大人の事情
― 勝手に作って勝手に壊して。
― うまく説明できない。でもそれしか選びようがなかったし、選んだことには少しの後悔もない。
親だって人間なのだ。それはそうなのだけれど、でもやっぱり悲しかったし寂しかったし怖かったのだ。自分なりに大切にしなきゃと思ったものを、大人の事情で取り上げられたらたまらない。
5年間。成長のダイナミズムには十分な時間。その時間に起こった出来事は血や骨や内臓といっしょくたになって十代の身体を大きくする。そして身体の一部になる。大人の事情をめぐる出来事は、のどに刺さった小骨のようにわだかまりとして残ったまま。
大人になるとわかること。親だって人間であること。そして、あのとき大切にしなきゃと思った気持ちは、そこにいた皆も同じだったこと。愛は皆で囲んだ食卓に間違いなくあったこと。
愛は食卓にある。大人の事情で食卓を囲む人間に血のつながりがなかったとしても。
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そんなことを、この映画を見て感じました。