と面識のあった可能性が高い!
もしかすると、『妖々夢』で藍が出演することになった理由は、このあたりにもあるかもしれないですね〜
もちろん藍=玉藻前説は『獣王園』でほぼ完全に否定されていて、原作でも実はあまり幽々子と絡みのない藍さまですが、主人の友人に対して何を思っているのかは少し気になるところですね。
その主人からは、さすがにほぼすべての事情を聴いていると思いますが……でもゆかりんだからなぁ……
ごほん。
というわけで、ゆゆゆか物語では出番控えめになりがちでも、長い間2人のことを傍で見てきたのは間違いなく、今回のようなボーカルアレンジもその心境を想像しながら聴いてみると新たな発見があるかもしれません。しらんけど!
感想︰曲調とボーカル
メロディ自体はポップですが、琴や尺八も存分に使っていてかなり和風なアレンジとなっています。
原曲がわかりやすいのはサビの部分で、もともと激しめのサウンドだったものを、雅で嫋やかな方向に持っていってます。
落ちサビは散発的に琴が鳴るものの、ほぼボーカルのみで最も妖艶な時間帯となっています。
葉の先から雫が一つ水面に落ちる、みたいな演出がよく似合うアレです。
もう導かれるままに惹きこまれましょう。
先にサビの説明から入っちゃいましたが、Aメロ前のアバンでは初っ端からしゃらしゃらと煌びやかな光景が紡がれます。
しかし、Aメロに入ると急に静かに。
メロディの変化だけで場面転換があったことを察せるレベル。
Aメロはそのまま、フレーズごとに途切れ途切れ歌う感じになるんですが、それがもー大好物なんすよ。
(前もどっかでこんなこと言った気がする)
2番で少しパターン変えてくるのもよき。
Aメロ終わりからBメロの入りもたまらんです。
サビ以外のところに個性も詰めこんでる曲は聴いてて飽きないですね〜
ボーカルの瑶山百霊(ようさんひゃくれい|やおしゃんばいりん)さんの声はやや幼めで、少女が主役の東方Projectとは相性バツグン。
公式絵なら書籍『香霖堂』の唖采弦二(あさいげんじ)さん(※)によるちっこめの紫さんイメージですかね。
前述したアレンジの方向性とはややアンマッチに思われるかもしれませんが、ちゃんと声質に合わせてチューニングされてます。
丁寧な曲づくりをしているのが感じられて素晴らしい!
※名義は違えど某剣と魔法の世界でもお世話になっております!!
感想︰歌詞
まずはタイトルの『千ノ縁』ですが、もちろん読みとしての「ゆかり」で「紫」とかかっています。
また、縁を「ふち」と読むと、周辺部分の意味になるので、その点でも「境界を操る程度の能力」を持つ彼女のことを指している認識で問題ないでしょう。
では「ゆかり」の縁は何を意味する? という疑問についてですが――
先入観なく読めば、幻想郷をつくってきた過程で紫と関わってきた多くの人妖との繋がり、となるかもしれません。
一方で、後述の歌詞は「君」に捧ぐ内容となっており、おそらくここでの縁は、長い時間の中で紡がれてきた一筋の糸を指すのでしょう。
「千」年に及ぶ紫と幽々子の付き合いが、この曲の主軸として据えられている、というわけです。
さて、彼女たちの交友関係についてはTrack.6でもう触れているので天丼はしませんが、歌詞の内容を比較するとかなり大人な感じです。
ちょっと難しめな日本語が使われていて、現在の幻想郷の基礎が確立された明治時代の文学のような言葉遣いが散見されます(特に1番サビまで)。ルビなしで初見で全部淀みなく読める人、あんまりいないんじゃないっすかね、コレ……
あちらを青春の甘酸っぱさにはにかむ昼間の光景に喩えるなら、こちらは妖しさと儚さを織りこんだ夜の祭の景色と言えばいいでしょうか。
祭の綺羅びやかな灯りは、冒頭の歌詞にそのまま「万燈」として登場。
対して、1番Aメロ以降は「地に墜ちた」「諦観」など、夜の仄暗さを感じさせる表現が歌詞の所々に現れます。
とはいえ、幽々子が冥界の住人なので、死を想起させる言葉が使われることについては特に違和感はないと思います。
しかし幽々子は今も亡霊として確かに存在していて、幻想郷と冥界の境には生死という不可逆の壁があるものの、紫にとって気軽に会いに行ける友人であることに違いはありません。
じゃあ、この紫さんは一体何を憂いてるんでしょう?
「百万の眠り」を守る、という旨の歌詞が2番サビの最後にあります。
一日一眠と考えると2700年超、毎日二度寝しても1400年くらいかかるので、「百万」については単に八百万的な「とにかく多い」ことを表す表現だと思いますが、紫&幽々子の絡みで「眠り」と聞いて思い浮かべるのは――そう、墨染の桜「西行妖」の下に眠る生前の幽々子の遺骸です。
Track.6でも触れていますが、幽々子は亡霊としてある種の不老不死を獲得しています。
しかし、そのシステムを維持しているのは妖怪桜を封印している自らの肉体であり、幽々子本人ですらその事実を完全には理解していません。
ゆえに紫は、彼女を「守る」ためにも、その眠りを覚醒させるわけにはいかないということかなと。
そう考えると、同じく2番サビで「記憶」から映し出している「魂の片割」は、生前の幽々子を指している可能性があります。
亡霊として今を「生きて」いる幽々子と、かつて「生きて」いた幽々子。
紫はその境界でジレンマを抱えていて、そのジレンマが、さきほどの影がさした歌詞につながっているのかもしれません。
そうすると、落ちサビの「また出逢えるなら」という歌詞の意味も、少し違ったイメージに聞こえる……はず?
境界には似たものが集うと言いますし……ね?
幽々子のカラーも少し紫寄りだったり。
(帯部分とかに紫色を使っている)
神主さんは果たしてどこまで意識してキャラデザしているのか……
彼女と私の間は、何を以て隔たれているのでしょうか
決別の旅(原曲︰少女秘封倶楽部、童祭 ~ Innocent Treasures、ネクロファンタジア)
同じくYonder Voiceさんから、「もう一人」の紫ことマエリベリー・ハーンの別れを歌った一曲。
こちらはかなり切ない曲調/歌詞となっています。
原曲の使用順が、少女秘封倶楽部 → 童祭(間奏)→ ネクロファンタジア(Cメロ)→ 少女秘封倶楽部、となっていて、変わっていくメリーと、最後に思い出すようにかつての相棒への決別を歌う流れに、胸がキュッと締め付けられます。
ちなみに、Track.10でもちらっと紹介した二次創作アニメがなんと中国でも作成されており、この曲はそのOP曲として使われています。
『東方ダンマクカグラ』をプレイされている方は、そちらでも聴いたことがあるかも。
何を以てしても超えられない境界もあるのです
絶対的一方通行(サークル:凋叶棕)
紫=メリー関連の曲が出てきたので、ついでにもう一曲。
こちらは完全に紫化した状態で、追ってくるかつての相棒を強く拒絶する様子が歌われています。
サビの「~~するな」連打には背筋が震えます。
そして何もかも――
Track.3との直接的な関連があり、いつかは個別記事で紹介するつもりではいたんですが、あまりにも密接すぎて断念しました……
ん? 似た曲ばっかやってると解説することがなくなるからだろって?勘のいいガキは(ry
次の曲 >>
これまでの紹介曲一覧