アンサング・デュエット-非公式シナリオ【幻獣(あなた)の紡いだ後悔の念(キオク)】

はじめに

本シナリオは「どらこにあん」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『アンサング・デュエット』の二次創作です。
(C)Fuyu Takizato / Draconian
(C)KADOKAWA

また、本シナリオのワールドセッティングは朱石さんのイリュージョンシティを採用しております。


所要時間:1~2時間(推定)
シナリオの公開:OK、ネタバレ表記を推奨します
シフターの作成:どちらでもOK、シフターはカーバンクルなどの人外を推奨、あらすじを改変しない場合はフラグメントに頑固であることを必ず1つ入れてください
バインダーの作成:どちらでもOK、種族推奨もなし
推奨する関係性:大学院教授とその研究室に所属する院生
異界の発生原因:シフターが様々な異界から生還してきたことによる感情と記憶、異界に呑まれてしまった者たちを救えなかったことへの後悔の念


さあ、現地調査の時間です


このシナリオでは、シフターと一緒にたまたま迷い込んでしまった異界を調査という名の出口探索をすることになります。
現実の常識が通用しない空間で、何が起こるか分からない調査という名の冒険をお楽しみください

あらすじ(プレイヤー向け)


このシナリオのシフターとバインダーは共に、イリュージョンシティと呼ばれる多くの世界や種族が交わり、重なる世界のイリュージョンシティ大学院 異界学研究専攻に在籍する教授と院生で、次の学会で発表するテーマに関して2人で話しているところから始まります。

シフターは、過去幾度ととなく異界へ迷い込んでしまったものの、その都度生還してきた経験を持つ異界学研究の第一人者であり、バインダーを指導している教授です。
頑固なものの、いつもバインダーの意見は素直に聞き入れてくれますが、今回の学会発表に関しては「題材を変えろ」の一点張りで、なかなか意見を曲げてくれません。
バインダーはそんなシフターに対し、どうしてもこの題材で発表をしたいと説得していますが、話は平行線。

やがて、お互いに意見のぶつけ合いに疲れたのか、シフターの方から少し休憩して頭を冷やそうと提案されました。
バインダーは同意し、なにか飲み物を入れてきますと言って、研究室内に設置されていたポットのところへ歩いていきます。
ですが、バインダーがカップにお湯を注ごうとした瞬間。ふと意識が飛んでしまいました。
それからどれくらいの時間が経ったのだろうか。
バインダーが目を覚ますと、大学の図書館の中で倒れていることに気付きました。

ですが、おぞましいほどの違和感がバインダーを襲います。
そんな違和感に襲われながらも、バインダーが図書館の中を調べていると、椅子に座って何事もなかったかのように本を読んでいたシフターを発見しました。
ですが、その本はバインダーが知っている言語で書かれている本ではありません。

シフターはバインダーの存在に気付き、静かに本を閉じて顔を上げて見据えました。
そして、冷静な口調でこう言います。
「異界へようこそ、これから一緒にこの異界を調査しながら脱出する術を探そう。ただし、何があっても落ち着いて行動すること」

詳しいストーリー(GM向け)


このシナリオのシフターは、あらすじにも記載されている通り、幾多もの異界へ迷い込み、その都度変わるバインダーたちと協力し、異界から生還してきた経験を持っています。
ですが、無事に2人揃って毎回生還できたわけではありません。
バインダーが異界に呑まれてしまい、シフターだけがどうにか生還できた例も少なくはないのです。

シフターは、バインダーが自分のせいで犠牲になったことへの後悔の念を積み重ねていくうちに、異界に関する研究を行うため、血反吐を吐ききるような努力をして、イリュージョンシティ大学および大学院の教授となり、異界の研究に関する第一人者となりました。

犠牲になったバインダーたちを忘れない、その罪を一生かけても贖罪していく。
ですが、その強烈に焼き付いた記憶と後悔の念は、いずれ爆発して解放され、異界を生むほどの力となるくらいにまで膨れ上がっています。

ここで一旦話は戻りますが、バインダーが学会で発表しようとしていた題材は、異界に取り込まれてしまった者がどうなってしまうのかというもの。
シフターが頑なに拒んでいたのも、記憶がフラッシュバックし、後悔の念が強くなってしまう恐れがあったからです。

