映画「Winny」に学ぶエンジニアを引き出す非エンジニアの存在(ネタバレ注意)
こんにちは。きんちゃんです。
エンジニアの皆さん、キャリアの設計してますか?
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映画「Winny」を観てきた
5/13に映画「Winny」を観てきました。ずっと観たいと思っていて、土曜日の夕方にポッカリ空いた隙間で鑑賞可能な劇場を探して唯一行けそうだったのが日比谷シャンテ。久々の一人映画を満喫してきました。
普段は子供と「ドラえもん」とか「仮面ライダー」ばかり観ていますが、映画Winnyはさすがにファミリー層は見当たらず、年齢も40代以降の方が多めでした。エンジニアの方も多かった(ような気がします)。
Winny事件を題材とした映画ですが、そもそもWinny事件とは・・・
なんとなく私も知っていました。事件当時私はすでに社会人でしたが、別の業界で仕事をしていたので正直あまり関心なく(汗)、金子勇さんというお名前もうっすらとした記憶程度しかありませんでした。
映画「Winny」は、以下のようなあらすじです。
エンジニアを引き出す非エンジニアの存在
映画そのものの魅力はいろいろなところで書かれているので、そちらを参考にしていただくとして、私が興味深かったのは非エンジニアである弁護士・壇利光さんが、いかにして金子勇さんという天才エンジニアの正当性を世の中に認めさせるか?という点です。
世間一般には理解されがたい専門性の高い技術力を持ったエンジニア、世の中の常識からずれたところのあるエンジニアを、世の中に認めさせるという点で、映画「Winny」をみていきたいと思います。
映画の記憶だけでは心もとないので、こちらも参考にさせていただきました。
なおネタバレあり、ですのでその点ご容赦ください。
ポイント①エンジニア心理を知ろうとする
弁護士の壇さんは、金子さんを弁護を引き受けることになりました。
壇さんはもともとサイバー犯罪に詳しい弁護士さんで、開発者が逮捕されるようなことがあれば弁護します、と漏らしていたことがきっかけだったとのこと。映画では、弁護を引き受けてから最初に描かれたのが「なぜWinnyを作ったのか」というシーンでした。
法律事務所の仲間と考えてもよくわからない。金子さんとの接見で、檀さんは本人へWinnyについての技術的な質問を次々に浴びせて答えにたどり着きます。
詳しい解説はありませんが、私が思うに、自分が構想したものを形にしてみたい。自分の技術力を確かめてみたい。という純粋すぎるほど純粋な気持ちが、金子さんをWinnyの開発に駆けり立てたのでしょう。
壇さんは大阪の町工場出身で父親がエンジニア。エンジニアの心理がわかる方なのでしょうね。
ポイント②エンジニアの大事にしていることを知る
最初、金子さんは、警察が署名しろと言ったら言われるまま(したらマズいのに)書類に署名してしまったりと、壇さんも手を焼いたそうです。
上記は「どんな書類に署名しても、裁判所で正しいことを喋れば裁判官は信じてくれるだろう、なんていう考えは甘い!」と檀さんが金子さんを諭しているシーンです。
金子さんはWinnyを2ちゃんねるで公開したことから、2ちゃんねらーが支援金を1600万円超集めたり、Tシャツを販売して収益を寄付したりという活動が行われていました。2ちゃんねらーたちは金子さんの無罪を信じていたのですね。
壇さんは「ソフトウェアの開発者が有罪になったとしたら、そんなリスクを背負ってまで開発したいという人材は激減し、日本の技術の停滞を招きかねない。だから日本のエンジニアのために、日本の技術のために戦う」という大義名分を金子さんに与えたことで、金子さんの目が覚めたのです。
ちなみに映画ではメールのプリントではなく支援金を記帳した通帳の束になっていました。名義人欄に記帳された「47シガンバレ」「47シハムジツ」などのメッセージを壇さんが金子さんに見せ、金子さんがそれを食い入るように凝視しながら、一行ずつ名義人を読み上げるシーンは感動!
ポイント③エンジニアのプロデューサーとなる
壇さんは金子さんの被告人質問の最初をプログラム発表会にすることにしました。裁判所、検察、弁護人、被告人用のモニター、法廷用のプロジェクターなどを用意し、パソコンを使った被告人質問を行います。
金子さんが小学生の頃電気屋でゲームを作っていたころの話、大学でシミュレーションの研究をしていた話、フリーソフトの話。
実際に金子さんがつくったプログラム「NekoFlight」「StarBow」などを動かして説明しました。
私は仕事柄エンジニアとよく話をしますが、自分の携わった製品やプロジェクトについて、みなさん本当に活き活きと目を輝かせて話してくれます。ましてそれが自分が構想して創作したプログラムであればなおさらです。
実際に金子さんは、法廷でもやたらとパソコンをいじりたがったそうで、何度も注意したそうです(笑)
壇さんは法廷で金子さんの等身大の姿を見せるべく場をプロデュースし、結果、金子さんのプログラムへの愛や熱狂、オタクぶりを存分に知らしめることができました。
映画でも、東出昌大さん演じる金子さんの真骨頂ぶりを楽しむことができます。
別の事例ではこんなこともありました。
自分のやっていることを人に説明するのって結構難しいです。
1対1かつ相手が自分と同じ世界の人あればまだましですが、話の内容が専門的だったり、相手が別の世界の住人だったり、不特定多数だったりすると、一気に難易度が上がりますよね。
仕事でエンジニアから業務内容を聞くことがよくありますが、私のレベルに合わせて言葉を選んで説明してくれる人は、途端に仕事ができる印象になります(笑) 採用面接をしていてもそれは感じます。
ことエンジニアの世界は専門分野が広く深いため、畑違いの人が聞いても?となりがちです。
映画では、壇さんの法律事務所の同僚2名を裁判官?に見立て、壇さんが質問して金子さんが答える、という練習風景が描写され、壇さんが何度もダメ出しをしているシーンがありました。
さながら壇さんは、採用面接で合格を勝ち取るために付きっきりで指導するキャリアカウンセラーのようでもあり、金子さんという人間を最大限に引き出すプロデューサーのようでもあります。
Winny事件の結末とその後
Winny事件は2006年12月第1審京都地裁で有罪。被告・検察ともに判決を不服として控訴、2009年10月大阪高裁で無罪。大阪高等検察庁は判決を不服として最高裁に上告するも、2011年12月最高裁は上告を棄却。
金子さんの無罪が確定します。
7年半もの月日を裁判に費やした金子さんは再びエンジニアとして現場に復帰するも、2013年7月に急性心筋梗塞のため43歳で帰らぬ人となります。
無罪を勝ち取ることができたという安堵、いっぽうで天才プログラマーの貴重な時間を奪ってしまったという悔いる気持ち。壇さんの葛藤が伝わってきます。
私はエンジニアのキャリア支援を生業としていますが、これほど弁護士という職業の方に親近感を持ったことはありません。
キャリアカウンセラー(キャリアコンサルタントなど含む)も弁護士さんも、目の前の一人の人間を、いかに理解し、信頼関係を構築し、ゴールまで伴走していくかが大事だと改めて気づかされました。
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