ですが、バインダーもこの題材で発表がしたいと譲らず、話は平行線化。
そうしている間にも、恐れていた記憶のフラッシュバックと後悔の念が強さを増し、シフターを内面から蝕んでいきました。
そして、シフターの方から休憩して頭を冷やそうと言ったのが引き金となり、抑え込まれていた記憶と後悔の念が限界を超えて爆発し溢れ出、異界を生み出してしまったのです。

シフターは、バインダーには表面上「調査しながら脱出する術を探そう」と提案していますが、本当の目的は、自分の過去と後悔の念に今一度向き合い、受け入れること。
だからこそ、自分が指導するものとして信用しているバインダーの力を借りようと思ったのです。

イリュージョンシティ大学院について


イリュージョンシティ唯一とも言える、最上位教育機関であるイリュージョンシティ大学に属する大学院で、異界学研究専攻以外には、魔法学研究専攻や現実の分野専攻も存在するかなり大きな大学院です。
もちろん、院生も教授も人間だったり、人間ではなかったり、エルフのような亜人だったりと様々。

サンプルシフター


本シナリオには、サンプルシフターが設定されており、以下のシフターを使用することですぐにプレイ可能です。
なお、シフターを新規に作成しても構いませんが、フラグメントによってあらすじやストーリーを一部改変することを推奨します。

■シフターデータ

名前:フィリス・リフィル・ライラ
種族:カーバンクル
性別:不詳
外見年齢:不詳、大きさは狐程度
所属:イリュージョンシティ大学 魔法学部 異界学科 / 同大学院異界学研究専攻 教授

■フラグメントボックス

・異界研究者
幾度となく異界へ行ってしまい、そして生還してきた。シフターはその知識と経験を元に研究者となり、教鞭を取った。

・謎の石がついた首輪
これがなければ自身の力を制御できない、もし切れるようなことがあれば…。

・額の石
カーバンクルという種族なら誰しも宿すアイデンティティ。

・超のつくバカ真面目
血反吐を吐ききってまで、研究に没頭してきたがゆえの性格。裏を返せば非常に頑固。だがバインダーであるあなたの意見は素直に聞く。

・冷静な判断力
幾多もの異界から生還したことで、あまり物事に動じなくなっている
それが吉と出るか凶と出るかは誰にもわからない。

・ふわふわの翼
いつもは浮遊しているが、この翼で飛ぶこともでき、無理をすれば誰かを持って飛ぶことも出来る。

■トークデータ
一人称:僕
口調:「~かな」「~じゃない?」「~だよね」「~と思うよ」という感じの真面目だが人によっては気にさわる話し方
口癖:「僕は邪魔されるのが一番嫌いなんだ」
設定:家系はそこそこいいとされているカーバンクル一族、ライラ家の出。
生徒会長系キャラと言った感じでとにかく真面目。
だが真面目すぎて融通がきかない面があり、学会でたまに他の研究者と意見が合わずに対立することすらあるという。
最近積もりに積もった異界に行ってしまった記憶と、後悔の念が爆発しかけている。

チャプター0 「おぞましき図書館」異界深度4


■状況説明

平行線をたどる話を一旦中断して休憩するため、カップお湯を注いで飲み物を作ろつとしたところで意識を失ったバインダーが意識を取り戻し、おぞましい違和感を感じながら図書館の中を調べていると、全く読めない言語の本を読んでいるシフターと再開したところからシナリオはスタートします。
図書館は、シフターとバインダーが知っている大学の図書館ですが、本はすべてバインダーが読めない未知の言語で書かれており、図書館内だけではなく窓からほのかに見える景色もおぞましい雰囲気を放っています。

■判定

このチャプターに判定はありません。  
適度にふたりでロールプレイを楽しんだ後、GMは結末を読み上 げて、次のチャプターへ進んでください。

■ロールプレイ方針

バインダーは、ここはどこなんですかと、まだ自分が異界に来てしまったことを認識できていない様子でシフターに聞いてみましょう。
また、その本には何と書いてあるんですかと、落ち着きを取り戻した上で聞くのも面白いかも知れません。
シフターは、ここが大学を模倣した異界であることを説明し、バインダーに異界は自然災害に巻き込まれた時と同じようにパニックになってはいけない旨と、自分に指導される立場である以上、万が一の指示には従うよう促してみましょう。

■結末

シフターはバインダーにそろそろ行こうかと告げ、本を本棚へ戻し、図書館を後にします。
バインダーは、シフターのほうが異界により詳しい先輩のため、遅れを取らないようついて行く…。

チャプター1 「悪意渦巻く講義棟」異界深度5


■状況説明

バインダーがシフターの後をついてくと、2人は講義棟へやって来ました。
やはりここもいつもの講義棟とは違い、おぞましい雰囲気に満ちあふれています。
その講義棟の中の講義室の1室へ入ったシフターとバインダー。
講義室の黒板には、シフターしか読めない異界の言語で書かれた落書きがびっしりと書き込まれています。
シフターはここで教壇に立ち、バインダーに改めて以下のことを説明してください。

・ここが異界であることは既に知っているようだが、第三者が原因の異界ではない
・この異界を生み出した原因はシフターである自分にある
・だが今はそれを話している余裕はない
・とにかく調査をしつつ、異界からの出口を探すことを目標とする
・何度も言っているが、異界でパニックになるのは非常に危険なことなので冷静になること
・そして互いの信用が崩れると脱出できないことだけは覚えておいて欲しい

バインダーはあなたの説明に納得し、出口を一緒に探してくれると言ってくれましたか?
OK、納得してくれたようですね。
では再び物語は動き出します、いよいよ判定です。

■手を繋ぐ

このチャプターでは、2人が接触することでバインダーの見えるものが以下のように変わります。
○講義室が朽ちかけた廃墟のように見える
○黒板に書かれている文字が読めるようになり「どうして」「裏切り者」「最後は自分が助かりたいだけ」などといった罵詈雑言であるとわかる

■判定「黒板に書かれている罵詈雑言から目を背け、講義室を逃げ出す」難易度:5

黒板を見ていた2人は、頭の中に今見えている文字が声となって響き始めていることに気付きます。
このまま見続けると精神的に良くない。
目を背けて、講義室を出なければなりません。

→2人とも成功した
どうにか頭の中に響いていた声を振り払い、講義室を出ることができました。
ロールプレイに進みます。

→どちらか一方だけが成功した
声を振り払った方が、声を振り払えなかった方をフォローし、講義室を出ることができました。
失敗した方のフラグメントボックスからフラグメントを1個選び、 「忘却」にチェックを入れてください。 
次に、フラグメントを「変異:強迫観念 → 一生かかっても償いきれない罪を犯した」へ変異させてください。
その後、ロールプレイに進みます。

→2人とも失敗した
頭の中に響く声を振り払うことができず、2人はその場でうずくまってしまいました。
2人のフラグメントボックスからフラグメントを1個ずつ選び、 「忘却」にチェックを入れてください。 
次に、フラグメントを「変異:強迫観念 → 一生かかっても償いきれない罪を犯した」へ変異させてください。
その後、ロールプレイに進みます。

■ロールプレイ指針

判定が終わったら、結果を基にロールプレイを始めましょう。
成功した場合は、これは幻聴だと確信するロールプレイや、始めから意に介さないといった「こんな幻ごときに屈しない」というロールプレイをするとよいかもしれません。
判定に失敗した場合は、自分が未だに後悔していることを強くあぶり出され、それにいきなり苦しめられるようなロールプレイをするとよいでしょう。
また、変異が発生した場合はどんな特徴や記憶が消えてしまったのかを思い出そうとしても思い出せない、それを罪と感じて多大なる罪悪感に苛まれるようなロールプレイも映えるかも?

■結末

講義室を飛び出した2人、バインダーは黒板に書かれていた文字と、シフターが異界を生み出した原因は自分にあると説明した点をどうにかつなぎ合わせようとしますが、パズルのピースが足りません。
何を隠しているんだと、バインダーはシフターに多少の不信感を抱きながらも、出口探しと異界の調査を続行しました。

チャプター2「異形が生まれる魔法学部棟」異界深度:6


■状況説明

2人はその後も異界と化した大学の中を調査して周りながら、出口を探して魔法学部の棟までやって来ました。
ですが、シフターは魔法学部棟へやってきた瞬間、表情を曇らせました。

「ここに出口を見つける手がかりがあるかも知れないが、今までの場所よりもっと嫌な予感がする」

シフターの言葉にバインダーは生唾をごくりと飲みこみ、2人で魔法学部棟へと入ります。
魔法学部棟も、講義室の作りは実習を行う部屋を除いて講義棟とそこまで変わりはない。
シフターと一緒に講義室を一つ一つ調べていくが、手がかりらしい手がかりは見当たらず、1階と2階を調べ終わり、3階の魔法実習室へとやってきた2人。

実習室の中は、魔法学部棟専用の照明である、火の魔法で灯るランプが今はとても不気味に感じる他に、学生が座るための大学特有の机というものが存在せず、ただっ広い空間が広がっている他、床には魔法陣らしき何かが描かれている。

■魔法陣らしき何かについて

バインダーがそのままの状態で魔法陣らしき何かを調べても、魔法陣の類であること以外は
理解できません。
ですが、魔法陣は今までにないほどに嫌な予感を感じます。
GMは、バインダーにシフターへこの魔方陣のような何かを調べるよう促してみましょう。

■判定「魔法陣から出てきた異形の存在から逃げる」難易度:6

手を繋いだことにより見えていた何かはやがて歪な人の形を作り、ゆっくりとこちらへ近づいてきた。
右手らしき箇所には剣のようなものを持っており、顔らしき箇所からはボソボソと「お前の罪を償え」「薄情者」という声が聞こえる。

「…っ、そんなまさか…」

冷静で、このような状況下でも動じなかったシフターが、突如嫌そうな顔に。
なおも歪な人形の何かは、同じセリフをボソボソとつぶやきながら剣を引きずり、迫ってきている。
この何かは、シフターを一刀両断しようとしています。
どうにかして、剣の振り下ろし攻撃が来る前に逃げ出さなくては!

→2人とも成功した
バインダーは、なんとか歪な人形の何か改め、歪な人形の追跡者の剣の振り下ろし攻撃からシフターを守り、そのまま逃げ出しました。
ですがあの追跡者は諦めずこちらを追ってくるでしょう。
ロールプレイに進みます。

→どちらか一方だけが成功した
バインダーは、守れはしたものの逃げるまでの余裕がなく、シフターを歪な人形の何か改め、歪な人形の追跡者の攻撃からかばい、剣で切られてしまいます。
バインダーのフラグメントボックスからフラグメントを1個選び、 「忘却」にチェックを入れてください。 
そして、フラグメントを「変異:大きな切り傷 → 致命傷ではないが、傷口はぱっくり割れており痛々しい」に変異させてく ださい。
その後、ロールプレイに進みます。

→2人とも失敗した
致命傷は免れましたが、バインダー、シフター共に歪な人形の何か改め、歪な人形の追跡者に切りつけられてしまいます。
2人を切りつけた際に、勢い余って剣が床から抜けなくなったため、歪な人形の追跡者は剣を抜こうと踏ん張り、こちらへの関心を失いました。
今のうちにと、2人は逃げ出しましたが、まだ歪な人形の追跡者は追ってくる気配がします。
2人のフラグメントボックスからフラグメントを1個ずつ選び、 「忘却」にチェックを入れてください。 
そして、フラグメントを「変異:大きな切り傷 → 致命傷ではないが、傷口はぱっくり割れており痛々しい」に変異させてく ださい。
その後、ロールプレイに進みます。

■ロールプレイ方針

判定が終わったら、結果を基にロールプレイを始めましょう。
身を挺してシフターをかばったバインダーがそのまま逃げ出すというようなロールプレイをすると、どれだけバインダーがシフターを信頼しているかと言うのが描けるかもしれません。
また、失敗した時に剣で切りつけられて苦痛に悶える様子を入れたり、傷を負いながらも逃げる際にもっと早く動いていればなどといった後悔の念に囚われるロールプレイを入れると、絶望感の増した雰囲気を描くことができます。

■結末

歪な人形の追跡者の追跡を一旦は振り切った2人。
ですが、姿は見えなくともまだこちらを追いかけてきているのは確信しています。
結局、出口への手がかりも見つからずじまい。
さらにシフターが歪な人形の追跡者と遭遇した時に見せた顔。
バインダーはそろそろシフターに自分が異界を生み出した原因だということについて、そろそろ語って欲しいと思いながら、次なる場所を目指す。

チャプター3「チェーンソー・オブ・グリーンハウス」異界深度:7


■状況説明

歪な人形の追跡者の追跡を避けつつ、どうにか魔法学部棟の裏手にある温室までやってきた2人。
温室の中から見える空は、昼間で明るいのに、月と太陽が同時に存在している他、雲の流れが異様なまでに速い。

とここでバインダーはシフターに、いい加減自分がこの異界を作り出した原因であることの詳細を話すように迫る。
シフターは歪な人形の追跡者が近くに居ないことを確認し、話し始める。

ですが、ここで唐突にチェーンソーのようなエンジン音が鳴り響きます。
音がした方を確認すると、2人を追ってきたであろう歪な人形の追跡者が今度は剣ではなくチェーンソーを構えて探し回っているのだ。
そして、エンジンをふかしまくっていることから、こちらを見失っていることにかなり気を立てている様子。
見つかってしまえば今度はどうなるか分かったものではありません。

2人はどうにかして歪な人形の追跡者から逃げようとしましたが、運悪く振り向かれた際にこちらの存在を気づかれてしまいました。
歪な人形の追跡者は何かを叫んでいるが、もはや言葉にすらなっていない。

「ああ、そうか。間違いない…あいつだ」

シフターのあいつと言う言葉に、バインダーはますます訳が分からなくなってくる。
だが、今は逃げるのが先決だ!

■手を繋ぐ

このチャプターでは、2人が接触することでバインダーの見え るものが以下のように変わります。
○歪な人形の追跡者が、顔以外完全な人間の姿に変化している
○チェーンソーから紫と黒のモヤモヤが放出されている
○人間の姿にはなっているが、男性なのか女性なのか、それ以外なのかの区別がつかない

■判定「歪な人形の追跡者改め、チェーンソーの追跡者から逃げる」難易度:7

歪な人形の追跡者改め、チェーンソーの追跡者は、言葉になっていない叫び声を上げながら、チェーンソーをめちゃくちゃに振り回しながらこちらへ向かってきます。
あんなのに当たれば、いくら人外でもひとたまりもありません。
植わっている作物や木々を駆使して、どうにかチェーンソー攻撃をかいくぐりましょう。

→2人とも成功した
バインダーの閃きで、太めの木が生えている場所へチェーンソーの追跡者をおびき寄せた2人は、無理な方向からチェーンソーを振り下ろさせて簡単には抜けなくさせることに成功した。
 チェーンソーの追跡者が持っていたチェーンソーは、無理な負荷が掛かったことで壊れたのかどうかは不明だが、ピクリとも動かなくなる。
チェーンソーの追跡者はチェーンソーを引き抜こうと必死になり、こちらの追跡を止めた。
今のうちに逃げよう。
ロールプレイへ進みます。

→どちらか一方だけ成功した
失敗した方は、チェーンソーの追跡者に追いつかれ、わざと眼前寸止めでチェーンソーを振り回されて恐怖を植え付けられてしまいました。
フラグメントボックスからフラグメントを1個選び、 「忘却」にチェックを入れてください。 
そして、フラグメントを「変異表:恐怖」の結果に変異させてく ださい。
その後、ロールプレイに進みます。

→2人とも失敗した
2人ともチェーンソーの追跡者に追いつかれ、わざと眼前寸止めでチェーンソーを振り回されて恐怖を植え付けられてしまいました。
2人のフラグメントボックスからフラグメントを1ずつ個選び、 「忘却」にチェックを入れてください。 
そして、フラグメントを「変異表:恐怖」の結果に変異させてく ださい。
その後、ロールプレイに進みます。

■ロールプレイ指針

どちらも人外の場合は難しいかもしれませんが、ホラーパニックものでチェーンソーを持った殺人鬼から逃れるようなロールプレイをしてみるとそれっぽくなります。
判定に失敗した場合は、殺人鬼の気分次第でたやすく殺されるという恐怖と隣り合わせになっているようなロールプレイをすることで楽しめるかも?

■結末

チェーンソーの追跡者をどうにか撒いた2人は、温室を出る。
追ってきていないことを確認して一息ついたのち、バインダーはようやく先ほどは聞けなかったシフターの「自分がこの異界を生み出した原因」という詳細について聞くことができた。
それは、シフターの積み重なった記憶と後悔の念が悪い方向へ作用し、爆発したため。
さらにバインダーはチェーンソーの追跡者についても問いただす。
問いただされたシフターの口から出てきた言葉はこれだった。

「あの追跡者は、かつて僕のために犠牲になったバインダーが異界化した存在なんだ」

ファイナルチャプター「フェアウェル・マイ・リグレット」異界深度:8


■状況説明

温室を出て、食堂などがある通称学生棟と呼ばれる建物までやって来た2人。
ここに出口がなければ、異界からの脱出は絶望的となる。
だが、シフターはこの学生棟に出口があることを確信していました。

「食堂へ行けば出口がある、今度こそは間違いない」

まるで透視でもしているかのように告げるシフターに、バインダーは「信じるよ」という感じの肯定の返事を返しました。
ですが次の瞬間、またあのチェーンソーの爆音と共に壁が破壊される音が。
そう、チェーンソーの追跡者が2人に追いついたのです。
もうこうなったらとにかく走って逃げるしかない。
だがシフターは、チェーンソーの追跡者を見ても、リアクションを示さなくなっていた。
バインダーに話したことで、過去にある程度の決別と受け入れができたのだろう。
無事に出口を見つけ、生還することだけを考えていた。

■チェーンソーの追跡者

チャプター3の結末でシフターが語っていた通り、この追跡者はかつてシフターが共に異界へ入ってしまい、出口を探して旅をした時のバインダー達です。
ですが、この時の異界の危険度が予想以上に高く、シフターもバインダーも異界化が相当進んでしまった状態で出口を発見しました。
最後の最後、もう少しで脱出できるというところで一歩及ばず、バインダーは最後の力を使って異界化を受け入れ、シフターだけでもと出口まで送り届けたのです。

結果的にフラグメントをすべて使い果たした上に異界化を受け入れてしまったため、帰還できず異界に呑まれてしまいました。

「君だけ生きて還れればそれでいいんだ。だから、生き延びるんだ!」

シフターにはその時のバインダーの言葉が、未だに頭に残っています。

そして皮肉にも、そのバインダーが異界へ呑まれたのがこのイリュージョンシティ大学。
シフターは異界化し、自分と行動したが結果的に帰還できずに異界に呑まれた他のバインダーたちと融合してしまったあのバインダーと再開してしまったのだ。
それを知った時の、シフターの後悔の念の現れようは、相当なものだっただろう。

※GMはこのことを過去の回想として、シフターに語らせるとストーリーに深みが出るかもしれません
※また、上記はシナリオに矛盾が生じなければGMとPLの同意の上で変更しても構いません。

■手を繋ぐ

このチャプターでは、2人が接触することでバインダーの見えるものが以下のように変わります。
○チェーンソーの追跡者は、異界化したバインダーが5人程度融合した姿であることが分かります
○他の異界化した者どもの影響を大きく受けているため、個々の自我はもう残っていません
○シフターが過去にある程度の決別と受け入れができたためか、異界自体の力が弱まってきているようだ

■判定「異界からの出口を探す」難易度:8 


※この判定は「2人とも成功した」状態になるまで終わりません。
 つまりどちらか一方が成功しても、一方が成功するまで判定を続ける必要があります。 
 GMはそのことを伝えてから、判定を開始しましょう。

→・2人とも成功した
コンクリートすらも易々と砕き、鉄も紙のように切り刻んでいくチェーンソーを振り回す追跡者から逃げ、食堂の中を突き進み、2人は食堂の奥にある厨房にまばゆい光を発見しました。
その光を見たシフターはそれが「異界のひびわれ」と呼ばれる現実世界へ替えるための唯一の手段だと話し、自分の予感は間違っていなかったこと言います。

次の瞬間、またすさまじい爆音とともに食堂のテーブルや椅子を徘徊しながら、チェーンソーの追跡者が2人の前に立ちはだかりました。

「お前も異界の住人になれ、自らの罪を受け入れろ」

チェーンソーの追跡者は、禍々しい声でシフターに告げます。
ですが、シフターはもううろたえません。
---後悔の念に別れを告げたから。

これが最後の見せ場です。
バインダーはチェーンソーの追跡者の最後の猛撃をかいくぐり、シフターを連れてこの異界から脱出しましょう。
脱出するロールプレイを終えたら、アフタートークへ進みます。

→どちらか一方だけが成功した
チェーンソーの追跡者の猛攻は更に激しくなり、2人は異界のひびわれにたどり着けません。
それどころか、チェーンソーの追跡者によってさらなる恐怖を植え付けられてしまいます。

シフターかバインダー、どちらか一方のフラグメントボックスか らフラグメントを1個選び、「忘却」にチェックを入れてください。  その後、フラグメントを「変異表:恐怖」の結果に変異させてく ださい。  
どちらが変異するのかは、相談して決めてOKです。
その後、ふたりでもう一度この判定に挑んでください。

→2人とも失敗した場合
チェーンソーの追跡者の猛攻で、先へ進めないばかりか、チェーンソーに直接切り刻まれはしなかったものの、その猛攻で破壊された壁や椅子、テーブルの破片がシフターとバインダーを襲います。

シフターとバインダー、それぞれのフラグメントボックスからフラグメントを1個選び、「忘却」にチェックを入れてください。 
その後、フラグメントを「変異表:外傷」の結果に変異させてく ださい。  
片方のキャラクターに変異できるフラグメントが残っていない場 合は、変異できるキャラクターが1つのみを変異させましょう。  
その後、ふたりでもう一度この判定に挑んでください。

■ロールプレイ指針

これが最後のチャプターです。  
ふたりで協力して、この異界から脱出しましょう。 
最後の判定では、ふたりとも成功するまでダイスを振り続けなければなりません。
ダイスを振るたびに変異は増えていくため、変異の内容が決まる度にある程度のロールプレイの時間を設け、絶体絶命の描写がしっかりとできるようにしましょう。

■結末

光に満ちた異界のひびわれに飛び込んだ2人。
気がつけば、そこは研究室の中でした。
シフターはテーブルに突っ伏しており、バインダーはポットの前で床に倒れて眠っていました。
「戻ってこれたのか?」と互いに訝しむ2人。
異界からの脱出は成功しました。
―――無事かどうかはともかく。

アフタートーク


アフタートークでは、以下の順番で物語の結末を決め、ロールプレイをしましょう。
この物語のゆくえは、果たしてどんなものになるのでしょうか? 

■結末の分岐

「忘却」にチェックが入っていないフラグメントが1つでも残っていれば、そのキャラクターは現実世界へ帰ってくることができます。
しかし、もしもすべてのフラグメントに「忘却」のチェックが入っていたならば、そのキャラクターはチェーンソーの追跡者に襲われ、異界の住人として取り込まれてしまいます。

■変異への抵抗

無事に生還することができたら、次は変異への抵抗を行ってフラグメントを取り戻す必要があります。
元の研究室へ戻ったことで、異界の影響によって一時的に変異して いた精神や肉体が自然と元に戻ります。

バインダーは6面ダイスを1回だけ振り、その出目の数だけシフターとバインダー2人の変異を元に戻すことができます。
そして、出目と同じ数だけフラグメントの「忘却」チェックを外すことができます。
なお、どの変異を戻すのかや、どの忘却のチェックを外すのかは基本的にバインダーが決定しますが、2人で相談して決めても問題はありません。

■現実世界での変異について

異界で起きた変異が治せなかった場合、現実世界でもその変異は残ったままになります。
なお、現在この変異の治療に関してはイリュージョンシティの医学では全く方法がなく、異界学との共同研究も難航してます。
そのため、変異とはうまく付き合っていくしかないでしょう。

■ロールプレイ指針

変異への抵抗を終えたら、元の世界へ戻ってきた後のロールプレイを始めましょう。
何事もなかったかのように、学会で発表する題材についての話を再開してもいいですし、互いの生還を祝ってどこかへ食事に行ったり、この話はもう明日にしようと帰宅しても問題ありません。
けれどまずは、かけがえのない日常に帰還できたことに祝福を。 

生還、おめでとうございます!














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